2−1
 
世界を支配した「王」の敗北…。
絶対的支配者を失った世界は、「王」を破った五人の「英雄」をそれぞれ国主に抱く、
「ロカマス」
「イヴァリアス」
「アトラス」
「オルゴン」
「クリアスタ」
の五国に分割された。
それぞれの国には、それぞれの国主を信奉する者が集まっていることが、
五国をより特徴づけている。

「お前はイヴァリアスについてどれぐらいの知識がある?」

カイゼルの問いに、ロクスは暫く首を捻っていたが、

「騎士の国…ぐらいです。ごめんなさい。」

騎士の集う国イヴァリアス。
五人の「英雄」のうちで剣技の達人であったリュフィード=ヴァン=イヴァリアスがうち立てた国家。
国民の大半は剣を宝としており、成人式を迎える年になれば鍛冶屋に自らの剣を作りに行く習わしがある。

「国民の大半は常に剣を携帯している。だからといって治安が悪くなることは無いのさ。」

剣と共に国民が最も大事にするのは、所謂「騎士道精神」というものであり、常に自分を見つめ、「善悪」の判断を誤らぬように、幼い頃からのしつけを重要視している。
そのためか、常に武器を身につけているとは思えぬほど市民間のトラブルは少ない。
人を殺すのは武器じゃない、そう誇らしげにカイゼルは語った。

「トラブルが起こる場合は大抵よそ者の腕自慢が来た時さ。お互いの技に誇りを持っているからな…。それに腕試ししたい、っていう気持ちは判らないでもないしな。」

カイゼルらしい言葉に、ロクスの顔が和んだ。
未だ見ぬ“騎士の国”に対する期待と不安が胸を交差する。
賢者ロームに引き取られて以来、ロカマス城より“外の世界”に触れたことのないロクス。
そんな彼にとって、十日前後の行程でも充分“大冒険”だ。

「おっと。言い忘れたが直ぐにイヴァリアスに行く訳じゃないんだ…。」
「え?」

期待を裏切られたような気分になるロクス。
その些細な表情の変化を看取って、カイゼルは申し訳なさそうに言った。

「いや、実はアトラスにも寄っていこうと思っていたんだ。まさかジイさんにお前を連れて行けなんて言われると思っていなかったんでな。」

アトラスは大陸の中央に位置する国家であり、その国主は「英雄」のリーダー格でもあったラルスという人物である。再びロクスの胸が高鳴った。

「アトラスに…僕も行けるんですか?」
「ああ、問題ないはずだ。」

ロクスは心の中で快哉をあげる。
アトラスに行けるということは、自然にその国主である英雄ラルスにも会えるチャンスがある事になる。
ミーハーでなくても、「英雄」に会えるとなれば期待に胸膨らむのは無理もない。
(英雄かあ…どんなに凄い人なんだろう?サイン貰えないかな?)
つい先ほどまでその「英雄」の内の一人の傍に居たとは思えないほど、ロクスは舞い上がっていた。

「ラルス様にもお会いになるのですか?」

しかし、返ってきたカイゼルの答えはロクスを失望させるものだった。

「いや。神殿に参拝しに行くだけさ。」

神殿はアトラスの中心に位置し、ひいては世界のど真ん中でもある。
その神殿の守護者こそ英雄ラルスである。
神殿に行っても会わないことを不思議がるロクスに、

「ラルス様に会えるのはジイさん達“英雄”だけさ。俺なんかじゃあ門前払いなんだよ。」
「そうなんですか…。」

そうと判っていればあくまでローム様の傍に居たのになあ…。
悔やむロクスにカイゼルがニッと笑う。

「ところが…絶対に会えないって訳でもないんだぜ?」

年一回だけあるその機会とは…その先をカイゼルは勿体ぶって教えない。

「何時なんですか?」
「まあ焦るな。楽しみは後にとっておいた方が良いってものだ。アトラスに行くぞ。」

さっさと歩き出すカイゼル。
その背中に、ロクスは思い切りブーイングした。

「カイゼル様のどケチ〜!!」
「“様”は余計だって言っただろうが!?」


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