陶磁器 装飾・素材

エナメル enamel 上絵の具。エナメル彩色は釉薬の上から酸化金属の絵具で描き、低温で焼き付ける。説明は簡単だが、技術が完成する前は試行錯誤したようで、磁器を開発したマイセンでもしばらくこの上絵が出来なかった。それゆえ焼き上げた後で普通の絵具で絵付けする(コールド・ペインティング)など苦労している。もっとも焼成前と後ではまるで発色の違う顔料も多いので、技法が確立された後でも自在に扱うにはかなりの経験を要した。
記憶もさだかでないような昔に学校で柿衛門が赤絵に苦労した話を教わった。陶工の名前と赤絵と言う技法の名からして柿の色を出すのに腐心したのだ、きっと柿一色の器に違いないと勝手に思っていたのだが、長じて見る柿衛門はずいぶん様子が違う。赤絵というのが色絵付、つまりエナメリングを指すのだとは後に知った。赤の発色が一番難しかったのでそう呼ばれたそうだ。
なお、エマイユはエナメルのフランス語で意味は同じだが、通常銅板にエナメル彩色を施した、いわゆる七宝を陶磁器ガラスと区別して呼ぶことが多い。

ウィロウ・パターン willow pattern 柳のある中国風景装飾文様で、絵付けは銅板転写による。1780年に英国で開発され、19世紀には多数が製作されている。日本で言う印判手。スポードやウェッジウッドのが有名だが他にも多く、日本でも作られた。近頃では中国製まである。もちろん中国オリジナルには無いパターンで、英国のを写したのだ。
ディズニーが「ライオン・キング」で「ジャングル大帝」をパクッたと非難されたとき、
手塚プロ関係者は「手塚治虫が生きていたらむしろ喜んだでしょう」とコメントしていた。英国人も光栄に思うべきだろう。

オニオン・パターン onion pattern マイセンで1739年にデザインされた、タマネギと正体不明の草花の染め付け文様。タマネギは中国陶磁の「桃とザクロ文」の桃を写し損ねたと言われている。ブルーオニオンは日本だけの呼称。おそらくマイセン以外の商標名が本家にも使われれるようになったのではないか。英語ではオニオン・パターン、ドイツ語でZwiebelmuster(ズーベルマスターで良いのか?)。
ごく初期のを除き、現在に至るまでパターンは大きくは変わっておらず、また他の多くの窯でも類似品が作られた。西洋磁器デザインのベストセラーと言えようか。染め付けの上に金彩が施されたのもあり、また赤色が加えられたのもある。
模様の中心となる幹(?)の根元に交差剣のマークが仕込まれたのもあり、1883年から一部に入れられたそうだが、実際に見かけるのは新しい物(20世紀に入ってから)が多い。なお、マークがMEISSENとアルファベットであるのは別会社のもの。マイセン王立磁器工場でMEISSEN と書かれたのは例外的、18世紀の小箱に確認されるだけである

かきえもんスタイル Kakiemon style 柿衛門の愛好者は欧州に多く、マイセンを始めフランスのシャンティリー、英国のチェルシー、ボウ、ウースターなどで写された。絵付師の皆がオリジナルを見て写した訳ではないので、伝言ゲームよろしく得体の知れない代物に化けたりもする。ボウでは虎の頭が魚のような生き物に変身している。その点マイセンは忠実だが見る方が理解してなかった。垣根の後方を走る狐。柿衛門だから地面など描かれてない。西洋画にはない省略で、そのため英国で付けられたタイトルが「空飛ぶ狐」パターン。

キャンセレーション・マーク cancellation mark 製品に何らかの欠陥(窯傷や歪みなど)があった場合や、絵付けの施されてない白い状態で出荷されたものに付けられた印。通常マークに研磨盤で線状のキズを入れる。
マイセンでは1760年以後に見られる。セーブルウィーンの台頭で経営が苦しくなってキズモノ・ハンパものを換金したのだ。白磁も町工場みたいな設備では作れないから良い資金源になった。マイセンは潤ったのだろうが後世のコレクターにはいい迷惑ではある。マイセンでは1本線は装飾を施されてない状態で、つまり白磁でマイセンから出荷されて外絵付けされたもの。一般に言われているような傷もの・不良品は線が2本で中央でなく下部、柄の部分にあることが多い。ただし資料には書かれてないが、実際に見ていると19世紀末以降は1本線の不良品も多い。2本線を入れるのが面倒になったのか、それとも不良品を白磁で出荷したのかは不明。
他にも線の本数や場所によって色々な意味があり、珍しいところでは等間隔の4本線、これは1934年から1945年、戦前戦中の営業不振時にマイセンの従業員に現物支給した製品に刻まれた。果たして換金できたのだろうか?
19世紀のセーブルにも同様にキャンセル線が入れられた白磁出荷ものがある。18世紀セーブルにも白磁出荷はあるが、こちらにはキャンセル・マークどころかセーブルのマークそのものが入れられていないのも多い。
パリと判断されている物に、パリにしては柔らかい生地の軟質磁器を見ることがある。何しろ様々な窯の寄り集まりだから断定は出来ないが、セーブルのボディもかなりあるのではないか。これとは逆に、リモージュ最初の工場はセーブルに買収されて大量の白磁をセーブルに提供している。まア18世紀のセーブルは厄介である。

きんさい 金彩 gilding 1755年以前のヨーロッパでは金箔を粉にしたものを油や礬砂(どうさ:ニカワにミョウバンを加えたもの。水彩画の紙や絹の地塗りにも使われる)で溶いて焼き付けたが、18世紀後期から水銀に金を混ぜたものを主に使うようになった。
前者は重々しく深みのある豪華な風合だが剥がれ易い。後者は堅牢にはなったがやや軽い。ただし後者も調合次第では純金を貼り付けたような風合を出せるようだ。いずれも艶を出すには焼成後に研磨が必要。
金箔を直接貼り付って模様を描く技法は中国にはあるが(薄い箔を予め切って貼るのでバカバカしく手間がかかる)ヨーロッパでは見られない。近頃見られるテカテカの情けない金は水金と呼ばれるもので、赤チンのような液体が市販されている。詳しい成分は知らないが油の一種に金を溶かしたものだとか。そこそこに金の含有量は多いらしいが、どうしてあんな色艶しか出ないのか。ただし仕上げの研磨が必要ないのでラクではある。

こうしつじき 硬質磁器 Porcelain (China)白くて半透明、タカラ貝のような光沢を持つ中国式の完全な磁器のこと。現在では日本はもちろんヨーロッパのどんな貧乏な家庭にも硬質磁器のカップや皿の一つくらいは転がっているだろう。しかしそれは長いこと西欧人の憧れであった。
マルコ・ポーロが東洋で陶磁器の類を見たとき、艶の美しいポーセリンという貝の名(和名タカラ貝)を取ってその焼物の名称とした。ヨーロッパにはそんな美しい焼き物はなかったので忘れかけられていたが、16世紀に中国磁器が入るようになって、これらがマルコの言っていたものだとわかりポーセリンと呼ぶようになったという。
由来は美しいが長ったらしいと思われるのか、それともポーセリンの原語、ポルトガル語のポーセラーナの意味を知っていたのか(メスブタのある部分。開口部が似ているらしい)日常生活で磁器製品を意味する言葉としては普通「チャイナ」が使われる。ポーセリンは材質を表す意味で使われることが多い。
硬質磁器にはハード・ペースト・ポーセリンの呼び方もあるが、軟質磁器(ソフト・ペースト・ポーセリン)と比較する時くらいにしか使われず、通常ポーセリンだけで硬質磁器を意味する。軟質磁器の場合はソフト・ペーストは略されず、また日常雑器にはないのでソフト・チャイナなんて言い方もされない。(ボーン・チャイナは軟質磁器の一種だったが現在のは違う)
硬質と軟質の違いは大雑把に言って前者は石英・長石にカオリンの入ったもの。後者はカオリンの代わりに、窯によって違うが、大体ガラス質のものを混ぜて磁器らしくしたもの。
硬質磁器と軟質磁器の具体的な判別法については軟質磁器の項をご覧いただきたい。

ジュエル・デコレーション jewelled decoration 日本では簡単にビジューと言っている。bejeweled の略かと思っていたが、どうやらフランス語の「装飾品」を意味する言葉らしい。
ジュエル・デコレーションは1776年に
セーブルで導入された技法で、薄い金箔の上に溶けたガラス滴を落して半球状にしたものを器に貼り付けていく。
似たような装飾で単に凸状の金をずらり並べたようなのはビーディング Beadingと呼ばれる。
セーブルのはとても剥がれやすく、このデコレーションの完品はごく希である。一つ残らずバッチリついているならまず後世の修理か加飾、あるいは他の窯を疑った方がいい。マークのLLモノグラム中のアルファベットは開発年を考えればY以降だが、現存してるのはダブル・アルファベットのDD以降が多いようだ。
もっとも修理やマークの心配をする必要はあまりない。セーブルのジュエル・デコレーションは極めて珍しいもので、絵付けのないジュエル装飾だけのカップ&ソーサーでも百万円前後の落札値になる。ロココ調の絵付けでもあれば、富豪クラスが求めるので最低でも5倍以上は覚悟しなければ入手出来ないだろう。18世紀セーブルの中でもジュエルは珍しく、夢幻のごとき存在。正真正銘のセーブルのジュエル・デコレーションとはそういう存在なのである。
まあ趣味の範囲なら
リモージュやパリのセーブル・タイプ・ビジューをお薦めしておく。セーブル・オリジナルは博物館か子孫への税金対策向きであろう。


すずゆ 錫釉 tin glase 釉薬は、初期には透明に近いものだった。陶器を保護するのが主な目的だったからそれで良かったのだが、やがて陶器にもヒスイやラピスラズリのような色合が求められるようになり、様々な試みが為された。ただ西洋では釉薬は中国のように発展せず、ローマ以降はほとんど進歩してない、というより退化している。人々は土色の器で我慢していたのだが、中世も半ばを過ぎてイスラムから美しい陶器が入るようになって目覚めた。白い釉薬を使えば土の色が隠せ、上に奇麗な装飾が出来ることを知ったのだ。その白い釉薬に主に使われるのが酸化錫で、錫釉の名前がある。イスパノ・モレスク、マヨリカデルフト、ファイアンス、つまり欧州陶器の殆どがこの錫釉陶器である。

ストーン・ウェア Stone ware 日本語でb器(せっき)と訳される。よく誤植で石器となっており、ヨーロッパでは今でも石器を使っているのかなどと誤解される・・・事はないだろうナ。
磁器のように高温で硬く焼き締められているが透明性はなく、色も
ウェッジウッドのジャスパーを除いて白くない。固くて重い陶器と理解していただければいいだろう。我々の周囲ではあまり見かけないが、ドイツのビア・ホールで見かける灰色のビア・ジョッキがそうである。日本でも本格的なビア・ホールでは使っている筈だ。
ストーン・ウェアはヨーロッパでは15世紀初期にドイツで開発され、17世紀中期には英国他に広まった。もちろん東洋には古くからあるもので、英国の参考書には7世紀以前の中国で開発されたと書かれている。ストーン・ウェアの解釈にもよるが実際にはもっと古い。日本では須恵器が代表的ストーン・ウェアだ。
いずれ東洋では数多在る焼きものの一つであり、あえて分類されることはなかった。それが西洋では一時代を築いた焼き物の一つであることから明確に区別されていた。そしてストーン・ウェアなる用語が輸入されてきて、後追いでb器なる言葉を拵えたという次第。

スリップ・ウェア Slip ware チョコレート・ケーキにクリームで模様を描いたものを想像していただきたい。平たく言えばスリップ・ウェアとはそんなもの。スリップ(陶土に水を加えてトロトロに溶かした状態の粘土)を口の小さなジョウロみたいな金属缶から流し出して絵を描く。17世紀前半から英国で作られた。
スリップ・ウェアの中で有名なものにトフト・ウェアがあって、これはスリップで描かれた人物の下にトーマス・トフトだのラルフ・トフト、あるいはラルフ・シンプソンなどという名前があるシリーズ。作者名かと思われていたがどこにもそんな陶工がいたという記録がなく、注文主ではないかと言われている。トフト・ウェアなど手に入ることはないのでどちらでも良いが。トフトは別格としても年号やイニシャルの入ったもの、珍しいタイプならオークションで100万円を越えることはザラにあり、おおよそ素朴な外見とは似つかわしくない。

セラミック Ceramic 焼きもの。つまり土器、陶器、磁器、ストーン・ウェアと、
土を焼成したものを総称する。
懐かしい英国の雑誌「パンチ」にあったジョーク・・・(オートバイの写真。座席が便器に取り替えられている)「世界で最も人間の原点に近付いたマシーン。機能性のあくなき追求によって生まれたテクノロジーはホンダとブリティッシュ・レイランドの共同開発により生まれました。ボディとエンジン、ラジオだけは日本製ですが、すべてのセラミック製品は英国製です・・・・」いつになったらあの頃の強い日本に戻れるのだろうか。
なお、スペースシャトルの断熱材などに使われるのはアルミナなど土成分の一部を科学的にどーたらこーたらしたものとかで、土をそのまま焼いたものではない、念の為。

そめつけ 染付 blue & white porceline 普通の上絵付けは素焼き、釉薬がけしたのち描くが、染付は素焼きの前、つまり乾いた粘土状の時に絵付けする。(軟質磁器は素焼きしてから)絵付けを釉薬の下に施すことで、深いコバルト色が得られるし、表面が擦れても絵付けが取れない。ただし極めて高温で焼き付けるので黄色やピンクなどの顔料では色が飛んでしまう。そこで丈夫で奇麗なコバルトが使用される。他に高温に耐えられるのは緑、黒、銅赤があるが、青ほど奇麗に発色しないようだ。すなはち染付が青色な訳は美的見地と技術的問題。
染付の技法は中国の元時代が元祖でご当地では青花と呼んでいる。ヨーロッパでは18世紀初期にフランスのセント・クラウドで見られるが、はやり完全な染付となると
マイセンに譲る。1750以降英国ウースター、ボウ、チェルシーで使われ、これらの窯ではコバルトは下地の色としても使われた。
磁器のマークが染付か上絵付けかを見るのは一つの判断材料になる。ルーペで見てマークが表面なら上絵、マークの上にガラス状の皮膜があれば染付。マイセンは表面に釉薬が掛けられていない場合もあるが、青がしっかり生地に入り込んでいるので上絵と見間違えることはない。
なお、英語でブルー・アンド・ホワイトと言えば普通は染め付けを言い、陶器の上絵は、転写の場合ブループリント、手描きの場合はブルーペイントとそれぞれ呼ぶことが多い。

とうばん 陶板 Plaque 陶器や磁器で作られた、レリーフや絵付けの装飾が施された薄く平坦な板。磁器のは磁板とでも呼ぶべきなのだろうが、なんだか政治家の必須アイテムみたいなのでこれも陶板で通している。
タイルとの違いは陶板は薄く絵付けが繊細なこと。家具や時計の装飾に使われる為に軽量にする必要があった。またタイルは単独で飾ることもあるが基本的には複数で成り立つ。だから
デルフトのように絵画的表現を使う場合も周囲とのバランスを考えて複雑な模様は避けた。陶板はほとんどが単独。したがって細かな絵画的装飾が施されることが多い。
陶板のニセモノについては別項(地名工場編 - 
ベルリンKPM)で書いたが、他に注意すべきは割れた部分をカットしたもの。額から板を外し、絵付けが板の縁ギリギリまで描かれていれば怪しく、更に板の断面が断ち切ったようなら疑いなく割れた個所をカットしたものだ。額が外せない場合でも、隅の方が滝に落ちる水のようになだらかな曲線になっているのが普通で、押さえの外枠ぎりぎりまで平面が続いているのは一応疑ったほうがよい。特に小さな板ではガラスに落した水滴の表面張力のように中央から外へ向かって薄くなっており、平面のままということはない。

どうはんてんしゃ 銅板転写 transfer printing 銅板に描かれた図案を紙に写し、それを陶磁器に転写する技法。1753年にアイルランドのジョン・ブルックスにより考案されボウ窯で実用化された。最初は単色だったが19世紀には重ねて多色のデザインを描けるようになった。ウィロウ・パターンのように転写だけで勝負する場合と、ハンド・ペイントの下描きに使われる場合とがあり、陶板なども多くは転写によって薄い下描きがなされている。

なんしつじき 軟質磁器 Soft past porcelain 磁器の組成に不可欠な成分カオリンの存在が分からなかった為に、陶土にガラスや水晶、骨灰などを混ぜて硬質磁器に似せた不完全な磁器。
硬質磁器との外見上の違いはまずガス穴の存在。カップなどの底、つまり高台の裏など釉薬のかからない、あるいは薄い所に小さな黒い点々が多く見られるのが軟質磁器。この点々は粘土中のガスが焼かれた時に排出されて出来る穴で、硬質磁器でも少し見られることがあり、また軟質でもほとんど無いこともあるが、数多く見られるなら間違いなく軟質磁器だ。
また釉薬の性質も硬質と軟質では違う。
熱い水飴を用意していただきたい。それをガラスの上に流す。冷えても水飴はガラスと完全に分離していて上に盛り上がっている。硬質磁器の
エナメルはこの状態。今度は同じ水飴を氷の上に流してみる。水飴は冷える前に氷の一部を溶かして融合したようになる。軟質磁器の釉薬はこの氷のようなもので、一部はエナメルと一体化している。だから指先でなぞって見ると、軟質磁器のエナメル彩画は滑らかで、硬質磁器のは僅かに凸凹している。これは金彩も同じ。ルーペで見るとエナメルや金との境界にある釉薬が僅かに表面張力のような局面を描いているのが分かるのが軟質磁器だ。

ハンドペイント handpainted 器にこの表示があればそれは手描き、ではなく手塗りのことだと疑った方がよい。完全な手描きも少しはあるが、多くは転写でラインを描いた上に手で着色したもの。塗り絵である。
この技法自体は古いものだが、Handpaintedなどと表示するようになったのは新しい。少なくとも19世紀末以後のことだろう。転写製品が一般的になって差別化を図ったのだろうが、どうも釈然としない表現ではある。

ビスク bisque フランス語のビスキューが英米で訛った言葉。釉薬の掛けられてない素焼きの磁器を言う。
多くは磁器人形で、最初に製品化されたのは一七五〇年代の
セーブル。絵具をケチったのでなく大理石彫刻を意識したのだ。一七七〇年には英国に伝わり、後のパリアン磁器へと繋がる。
なお、至る所でビスキューの意味は「二度焼き」との説明を眼にするが、素焼き白磁は一度焼きである。どうして二度焼きと呼ばれるようになったかは不明であるが、おそらくビスク・ドールなどの釉薬のかかっていない薄く着色した磁器をそう呼ぶようになったのが溯って白い素焼きまで言うようになったのだと思われる。すなはち
セーブルで開発された頃はビスクとは呼ばれてなかったのだろう。焼成後の白磁に着色してもう一度焼くので二度焼。ただし実際にはなかなか二度では済まないのだが。

ファイアンス Faience フランス語で錫釉陶器を言う。だからマヨリカデルフトもファイアンスなのだが、普通フランス、それにドイツで焼かれたものを指す。
マヨリカの製法がフランスに入ったのは14世紀末くらいからで、当然マヨリカの影響が濃かった。ファイアンスの語源もマヨリカの生産地の一つ、ファエンツァから招来された製品を呼んでいたのがフランス製品にも使用されたとされている。フランス独自の味わいが出てくるのは16世紀になってから。カラフルで細かい絵付けが代表的特徴。評価はデルフトと同じくらいで、特に珍しいものや優れたものでもなければそう高価なものではない

ポテリー pottery セラミックから磁器を除いたもの。つまり陶器、ストーン・ウェア、土器を言うが、通常日本でいうところの陶器の意味で使われることが多く、土器を単独で呼ぶことはまず無い。つまり「古代メソポタミア・ポテリーの歴史」などと使われることはなく、この場合は「メソポタミア・アーセンウェアの歴史」となる。
ここでは陶器と磁器の区別の仕方を書いておく。
まず指で軽く弾いてみる。ボールペンなんかを使ってはいけない。18世紀の金彩などは簡単に剥がれてしまうし、安物にしても大切に扱いたい。
さて、弾いてガラスの様な澄んだ金属音なら磁器。鈍ければ陶器。ただしヒビ割れがある場合は磁器も音が鈍い。だから修理を確認するにも弾くのが一つの方法だが、骨董屋などでやると嫌がられるから店主に聞こえないようにやることだ。
強い光にかざして見るもの良い。裏側の手影が見えるようなら磁器。見えなければ陶器。勿論磁器でも彩色で埋め尽くされている場合や分厚いものはこの限りではない。破片を見る機会があればわかり易い。磁器は角が鋭くガラスの様。陶器は鈍く石膏のよう。アメリカでは法的に、と言うのも磁器と陶器で関税が違うからだが、区別するのは水分の吸水量による。カラカラに乾燥させて重さを量り、後に煮詰めてまた量るのだそうで、ご苦労様。

ボーン・チャイナ bone−china 18世紀の英国で焼成時に破損の多い軟質磁器に動物の骨(主に牛)を焼いた灰を混ぜると安定することが発見され、ボウ、チェルシー、ダービーなどで量産された。
この骨灰を
硬質磁器用の土に混ぜて強度が増す方法が1794年にヨサイア・スポードにより開発され、以後英国を代表する製品の一つとなる。現代のは通常の硬質磁器に比べて4倍近くの強度を持つと言うことである。
遺骨を森や海に撒くより、磁土に混ぜて焼いてもらっては如何。大いに子孫に感謝されるのではないか。保証はしないが。

ゆうやく 釉薬 glaze うわぐすりとも言う。陶磁器の表面を覆うガラス状の皮膜。
風呂場のタイルは汚れにくい。よほど垢でもこびり付かせない限りカビなども生えないものだ。また汚れても簡単に落せる。これはタイルの表面を釉薬が覆っているため。もしもタイルに釉薬が掛けられていない素焼きのものであれば、タイルの目地のようにひどく汚れを落すのに手間がかかるし、タイルが水を吸って風呂場はいつもじめじめすることになる。風呂場のタイルならまだしも便器では大変だ。サンポールも役に立たない。
釉薬にはそのように汚れにくく水を通さない利点と、焼きものの強度を増す役割もある。
更に釉薬の優れた点は自由な色を付けられることだ。土そのものに着色することも可能だが色が限られるし、それだけではあまり美しいものではない。釉薬は変幻自在だ。中国陶磁器では、その自在故に青磁や天目などの美しさを探し出すことに労力が注がれた。しかし西洋では釉薬の美術的な役割は小さい。
古代エジプトから発展してきた釉薬はローマでほぼ完成されていた。それでも釉薬自体で見せる陶器は少なく、中世に至ってはコーティング材としての役割しかない。ようやく中世終わり頃になって西洋にデビューした乳白色の錫釉は西洋陶器の基幹を成す釉薬なのだが、あくまで上絵を引き立てるものでしかなかった。西洋陶磁で釉薬自体を鑑賞するような品が登場するのはアール・ヌーボー以降になる。
釉薬の使い方には東洋と西洋の陶磁に対する価値観の相違が伺われて面白い。

ラスター lustre 金属のような光沢を表現する顔料や釉薬。主に酸化銅などの酸化金属が使われる。金属の含有量が多ければそのままの金属光沢が得られ、少なければ玉虫のように薄く輝く。起源は古代まで溯るが、8〜9世紀のイスラムで貴金属の使用が制限された為の代用品として完成されたと言われる。しかし製品を見れば、代用品というよりは陶器そのものの面白さを追求しており、少なくとも陶工たちに代用品の意識は無かっただろう。
イスパノ・モレスク、マヨリカのが有名だが、近代でもウェッジ・ウッドなどで使用されており、またヌーボー以降のアート・ポテリーにも良く見られる。

レースワーク磁器 lacework porcelain
レース状の磁器。人形のスカートなどに使われる。レースを磁土に浸し、乾燥させて焼くとレースは消滅して磁器だけが残る。1770年頃にマイセンで考案されたというが、頻繁に作られるようになったのは19世紀後期に入ってからのドレスデンなど。マイセン・レース人形の完品はほとんど無く、多少の欠けはあまり減点対象にならないが、ドレスデンはマイナスとなる。完品でもさほど高価な品ではないからマイセン以外の傷物は避けたい。
イタリア製品に陶土の紐を編んでバスケットにしたものを多く見かける。こちらはスパゲティの製麺機に土をぶち込んで作る。レースもバスケットも種を明かせられればどうということもないが。

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