怪談の心理学


社会心理学、身体と脳との生理学、口承文学含む民俗学。「怪談」を読み解くとき、どれが一番有効な手法だろうか。全てだ。人の口に上る「まことしやかに語り継がれる一般の知識では説明不能な現象」の謎の糸を解きほぐそうとするとき、どれ一つがかけてもその成り立ちとからくりに肉薄することはできない。が、この三つに通じており、しかも中立な見地から問題に向かう者は皆無に等しかったので、これまで怪談は良く語られぬままだった。この本の著者は、ときには最新の睡眠に関する研究から、ときにはアメリカの片田舎に始まったポルターガイスト騒ぎについての資料から、ときには社会史から、怪談のからくりを見事に解き明かす。そして、これが重要なのだが・・・怪談の秘密めいた帳を全て引き剥がしむき出しにして白日の下に曝そうとは決してしてしないのだ。そこに著者の怪談に対する(或いは怪談を生み出したがる人の心に対する)ほのかなる愛を覚える。現在出ている怪談関係の教養書の中ではおそらく最も優れた書であり、これが講談社の現代新書であるということに、私は驚きと感謝とを隠せない(図書館で借りてよんだけど)。

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