りゅう座は、あたかも北極星を守護するかのように夜空に輝いている。
 だから、一年を通して見やすい星座といえる。
 ……もし、見えればの話だが。
 実は、この星座、天の北極付近の星座のご多分にもれず、非常に
暗い星で構成されている。明るい星は、事実上おおぐま座とこぐま座、
カシオペア座に分配されていると言っても過言ではない。
 もっとも、りゅう座は比較的まともな方である。かみのけ座という
星座があるのだが、文字通り天空に貼りつけた髪の毛のごとく、
見えづらい。下には下があって、テーブル山座というのが南半球に
あるのだが、これには五等星以上の明るさの星が含まれていない。
これはもう、目がよくても見えない。
 それにしたってα星のトゥバンが3.6等星。もう少し、ぱっとして
ほしいところではあるが。
 ともかく、ここまでマイナーな星座であるにも関わらず、世間一般の
認知度は高い。何故か? ドラゴンという架空の生物の、認知度というか
人気の高さに負うものが大きいからだろう。
 正月頃に「ドラゴンハート」という映画がテレビで流れていたが、
その中では、りゅう座はドラゴンたちの英雄の星座だった。
そして、私が高校の頃に流行っていた漫画、「聖闘士星矢」では、
りゅう座の守護を得た戦士が、渋めの役を張っているのである。
 では、実際のりゅう座とは、どんな由来を持っているのだろうか?

 アルゴ号の冒険という話がある。ギリシア神話の英雄たちの多くを
巻きこんだ、ある意味恐ろしい事件である。
 イアーソンという若者が、王に「黄金の羊の毛皮を取ってくる」と
誓ってしまったがために、この大航海が計画されたのである。
ギリシア神話には、通常なら実現不可能なことを誓ってしまったが
ために、不幸な冒険に狩り出される英雄が多い。
 そして、この冒険のために建造された巨大な船が、アルゴ号である。
 黄金の羊の毛皮は、テッサリアの王の所有物だった。それは
大木に掛けられ、絶対に眠らない竜によって守られていた。
 アルゴ号の勇士たちの力で、場合によっては腕づくででも奪おうとの
目論見である。……砲艦外交の元祖とも言えよう。
 途中のエピソードは省く。あまりにネタが多いのだ。
 とにかく、イアーソン一行はテッサリアに辿りつき、王女メディアを
たぶらかして黄金の羊を奪取する。彼女はギリシア神話きっての
力ある魔女であり、その後も様々な活躍を見せ、イアーソンを助ける。
 この竜は、彼女の魔法の眠り薬によって眠らされる。ちょろいものである。
 結局、イアーソンは彼女を妻とするわけだが、これが新たな悲劇を産む。

 宝物を守る竜。これが、以降のヨーロッパ世界における、ドラゴンの
イメージを形作る。ドラゴンの住みかには、必ず宝物があるのだ。
この竜(ギリシア語で「ドラコ」)は、どちらかというと大蛇に近い。
パルナッソスのピュートン(英語読みするとパイソン)に近いものが
あるのだ。星図絵を見ても、頭だけでは「うみへび座」と「りゅう座」、
「へび座(頭)」の区別がつく自信がない。
 さて、もしこの竜を天空に見つけようと考えているあなた、
月のない夜、できるだけ空の暗いところへ行って、北極星を探して
ほしい。こぐま座の本体を取り巻くように竜が蟠居しているのが
見えるかもしれない。

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