食器・小物
アルバレロ albarello 固体もしくはゼリー状の薬壷。代表的な形は広口の円筒形で胴体中央がややくびれている。12世紀頃の中近東にデザインされたこの薬壷の形状はイスパノ・モレスク、マヨリカ、デルフトなどに伝えられた。所有者の紋章、肖像、名前などで装飾されることが多い。
日本でも昔、舶来ブランデーやウイスキーが高嶺の花だった頃は応接間に誇らしげに飾られていた。あるいは薬壷がそのような役割を果たしていたのだろうか。
アーン urn 壷や瓶のこと。用途は広いがアンティークでは主にアンフォラやクラテル型の品を指すことが多い。
アンフォラ amphora 古代ギリシャ・ローマでワインや水、オリーブ油、蜂蜜などを貯蔵し、また運搬の為に用いた壷。蓋はなく両側に取手がつけられている。アテナイの競技大会(オリンピックの原型)の優勝者にも女神アテナと競技種目の描かれたアンフォラが授与された。優勝カップの元祖である。アンフォラを始めとする各種ギリシャ壷の形状は後のセーブルやウィーンなどに多く取り入れられている。
カップ アンド ソーサー cup and saucer 欧米では通常ソーサーを省略しない。どうかするとカップとソーサーのセットなんて言い方もするので紛らわしい。おそらくカスタード・カップのように受け皿のないカップも多いせいかと思われる。他にケーキ皿が付いた3点セットはトリオと呼ばれる。
カラーフ carafe デカンタよりは小型で丸みを帯びた形状。本来は蓋の無いボトルを言うらしいが実際に見るのは蓋付きが多い。二つのゴブレットが付いてセットになり、ヴィクトリア時代に量産された。
コーヒー・カップ coffee cup and saucer 通常、幅に比べて高さの方が長い。形状は実に様々だが、ストレートな円筒形のはコーヒー・カンと呼ばれる。小さいサイズはデミタス・カップ、もしくはモカ・カップと称するが、近頃ではエスプレッソ・カップなんて言い方をする人もいる。
キャバレット・サービス cabaret service 陶磁器製の盆に乗った小人数用のティー又はコーヒーセットのこと。フルセットはポットと受皿、カップと受皿、ミルク入れ(紅茶セットの場合)、クリーマー(コーヒー)、砂糖壷、茶壷(ティー)、ジャム入れ、それにトレィとなる。
クラテル krater ギリシャ壷の一種。幅広で口が更に大きく広がっている。バケツ型だが肩が膨らんだタイプもある。両ハンドル付き。水とワインをかき混ぜる為の壷だというが、そんなものがうまいのだろうか、と思っていたら、別の資料に蜜や香料とあるので、おそらくパンチ・ボウルみたいな用途だったのだろう。
青銅で作られた豪華なものもあって、これなどはパーティー用か。ともあれ、これもアンフォラ同様多くの西洋磁器の形状に使われている。ギリシャ壷には他にも用途別に様々な形の器があり、それぞれの名称で呼ばれ、やはりヨーロッパ磁器のモデルとなっているが、アンフォラとこのクラテルくらい覚えておけば間に合うだろう。わからなかったら全部グリーク・スタイルで通してしまえば面倒臭くはない。
ゴブレット goblet 碗に脚と台のついた飲用ガラスまたは金属器。蓋付きのもある。通常20cmから25cm程度だが中には45cmになる物も。
コーンヌコピア cornucopia 角(つの)型の容器。台を着けるなど安定させてテーブルの装飾品として用いたり壁飾りに使われる。元は豊饒の象徴で古い絵画などにはフルーツが山盛りになっていたりするが、陶磁器ガラス等の器としてはせいぜい数本の花を活けるのが精一杯というサイズが多い。
ジャグ jug 蓋なし、オープンの注ぎ口がついた水差し。アメリカではピッチャー。
スタイン stein 独 タンカードの一種。通常円筒形のストーン・ウェアで蝶番付き蓋を持つ。ビールやエール用の飲用器で、胴には人物風景紋章などのレリーフ装飾が施されているのが多い。メトラッハ窯のものが有名。タンカードとの区別はあいまいだが主にドイツ製で装飾の多いものを言う。19世紀以降ならメトラッハ窯を除けば高いものではなく、コレクターが多そうなものだが今のところ日本では少ない。
スナッフ・ボックス snuff box 嗅ぎタバコ入れ。嗅ぎタバコは鼻孔にすりつけて香気を味わう粉タバコで、昔は煙を嫌う公共の場などで流行ったと聞くが、残念ながら現物を見たことはない。他に噛みタバコも謎の一つで、確かミッキー安川氏のエッセーで「クチャクチャやってるのをそこら構わず吐き散らす。ガムかと思ったら噛みタバコだった」というようなことを読んだ記憶があるから最近まで存在していたと思うのだが。
とあれスナッフ・ボックス、一般的には金属の留め金で、蓋と本体がきっちり合わさり密閉出来るようになっている。
ソリテール solitaire service キャバレット・サービスの一人用セット。つまり一人用コーヒーまたは紅茶セット。低い高台がついたコンポートがトレィ代わりになっているものが多い。
コンポートに蓋付きカップだけが並べられたのはカスタード・カップのセット。それとほとんど同じに見えるがカップの取っ手が無いのがジャム・ポット・セット。多いのでは6客あった。いちご、アップル、ブルーベリー、ラズベリー、蜂蜜、マーマレード、そんなところだろう。当然ジャムもカスタードも一人用ではない。胸焼けしてしまう。
ソルト・セラー salt cellar テーブル用の塩入れ。現在の振出し式ビンもソルト・セラーと言うらしいが、アンティークでは普通小さな脚付きボウルの形である。専用の小さなスプーンが付いたものが多いが、無い場合はナイフの先に載せ指先でトントン叩いて少しずつこぼす。ドサッと落ちてしまいそうで難しそうだ。
タッツァ tzza イタリア語でコップの意味だがどういうわけか台付きボウル、つまりコンポートに似たタイプを称することが多い。コンポートとの違いは脚が短い、上に載っているのが平皿より深い等あるが明確ではない。少なくともイタリア製であればコンポートよりもタッツァと呼ぶことが多い。
タンカード Tankard →マグ
チャージャー charger 肉用の大皿。テーブルの真ん中で七面鳥などが仰向けになっているあの皿で、特に大きさの規定はないが普通は50〜60センチ程度。
チュリーン tureen デイナー・サービスの一つで、最も中心的な存在。大型の丸か楕円のスープ又は野菜ボウルで普通は蓋が付く。面白いのは野菜や動物の形を模したもので、ニワトリやあひる、イノシシやウサギなど多様な形状がある。つまり野菜スープなら野菜型蓋を
使用する訳だ。
テ・ア・テ tete-a-tete 2人用キャバレット・サービス。つまりコーヒー・紅茶のセット。
ティー・カップ tea cup and saucer 通常高さよりも幅の方が長い。初期には取っ手がないティーボールとソーサーで、熱いのでソーサーにこぼして飲むのが普通だった。
ティー・キャディー tea caddy 紅茶入れ。通常ボトル型で小さな蓋が付く。広口のはティー・キャニスター。ティー・ポイというのは本来ティー・キャディーを入れる木製容器なのだが英国人もティー・キャディーの意味で使うことが多い。
ティー・ケトル tea kettle ティーポットに湯を沸かすためのランプ(学校の実験で使ったアルコール・ランプのような代物)とポットを固定する台がセットになった物。普通は銀や銀メッキだが磁器製のもある。台が高く、ランプとの距離があって直接火が当たらないようになっている。
ディッシュ dish 30cmかそれを越える平皿。以下のサイズはプレートで呼ばれる。
ティドビット・トレィ tidbit tray チビトレィと覚えておけばよい。アフタヌーン・ティーなどで小さなケーキを載せるトレィで、代表的な形は下から大・中・小の皿が中央支柱に連なっているもの。三段が多いが二段もあれば五段なんてのもある。
ディナー・サービス dinner service 正餐用食器類一式・・・と日本の辞書にはあるが、まあ家庭用の簡単なセットも含む。フルセットを列記すると、まずプレート、ボウル、ディッシュ、チャージャー、チュリーン、ソース・ボート、塩入れ、砂糖壷。以上が基本でオプションでアイス・ペール、カスタード・カップ、チーズ皿、プラトゥー、マスタード・ポット、花瓶や花器が付く。18世紀のは更に装飾用の人形やセンターピースがおまけ。コーヒーカップ&ソーサーを含む場合もある。現代のサービスは40とか80ピースくらいが普通だが、昔の王侯貴族用のは数千ピースに及ぶものがある。フルセットを乗せるには何百メーターのテーブルが必要なんだろう。
トイ toys 18世紀の英国で使われていた用語で、香水瓶やつけボクロ入れ、ナイフのハンドル、指貫、ミニ人形など小さな陶磁器製品を総称した。チェルシーのが有名。
トランブルーズ 仏 trembleuse カップ&ソーサーで、ソーサーにカップを固定するためのリングが付いているタイプ。リングには透かし彫りの装飾が施されていることが多い。またソーサーを深くえぐり込んだ、帽子を逆さまにしたようなタイプもある。いずれも手が震えて飲み物をこぼすのを防ぐ為に考えられた。ご親切なこと。
パズル・ジャグ puzzle jug 球形ボディに円筒形の太い首を持つ、壷のような形状。だが首の所に大胆な透かし彫りがあって、水を注ごうとするとそこから零れてしまい使い物にならない。実は透かし彫りの首の中は細いパイプになっていて、縁の所に小さな穴が幾つか開いている。そこから水等の飲料を入れるのである。水は首から取手のパイプを通って二重底
の空洞に収められる。中の飲料を飲むには穴の一つに口をつけ、残りを指で塞いで吸う。おおよそ実用性と対局にある代物だが、時折は見かけるから相当な数が作られたのだろう。羨ましいような、馬鹿馬鹿しいような・・・。
パッチ・ボックス pach box つけ黒子(ホクロ)入れ。大きさは2〜4cm、半球型が多く、バッグの中に忍ばせた。つけ黒子は貴族階級のオシャレで女性が主だが男性が付けることもあったようだ。映画「バリーリンドン」ではいかにも癖のありそうな男性貴族がつけていた。少し大きいのはスナッフ・ボックスが主だが、日本ではピル・ケースとしてまとめられることが多い。
パンチ・ボウル punch−bowl パンチを供する為の大型ボウル。使用されるときはレードル(杓子)とカップが付く。パンチはアルコールにジュースやフルーツを混ぜた飲料だが、熱いパンチ(ホット・パンツなるものが昔流行っていたが・・・)というものがあって、これはパンチ・ポットで供された。ティーポットと同じ形状だが概して大きく、高さ三十センチにもなるのがある。
ハンドル handle 取っ手。古い資料などにはカップの取っ手の形状が年代順にずらり並んでいたりする。製品に製造年マークが無いのに「1878年製」などと限定出来るのはこのような工場資料が残されている場合だ。そこまでいかなくてもハンドルの形は窯や年代の特定に役立つ。
ピル・ケース pill box 薬入れ。日本ではピル・ケースと呼んでいるが欧米ではピル・ボックス。ただしこれもあまり使われることのない用語で、多くは大き目をスナッフ・ボックス、小さいのをパッチ・ボックスとしている。ただし形状は似たようなものだからピル・ボックスでも差し支えないだろう。何に使ったか、あるいは使わせようとしていたのかなど分かりゃしない。
あまりピル・ボックスの名称が使われないのは、昔の欧米人は薬を携帯することが少なかったのではないかと想像するが、本当のところはわからない。
ところでピルは丸薬全般のこと。お客に「これは避妊薬を入れた箱です」と説明していた初老の骨董屋がいたが、そんな昔に避妊薬は、魔術めいた怪しげなのはともかく、少なくとも携行丸薬はなかった筈。
プレート plate 15cmから28cmまでの平皿。 30cm以上はディッシュ。あれ?29cmのはどっちなんだ・・・厳格に規定されているわけでもないのでどちらでも良い。欧米人でも大皿をプレートと呼んだりしていることがある。
概ね小さいのをプレート、大きいのをディッシュと覚えておけばいいだろう。
フローラ・ダニカ flora Danica ローヤル・コペンハーゲン窯の代表シリーズ。オリジナルはデンマーク王がロシアのエカテリーナU世に贈ろうとしたディナー・サービス。全部で1800ピースあったそうな。膨大過ぎて作るのに12年もかかった為にエカテリーナは待ちきれずに死亡、セットはそのままデンマークに残った。(一説に、出来が良いので惜しくなった王が贈るのをやめたという。この方が話としては面白い)残ったセットは王の誕生日に使われたというが、給仕はさぞかし恐かったことだろう。
現在も同じデザインのセットが作られているのはご存知の通り。昔の絵付はけっこうラフで現在の方が洗練されているように思う。デパートで見たのはチュリーン(スープ入れ)だけで110万円だった。ロールス・ロイスの運転手にだけはなりたくないと思っていたが、フローラ・ダニカの給仕係りにもなりたくないものである。
ポカール pokal ドイツで作られていた祭事用杯。ドイツ製のゴブレットと考えて概ね間違いではないが、次の点で異なる。まず必ず金泊やグラヴィールなどで装飾され、蓋が付けられていたこと。ゴブレットには無いのもある。もっともポカールでも今日では蓋が失われているのも多いが。
決定的な違いは祭事用であるために実用性を考えていないのも多いことだろう。高さは少なくとも25センチ以上、中には60センチにも及ぶ物もあった。また脚が異常に長く、今にも折れそうなシロモノもあったりする。もちろん全部が全部そんな企画外の品でないから、やはり「ポカールとは17世紀末から19世紀中期までドイツで作られていた祭事用ゴブレット」というあたりに落ち着くことになろうか。
ポプリー壷 pot−pourri vase ポプリーは香料をふりかけたドライフラワー。その専用容器がこれ。蓋や首に多くの穴が開けられていて、香りが外に出易いように作られている。昔は用途が分らなくて「この穴にずらっと一輪挿しを差して・・・」なんて苦しい解説をしていた。フラワー・ブリックという、レンガ型のそういう花瓶もあるにはあるが。
史上もっとも有名なポプリー壷はヴァンサンヌ(セーブルの前身)で1755年に製作された帆船をイメージしたもの。セーブル代表作の一つでもある。
マスク・ジャグ mask jug 顔のついた水差し、と言うより顔がそのまま水差しになっている。それも美女ならまだしも、多くは変な親父のマスクなので日本ではまったく人気がナイ。近所のリサイクル・ショップで骨董屋から流れたと思われる、3万5千円の正札が付いたままのドルトン製マスク・ジャグを1万円で売っていたが半年経った今も元気だ。英国なら即日姿を消すだろう。
トビージャグと言うのもあって、これは大酒飲みのトビーなる寓話の主人公をモデルにしたらしいがやはり親父で、(ドリトル先生航海記に出てくる犬と同じ名前だが)どうかすると悪い病気でも貰ったのか顔に赤い斑点などつけている。トビージャグは英国製で、マスクジャグも英国が一番多いようだ。パズル・ジャグもしかり。さすがモンティ・パイソンの国だけのことはある。
マグ mug 取っ手の付いた円筒形や樽型の飲用器。日本語のジョッキ。ジョッキはジャグの訛りで本来は水差しのことになるのだが。
同型で大型の物、あるいは蓋のついてるのは通常タンカードと呼ばれるが、蓋付きでも小さいのはマグで通すこともある。
参考までに書いておくと「1クォート(1,14リットル)以上の容量をタンカード、未満をマグとするのが望ましい」のだそうな。
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