夜想曲

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運命なんてものは、信じていなかった…。

幸せそうな恋人達が、よく口にする…。それを聞いていても、滑稽にしか見えなかった。

彼と逢うまでは…。

夜の街を壬生は颯爽と歩いていた。
前に引き受けていた仕事の雑処理をし終え、帰宅しようかと思っていた。
壬生の頭の中にふと、不安がよぎった。虫の報せとも言うべきか…。
いつも今ぐらいの時間に龍麻から連絡が無いのも不自然だった。

紅葉は嫌な予感がした。龍麻に電話をしようと、携帯を持ったその瞬間だった。
携帯の嫌な音が鳴り響いた。

ー壬生か?ー

ー村雨さん?ー

次の言葉を聞いた瞬間紅葉の目の前が真っ白になった。

ー龍麻が敵に?!!ー

紅葉が桜ヶ丘病院に着いたのは、真夜中だった。
看護婦達が忙しなく走り回っている。
そこには、いつも龍麻と共に居る、真神の四人の姿があった。
ー君達が付いてて…
言いかけて紅葉は言葉を飲んだ。
龍麻がやられるほどだったのだ。それほどの敵だったのだ。一瞬の事だったのだろう。嘆く劉を前に、紅葉は無言だった。

どれほどの時間がすぎただろうか…。
龍麻が敵にやられるなんて考えもしなかった。

気付けば彼が、いつでも前に、彼が笑っていた。

気付けば、いつの間にか、彼のことばかり考えるようになっていた。

失いそうになり、初めて気が付く。
ー君の事を愛しているー
龍麻が病院の白いベッドの上で横たわっているのは何か奇妙だった。体を大事にするよう龍麻に伝え、去ろうとしたとき、龍麻は紅葉に一言…。
「傍に居てくれないか?」
紅葉は目を丸くした。龍麻自信から弱さを見せられ、紅葉は驚きと共に少しの嬉しさを感じた。

「紅葉がそんな風に笑うの久しぶりだね。」
龍麻は言った。
「そうかな…。ここ暫く、忙しかったからね。でも何だか、気が抜けたよ。」
紅葉が笑う事は滅多に無い。笑う事さえ苦痛に感じていた紅葉が笑えるようになったのは、龍麻に出逢ってからだった。

屈託無く笑う龍麻が愛しくなり、紅葉の口唇が近づく。
紅葉は改めて想う。
ー君がいたから、笑う事が出来た。。
ー君がいたから…君がいなければ、何も無かった。

久しぶりの永いキスだった。


END

氷村玲著
PCサイト:夢見ケ丘




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