おとな


気がつくと、部屋の中だった。そして海未は大人になっていた
背もすらっと高かったし、胸をさわるとおっぱいもぽよよんとしている。
桜が最近買った赤のドレスを着てみるとぴったりだった。
ママの赤い口紅をぬってみると、とても綺麗になった。
足と手の指先に赤のマネキュアをぬって鏡に姿をうつしてみた。
まるで、オードリー・ヘップバーンのようだわ
これってあたしなのね
と海未は満足そうに微笑んだ。
おこづかいで買った赤のサンダルをはいてみるとぴったりだ。
しばらく鏡のなかの自分と遊んでいると、ノックがした。
ドアをあけるとタローだった。
タローはいつものように頭をなでなではしなかった。
そのかわりにそっと海未の手をつないでくれた。
海未はなんだか涙が出そうになった。
嬉しいのか悲しいのかはよくわからない。
これが恋なのかなと思った。二人は夢子浜まで歩いた。
タローはいつになく無口で、海未は山のように話したいことはあったが、
おとなしくだまっていた。
海未ははじめてタローをみた夜のことを思い出していた。
今日もあの夜のように月がとても綺麗で、
月明かりに照らされたタローの横顔をみていると
胸がきゅん・・となった。
夢子浜には舟が待っていた。
タローは海未のおでこにちょこんとキスをして、にっこり笑った。
海未はタローが消えそうで不安になり
「先生!コンドルが飛んでゆく おしえてよー」
と言った。タローは海未の手に小箱を渡すと舟にむかった。
「先生!あたしもつれてってよー」
海未は太郎を追いかけたが
大きな波が二人の間を襲って、海未は一人砂浜に残された。
舟はどんどん沖にでていき、小さくなり、やがて見えなくなってしまった。
海未は、なりふりかまわずわんわん泣いた。
せっかくしたお化粧もドレスもサンダルも
なにもかもが、波にぬれてびしょびしょになった。

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