お前は利用されている… しきりに誰かが語りかけてくる 利用されている? 誰が? 何のために? 戦え!お前がお前自身であり続けるために! 誰と戦う? 自分自身であり続けるために? いい加減に起きるんだ! うるさいなあ…命令ばっかりするなよ! 「起きろロクス!」 ようやく薄目を開けたロクスを見て、カイゼルはぎょっとした。 不快感を目一杯表しながら睨み付けてくるロクス。 さては寝起きが悪いタイプなのか… 似たような事例で被害に遭っているカイゼルは半歩後ろに下がって警戒する。 しかし完全に覚醒したロクスは、逆に慌てて謝る。 「あ、ごめんなさい!ど…ドラゴンは?」 「ああ…何とかなったさ。それよりも目的地に着いたぞ。」 目的地…? 一時的な記憶喪失状態から脱すると、ロクスは自分達がアトラスに向かっていたことを思い出した。 此処がアトラスなのか。 辺りを見回してみるが、深い霧がたちこめているせいで景色が今ひとつはっきりしない。 判るのは、此処は未だに森の中であるらしいということだ。 「歩けるか?神殿まではあと少し歩くぞ。」 「はい…大丈夫です。」 気を失っていただけで、肉体的ダメージは受けていないはずだ。 しかし、立ち上がろうとしたロクスは、自分の身体が異常に重く感じるのに気付く。 まるで石でも背負っているかの様に、上体がふらつく。 ガクッと膝をつくロクスを見て、カイゼルが心配そうに 「立てないのか?もう少し休んだ方が良さそうだな。」 「す…すみません。でも大丈夫ですよ。」 強がるロクスだが、カイゼルは認めなかった。 「いや、顔色も悪いぞロクス。無理しなくても直ぐそこまで来ている。一休みしたところで変わらんさ。」 カイゼルは自分の荷物を探ると、水筒と粉薬らしきものを差し出した。 何でも「滋養強壮」によく効く薬らしい。 体力があっという間に回復する、と語るカイゼル。 確かに薬の効果は抜群であり、小半時もするとロクスは立ち上がれるまでに回復した。 しかし、相変わらず冴えない顔を浮かべるロクスに、カイゼルは怪訝な顔で 「どうした?未だ何処か変なのか?」 「変というわけでもないんですけど…何となくだるいんです。」 体の調子は先ほどまでとは比べ物にならないほど良い。 しかし、何処か倦怠感が抜けきらない。 自然と足取りも重くなる。 気分転換したいが、霧に包まれた白い空間が続くばかりでそれも叶わない。 少し歩いただけで息を切らすロクスを見て、カイゼルがしゃがんだ。 「背中に乗れ。取り敢えず神殿に行けばベッドと布団ぐらいはあるからな。」 「大丈夫です…歩けますよ。」 途切れ途切れに答えるロクスに、カイゼルは大仰に頭を掻いてみせる。 「大した根性だが…俺は気が短いんでな。お前に合わせて歩いてると日が暮れちまうよ。」 半ば命令口調で、乗れと繰り返すカイゼル。 結局ロクスはその言葉に甘えさせて貰うことにした。 自分の荷物とロクス、更にロクスの荷物を背負っているが、さすが聖騎士は鍛え方も違うようだ。 口笛を吹かんばかりに余裕の表情でずんずん歩く。 「そう言えばカイ様…確か方向音痴だったんじゃ…。」 ふと思い出して、不安げに問うロクスにカイゼルは 「ちゃんと着くよ。それと“様”は余計だって言ったろ?」 宣言通り、霧の彼方にぼんやりと何か建物らしき姿が浮かんできた。 ロクスは知らなかったが、実はカイゼルの手に握られた宝玉が、常に神殿の方角へと彼を導いていたのだ。 幾ら方向音痴でも、ナビがあればさすがに迷わないようである。 |