ガンダムで戦ってみよう 〜すれちがい宇宙編〜



1.1 あいさつ

どうも、こんにちは。講師として招かれました、ソクラムです。
聞く所によりますと今日がこの一連の特別講演の第一回ということで、
とても栄誉なことでちょっと緊張してるんですよ。
ということで、僭越ながら私が何をここでお話できるか考えてみたんですけど、
やはり中学生の学力に見合った話題ということでですね。

ええ、宇宙軌道解析です。

はいそこ、立ち上がらない。帰ろうとしない。
大丈夫。ほんのイントロ程度の内容だし、分かりやすくするつもりだから。
そこで君達に興味を持ってもらえるような話題を考えてきたわけですよ。

そう、ガンダムです

そう、このガンダニウム合金製のロボットが宇宙空間でドンパチする模様を
健全な青少年なら一度は目にして血沸き肉踊る経験をしたことでしょう。
それを軌道力学の見地からどの程度可能なのか検証してみようかと。
そうすれば少なくとも軌道力学の基礎がどのようにして成り立っているかが分かると思いますよ。
それでは、ガンダムの戦闘以前の問題として、宇宙で敵と遭遇する難しさから見ていきましょうか。




1.2: 宇宙でまっすぐ飛ぶ奴ぁアホだ

さて、君が宇宙コロニー、サイド7から地球に航行しようかと考えた時、どのような航路を 考えるだろう。
ちなみに君がこんな航路を提案したら落第点だ。システム操縦士から少し本気めの殴打を受けてもしかたがない。




宇宙でこういう航路を取るのは、琵琶湖を迂回してドライブするのは面倒だから泳いで渡るようなOBAKAさんのすることです。
いいですか、地球もコロニーも、太陽を中心に円軌道を動いているんですよ。
正確には楕円軌道ですが、簡単にするため円と仮定しましょう。
地球なんか、一秒間に30キロくらいのスピードで太陽の周りをまわっているのに、そのエネルギーを利用しない手は無いですね。
そこで考え出されたのが、消費エネルギーを最小にする、最も基本的な軌道、ホーマン軌道です。

1.3: ホーマン軌道とは?





じゃあ、この図を使ってプロセスを説明しますね。
まず、あなたの宇宙船はコロニーの周りを周回する軌道にいるところ(軌道@)から始めましょう。
このときコロニーを中心に見たら、大体秒速3キロくらいでグルグル回っているんですけど、コロニー自体が
太陽を中心に秒速20キロくらいで回っているわけですから、太陽人があなたを見たら、
最高秒速23キロくらいで動いてるわけです。

さて、このスピードが最高になる瞬間に、アナタはジェットをつかって増速します。
すると今まで円軌道だったものが、エネルギーが加わることによって楕円軌道になります。
これがホーマン軌道(軌道A)とよばれる軌道です。
あんまり気合入れて増速したら楕円軌道を通り越して放物線軌道となり、外宇宙への旅が始まってしまうのでご注意を。
この最適な増速分の計算は割愛しますね。

さて、楕円軌道となって地球へ近づいたはいいものの、何もしなければそのまま楕円軌道を通って
コロニーのあった場所へ戻ってきてしまいます(帰ってくる頃には、コロニーは公転軌道によって別の場所へ移動していることに注意)
そこで第二のジェット噴射が必要になります。 これは楕円軌道にストップをかけて、再び円軌道(軌道B)にもどす作業です。
こんどは増速でなくて減速するんですね。


こうして地球まで行けるわけですが、どんな感想でしょう。
意外に面倒ですよね。しかしこれは目的地が地球という、単純な軌道を描いてる物体だから、まだマシなんですよ。
今は宇宙で敵とドンパチすることを目的としてるわけです。
敵もおそらくホーマン軌道っぽい楕円軌道を航行してると思われます。
宇宙が三次元空間であることを考慮すると楕円軌道同士のランデブーは至難の業です。ですがまあ、ランデブーに成功したと仮定して、モビルスーツ出動要請が出たとしましょう。
さてさて、どうなることやら。

1.4: すれちがい宇宙

さて、仮に自分達の搭乗するホワイトベースが地球へ向かっている最中に
ジオン軍が綿密な軌道計算のもとにランデブーしてきたとしましょう。
敵艦からいくつかのMSと共に、赤いザクが一機。おなじみのシャア様愛用機です。


だがちょっとまて。
ここでジオンとホワイトベースの軌道を仮定してみよう。
仮に下の図のように約30度の角度で二つの軌道が交差するとしよう。
速度は通常楕円軌道でのスピードは秒速10〜20キロ。
図で表すと下のような感じ。




するとどうだろう。ジオン機とホワイトベースの相対速度は約秒速30キロとなってしまう。
意味分かりますか?一秒で東京から横浜までいけるスピードですよ?

「敵襲です!」

「なんじゃとぉ!?」←誰?

「ジオン軍!右舷一時の方向から・・・」

ドヒュゥゥッ!!

「・・・え?いや?今、あの・・・飛び去りました」

とかなりかねない。ダメじゃん。
でもこの相対速度を減らすためには、両方、もしくはどちらかが減速をしなければなりませんが、
これだけ減速するのに必要な燃料はものすごいコストです。
しかも戦闘終了後、再び増速するためのコストも考えると、なおさらです。
(未来の世界といっても、そこまで燃料の値段が下がるとは思えない)
ですからこの場合は戦いを仕掛ける者の礼儀として、ジオン軍が自腹で逆噴射をするべきでしょう。
さて、逆噴射の結果、相対速度が秒速3キロくらいに縮まったとしましょう。
これ以上に速度を落とすのはコスト面からして危険です。
さて!敵艦から数機のMSがキタキタキターーッ!

ここでちょっとデータを調べたのですが、ザクの通常移動速度は時速100キロくらいと推定されます。
赤ザクはその三倍ですから、時速300キロ近く出てるのでしょう。
しかし相対速度がすでに秒速3キロであることを思い出してください。
単純計算すると、通常ザクは秒速3.03キロ。赤ザクは秒速3.1キロでホワイトベースに近づいてきます。

「つ・・・通常の三倍!!シャアです!!」

そこまでびっくりするほどの差でしょうか。オペレーター君。


1.5: そのうえ殴り合いだ!

ここまで想定した場合、もはや通常のガンダムでの戦闘は不可能です。
ここで繰り広げられるのは、まさに一回勝負。
相対速度秒速3キロですれ違う一瞬が勝負。
それを逃したらもはや二度とそのMSと遭遇することは不可能でしょう。
この場合、実はガンダムの武器はなんでもよろしい。
敵にあたりさえすれば秒速3キロ以上で叩き込まれるわけですから、
ビームサーベルだろうが鉄パイプだろうが、触れた瞬間に敵MSは大破です。

ですが、もしあなたがガンダム操縦者なら、一つだけアドバイスだ。
武器が敵に当たる瞬間、武器から手を離して、そのまま敵にぶつけましょう。
もし武器を持ったまま敵に当たってしまったら、その反動でガンダムはきりもみ回転をしながら 軌道を変え、
ホワイトベースがあなた拾い上げることもできなくなります。
目的地の無い宇宙ぶらり旅へ出たくなければ、ぜひ実行してみてください。


1.6: おわりに

さて、ちょっと不完全燃焼の感もありますが、今日の授業はここまで。
軌道解析は計算ばっかの分野ですが、おもいっきり割愛して宇宙で活動する事がどれだけ難儀か強調してみました。
ちょっとでもみんなに軌道解析について興味を持ってもらったら嬉しいなと思う、ソクラムさんでした。
ほなーーー