今年うつ病に悩む米国の成人推定1,900万人のうち1人は、
あなたが毎日顔を合わせる職場の同僚である可能性がある、と
国立精神衛生研究所(NIMH)は発表している。
それは同じフロアで働く、あの明るそうな秘書であるかも知れない。
先月ずっと、彼女は悲しそうで、疲れているように見え、
仲間と昼食を食べることもほとんどなく、遅くまで仕事をしている。
一番悪いことは、この秘書がうつ病を患っているかもしれないのに、
それに気づいてさえいないことである。
うつ病は作業の生産性や家族関係を損なう深刻な精神病である。
本格的うつ病、気分変調(軽度の継続的なうつ状態)、
そううつ病(双極性変調)は、最も一般的に見られる「うつ」の形態である。
幸いなことに症例の80%で、患者は治療により職場復帰が可能である、と
国立精神衛生研究所は発表している。
うつ病を治療しないでおくと、完全な障害者になる可能性がある。
以下はフロリダに住むフランク・バーグマン(62歳)に起こったことである。
彼はそううつ病と診断されたが、国立うつ病・そううつ病協会の元会長である。
投資銀行に勤務していた10年の間に、仕事の生産性に影響するような
沈滞した気分を経験したが、それがうつ病とは考えたこともなかった。
「何も仕事が手につかない期間が何度かあった。
その期間は私の秘書がカバーしてくれたために、何が起こっているのか
誰にも分からなかった」と、彼は述懐する。
うつ病は悪化を続け、そのため仕事をひとつしくじり、
結婚生活は崩壊の瀬戸際に瀕した。
「6ヵ月間私はベッドから出られなかった。天井をじっと眺めるだけの生活であった。
妻は精神科で診てもらうよう(ようやくのことで)私を説得した。」
1984年、彼はそううつ病(双極性変調)と診断されたが、
この病気はうつ状態と異常な高揚つまり噪状態が交互に現れる、気分の循環を特徴とする。
しかしながら、毎日の投薬によって、職場復帰が可能になった。
現在、G・ピアース・ウッド記念病院で、実質的に住込みで患者の声を代弁する活動をしている。
バーグマンのような協力的な配偶者、または面倒見のよい友人がいない場合には、
職場が労働者に支援の手を差し伸べることもできよう。
バンク・ワン・コープからデルタ航空まで多くの大手企業が、
第一線の治療処置として労働者援助プログラム
(Employee Assistance Programs)
を用意している。
それでも、かなりの数の会社にはこういう制度がない。
国立脳研究財団と人的資源管理協会
(Society for Human Resources Management)
が1999年に行った、職場のうつ病調査に回答を寄せた米国企業406社のうち、
68%が内密にカウンセリングを行うことができるEAPを整備していた。
しかしながら、労働者にEAPにcontactするよう勧めた会社は6割しかなかった。
自分の部下の能力をよく知っており、うつ病を識別できるマネージャーも
支援の手を差し伸べられると語るのは、ヴァージニア州に本拠を置く
SHRMの人事担当副理事ティム・ウオーカップである。
彼は次のように言う。
「事業主は、プライバシーを侵さない範囲で、できるかぎり
積極的に関わるよう心がけるべきである。
仕事上の問題は、他人との関わりとか家族関係など、
職場以外の問題に関係していることが多い。」
いじめ、暴力、休みなしの長時間労働、その他
うつ病の引き金となりかねないストレス要因などの職場環境も、
リスク要因をはらんでいる。
調査に回答した企業の担当者がうつ病と認識した最も一般的な兆候には、
疲労感、無気力、集中力欠如、生産性の低下、全般的な悲しみ、
理由のない欠勤などがあると報告している。
不安感とか自殺願望などのうつの兆候が2週間以上続いたら、
これはもう単なる憂鬱ではない可能性がある。
「知識のない監督者は、くよくよするな、などと忠告することがよくあるが、
これではうつ病の解決にならない」。
このように述べるのは、従業員5000人の自動車工場を経営する
ユナイテッド・モーター・マニュファクチャリング社(カリフォルニア州)で
EAPカウンセラーも務める、臨床精神科医で、
その道の専門家マーリン・グリフィスである。
「会社が労働者支援プログラムを職場に導入すると、
(うつ病などの)問題があってもよいから、ここへ行って
解決しなさいという、会社の意思表示になる。」
最悪のシナリオは、うつ病に罹った労働者が
正しい治療も援助も受けず、結局自殺してしまうケースである
と、レグ・ウイリアムズは言う。
彼はミシガン大学の看護学助教授で、うつ病の研究をしている。
(米国精神医学会によると、うつ病患者の約15%が自殺するという。)
「私の診たうつ病患者の多くが、自分などいない方が家族のためだ、と言うのを耳にした。
彼らのネガティブな考え方は、ひとり歩きをし、患者自身が間違いないと信じてしまうのだ。
それは間違いなのだと、彼らを説得しなければならない」。
ウイリアムズは続けて、
「うつ病は治療可能な病気であり、
患者がこれを管理できるように助ける道を探るのが、
私たちの義務である」
と語る。
正しい投薬によって、うつ病患者の75%は症状が改善する。
心理療法によって、その治癒率は90%にまで上がる。
早期の診断、周囲のサポート、治療によって労働者はうつ病を克服できるのだ。