私は恋をした。
私たちは大手町の会社で働いていた。
同じ会社の同じフロア―の同じ部に彼はいた。
そしてある日私たちは、突然気付いた。
彼の事はずっと前から知っていた。
彼も私の事はずっと前から知っていた。
それは夏だった。

彼は私を誘った。
8月の終わりの金曜日だった。
私は友人との先約があった。
彼も出張で本社に来ていた同期の友人と先約があった。
けれど、私たちは、約束をした。
「新高輪プリンスホテルで。」と。

私たちは時間が足りなかった。
今までの時間を埋める事が出来るかのように、毎日毎日約束をした。
それでも足りなかった。
全てが不十分に感じられた。
そして全てが十分に感じられた。
私たちは心から愛し合っていた。