「ここがパン屋だ」(あれ?)
よく見るとそのパン屋は榊がいつも目にしているパン屋であった。
(あ・・・学校の近くまで来ちゃったのか・・・。)
榊はネコから見ると、いつもの道もこんなに違うものかと思うと、なんだか不思議な感じがした。
(パンなら私でも食べられる・・・)
当然店の中に入って拝借するものかとばかり思っていたが、ルタムは店に入ろうとしない。
「どうしたんですかルタさん。入らないんですか?」
ルタムは微かに笑いながら言った。
「甘いな。店から出てくる人間のパンを奪うのさ。」
正直、榊はあまり気が乗らなかった。
(せっかく買った人のパンをムリヤリ奪うなんて・・・。)
店のドアが開いて、人が出てきた。
(あ、智とよみ・・・。)
店から出てきたのはいつもの二人、智とよみだった。
「おっ、ネコじゃん。しかも2匹も。」
「ホントだ。」
ルタムは2人の持っているパンの袋を狙っている。
「大丈夫、ルタさん。この人達なら何もしなくてもくれるから・・・。」
「え?」
案の定、よみがパンを半分差し出した。
「ほら、やるよネコ。」
「何だ〜。半分しかあげないのか〜?よみの食い意地もハンパじゃ・・・」
「だまれ!だったらお前からも半分やればいいだろ。」
「はいはい・・・。」
智もパンを半分置いた。
ルタムは驚きが隠せない様子。
「何で人間が・・・ネコなんかに・・・。」
「この世には優しい人だっていっぱいいる・・・。さあ食べようルタさん。」
榊がパンを食べているのを見て、ルタムもパンをほおばった。
「ははは。まあゆっくり食えよ。」
智が言った。
「オレは・・・何か大きな勘違いをしていたのかもしれない・・・。」
暮れかけている夕日を見て、ルタムはそうつぶやいた。