幸せになれる石・・・・・
そう言って大ちゃんから渡された2000年クリスマス・イヴ
何かを訴える目で、私の白いコートのポケットにそっと入れてくれた。
「ありがと・・・」
私は何も考えずに微笑み、ポケットの中で彼の冷たい手に触れた。
その石は私がどこに行こうとも一緒だった。
大ちゃんとはいつも当たり前のように一緒にいたが、
その石は本当にずっと私と一緒で、私にとって一番大切なものだった。
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最近大ちゃんから連絡が来ない・・・
と思い始めたのは暖かくなり始めた頃。
「ないっ!!!」
私は頭が真っ白になった。
学校よりも石を探すのに一心で部屋中探しまくった。
(どうして・・・・・そんなはずはないのに・・・・・)
いくら探しても石は見つからなかった。
(大ちゃん、ごめんなさい・・・・・)
嫌な予感がした。
私は仕方なく学校へ足を運んだ。
帰りに靴箱の中に大ちゃんからの手紙が入っていた。
≪話したい事があるからいつもの所で待ってる≫
私はこの時に石をなくしたことをあやまろうと思った。
いつもの公園、曇り空・・・・大ちゃんがベンチに座っていた。
20分経って、先に口を開いたのは大ちゃんの方だった。
「あのさぁー、オレ達もう終わりにしないか?」
一瞬彼が何を言ったのか分からなかったが、
聞き返す声も出なかった。
(どうして・・・・・そんなはずはないのに・・・・・)
大ちゃんとは絶対にこんな時が来るなんて思ってもいなかった私は
信じられなかった。
その後もずっと大ちゃんがしゃべりっぱなしだったが、
私は何一つ覚えていない。
ただ頭の中で(どうして・・・)と繰り返すばかり。
「じゃあな!」
大ちゃんが立ち上がって去っていく・・・・・
(行っちゃヤダ、行かないで!!!!)
私は引き止めることがなぜか出来なかった。
「大ちゃん、ごめんなさい・・・・・」
私は暗くなるまで泣いた。
力の抜け切った体で、ようやく家にたどり着き玄関のドアを開けると
母さんが、
「コレ、あんたのでしょ?」
と、あの石を差し出した。
「あっ!これ、探してたの。ありがと」
私は石を受け取った。
冷たい・・・・・死んでる・・・・・
そんな気がした。
部屋に閉じこもり石をにぎって泣き喚いていた私は
いつの間にか眠っていた。
朝になってもその石は生き返ることはなかった。
―― 数ヶ月経ち、私もようやく立ち直れた頃、
2、3日同じ夢を見た。
(水の中に石が沈んでゆく・・・・・)
夢は必ずそこで途切れるのだった。
気づけば私の大ちゃんに対する想いは少しずつ消えかけていた。
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2001年12月24日、
私も新しい彼氏が出来、
この日は駅で待ち合わせすることになっていた。
少し早めに着いた私は、
寒さで冷たくなった手をポケットの中に入れた。
「石!!!」
はっとして見ると、去年と同じコートを着ていた。
石が入ってる・・・。
「大ちゃんっ!!!!」
目の前に大ちゃんがいた。
びっくりして私は少し隠れて見ていた。
間も経たずに大ちゃんの彼女らしき人が現れ
2人はどこかに行ってしまった。
(あぁ〜あっ、1年前は・・・・)なんて考えていると、
「待った?」と彼氏が私の肩をポンとたたく。
少し驚いて我に返った。
大ちゃん達も同じ電車に乗る様子。
大ちゃんは私に気づき、あの石を渡してくれた時と同じ目で
こっちを見た。
(幸せになれよ。)
そんな目だった。
私は心の中でうなずいて、ポケットの中で石を握りしめたまま
彼氏に寄りかかった。
夕方、私達は海へ行った。
少し冷たい風が吹いていた。
「海って、自分の中の何かを洗い流してくれる気がするんだよなー」
と彼氏。
私は立ち上がってポケットの中から石を取り出し、
走って波打ち際まで行き、石を思いっきり投げた。
チャプン・・・・・・・・・ ザザーーン・・・・・・・・・・
心がスーーーッとした。
「何投げたの?」
「石だよ」
「石?」
私は大きくい息をした。
「うんっ!」
2人は微笑み合って軽くキスを交わした。
幸せになれる石は、本当に私を幸せにしてくれたのだった。
―――――― the end ――――――――
※編集後記※
98%ノンフィクションだけど、一部フィクション有り(笑)
ってかコレってある意味、カミングアウトじゃねぇ?(アセ: