2−10

「お嬢さん、魔力増幅のネックレス買わない?おまけしておくよ。」
「……。」

魔導国家クリアスタ。
騎士の国イヴァリアスへ向かったはずの二人が着いた場所。
町には魔法関連のショップが建ち並び、料理店の店員達は自らの炎の魔法で調理を行っている。
そんな中、もう何度目か判らないぐらい、ロクスは女に見間違われて商品の説明を受けている。
その度に、隣に居るカイゼルは大笑いした。

「ハハハハハ!客の性別の区別も付かない様じゃ商売人失格だぞ。」
「…もう…どうでも良いですよ…。」

半ばやけくそで、ネックレスを着けてみるロクス。
これがまた似合うから堪ったものではない。
高級そうな輝きを胸に抱いたロクスは、何処かの公爵令嬢と言ってもおかしくないほど気品がある。
不意にパチパチと周囲から拍手がわき起こった。

「似合いますよお嬢さん!」
「是非うちの息子と結婚を!!」

完全に勘違いをして、縁談を持ちかけようとする貴族のご婦人達をかき分けながら、二人は慌ててその店から離れる。

「ところで…これから何処へ行くんですか?」

ロクスは既に心身共に疲れ果てている。
一刻も早く一ヶ所に落ち着いて、ぐっすりと眠りたかった。

「取り敢えず王城に行かないとな。エルシアーヌ様に会えるかどうかは判らないが…。」

言いながら辺りをキョロキョロと見回すカイゼル。
嫌な予感に取りつかれたロクスが、そっと聞いてみる。

「まさか…王城への道が判らないなんて…?」

カイゼルは答えようとしない。
一見確信を持って歩いているように見えるが、時々ロクスを労るふりをして立ち止まっては、辺りをさりげなく見渡している。
駄目だ…これでは例え五分で着けるところでも一生着けやしない。

「あのう…すみませんけど…道を教えて…イテテテ!!。」
「ロクス!てめえ人を信用できないっていうのか!?」

そっと人に道を聞こうとしたロクスの耳を、カイゼルが引っ張った。
まさか面と向かって信用できるわけがないとも言えず、ロクスは渋々カイゼルの案内に従う。
どうやら自分が方向音痴と思われるのが嫌らしく、カイゼルは何としても王城への道を自分で見つけだそうとしている。
しかし、彼の体内の羅針盤が完全に狂っているからなのかどうか知らないが、一向に王城への道は見つかりそうもない。
ウロウロと同じ場所を行き来する二人。
遂に疲労からロクスはその場に座り込んでしまった。

「カイ…ムキにならずに…道を聞いて下さい…。」
「嫌だね!!」

意固地になっているカイゼルは聞く耳をもたない。
しかし、これは自分にとっての死活問題なのだ。
それならば…ロクスは必死に打開策を探す。
導き出された答えとは…

「カイ…僕はもう歩けません…。馬車か何かで…城に行きたい。」

目的地を示せば、向こうが勝手に連れて行ってくれる。
これならばカイゼルのプライドを傷つけることもないだろう。
案の定、カイゼルの顔に安堵の表情が浮かんだ。
それを悟られないように、わざとぶっきらぼうな態度で

「…仕方ないな。もう少し体力をつけろよ。」

もっともらしく言うカイゼル。
頭には来たが、それよりもこれで救われるという思いの方が強い。
タイミング良く、そこへ一台の馬車が通りかかった。
カイゼルがその前に立ちはだかると、

「止まれ!イヴァリアスの王カイゼル=ヴァン=イヴァリアスだ。王城まで乗せてもらいたい!!」

ところが馬車は一向にスピードを緩めようともしなかった。
慌ててカイゼルが横っ飛びで逃れる。

「き…貴様!人を殺す気か!?」

御者を怒鳴りつけるカイゼル。
しかし、御者は怯みもせず冷静に言葉を返した。

「こちらは急ぎなんだ。途中で停まるな、という命令でね。それにいきなり前に飛び出してきたのはそちらだろう?」
「何だと!?」

掴みかかろうとしたカイゼル。必死に止めるロクス。そこに、

「どうしたのです?停まるなと命令したはず…。」

一人の若い女性が、馬車の扉から顔を覗かせていた。

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