| プロローグ |
| 長浜遠征がある。SAMURAIもエントリーしてるから、若い殿方たちがいっぱい…。 |
| そう聞いた福子は、男女問わず友達に一括メールした。 |
| 『お弁当に入ってて、男ウケするものって何?』 |
| T−さん 『おにぎり! ぜったいおにぎりだよ!!』 |
| N浦 『生野菜で彩ってある弁当は女性らしさを感じるよ』 |
| K子ちん 『武生のアピタのお惣菜コーナーの鶏唐がおいしいよ。 |
| わたし、お弁当デートの時は自分で作ったふりしていつも使ってるよ。 |
| なかなか評判いいから。』 etc. |
| みんな、参考になる意見ありがとー!! |
| ということで、差し入れメニューは 『おにぎり、サラダ、鶏唐』 に決定! |
| でも、こって見えるように、おにぎりはもち米を使っておこわにしよう。 |
| 時間があったら中華ちまきも作ろうかね。 |
| サラダは春巻きの皮で巻いて生春巻きにしよう。 |
| 鶏唐はアピタのお惣菜コーナーね。よしよし。 |
| あとは…、レモンのはちみつ漬けでも作っておけば、福子、好感度アップまちがいなしだわ♪ |
| 長浜遠征前日。アピタにて。午後6:00。 |
| 買い物かごの中身。 |
| もち米、ヤマモリ山菜釜飯の素、生春巻きの皮、生春巻きの具&野菜各種、 |
| 鶏唐2パック、レモン、他。 |
| 長浜遠征前日。自宅、居間にて。午後8:30 |
| ……なぜ? なぜ食卓に鶏唐が並んでる?それもドレッシングがかかってる…?なぜ…? |
| 買い物袋をいったん自宅に置き、買い忘れた蜂蜜を買いに近くのスーパーに向かい、 |
| 友人宅に寄り道して、帰宅した福子の前に、生春巻き用に買った野菜と鶏唐が |
| 一枚の大皿に盛られている。今日の晩酌のつまみとして…。 |
| 「おかあさん、鶏唐2パックあったよね? 2パックとも使っちゃった?」 |
| 「1パックは僕ら(愛犬たち)が食べたよ。」 |
| 「……。」 |
| 野菜はさすがに全部は使われていなかったから、生春巻きはできる。 |
| でも、おいしいと好評に違いない鶏唐がなくなってしまったのは痛い。 |
| アピタはもう閉まっている…。 |
| 『福子、この鶏唐、旨いよ。福子が作ったの?』 |
| 『うん♪ よかったぁ、口にあったみたいで。』 |
| 『福子はいい嫁さんになるね。』 |
| 『きゃっ、やだ〜、はずかしぃ〜。』 |
| 『僕の嫁さんに……。』 |
| 『えっ……。』 |
| こんな会話を誰かと交わすはずだった。 |
| 福子の密やかなもくろみはもろくもくずれさってしまった。 |
| 長浜遠征当日。自宅、自室にて。午前5:00。 |
| 目覚ましは6時にセットしてある。 |
| 仕込みに手間取って、昨夜寝たのは遅かった。 |
| 〜中華ちまきも作ることにしたのはいいが、竹の皮はやはりくせものだった。 |
| それなのに、なぜ、こんな時間に目が覚めるのだ? |
| これじゃあ、まちに待った遠足の日の小学生のようではないか。 |
| もう1時間眠ろう。長浜まで運転しなければならないのだから。 |
| 睡眠不足での運転は危険だ。 |
| 長浜遠征当日。自宅、キッチンにて。午前7:00。 |
| 結局眠れなかった。 |
| 仕方なく5:30頃起き出し、シャワーを浴び、差し入れメニューを作り始めた。 |
| 1時間もあれば出来ると思っていた生春巻きが予定外に手間がかかる。 |
| 早めに作り始めたこともあって、余裕をかましていたが、 |
| これでは8:00には家を出発するつもりでいたのが、無理そうだ。 |
| 中華ちまきは蒸しあがった。 |
| でも、まだ、炊き上がったばかりの山菜おこわをおにぎりにしなきゃ。 |
| 何よりも、私の顔もまだできていない。 |
| こうなったら奥の手だ! |
| 「おかーさーん! いつまで寝てるのー! 起きてー!! 手伝ってー!!」 |
| 長浜遠征当日。自宅、キッチンにて。午前8:20。 |
| 「しゅうりょー!」 |
| 「終了ってあんた、この洗いものはどうするつもりやの!? |
| もういいわ! はよ行け、ばか娘!」 |
| 暖かく送り出してくれる母に、 |
| 『まだ顔作ってないの』 |
| とは言えず、福子は追い出されるように長浜へ出発した。 |
| 生春巻きとレモンのはちみつ漬けを入れたクーラーボックスに保冷材を入れ忘れたまま…。 |
| エピローグ |
| 鶏唐はなくなったけど、おにぎりは美味しくできたはず! だって釜飯の素だもん♪ |
| 生春巻きだって、タレさえうまけりゃ旨いのよ! |
| レモンのはちみつ漬けで 『後輩マネージャー』 チックをよそおえば……ふふっ。 |
| さっ、何人の殿方が私になびくのかしら〜♪ |
| 4月のさわやかな風に乗って、愛車ビッツで山道を走る福子の心は浮かれていた。 |