謎の青年


すると「ぽこぽこぽこ」と音がする。
だんだん近づいてくるので海未は怖くなり、
岩陰にかくれた。すると小さな舟がやってきて、
一人の男が舟からおりてきた。
男は舟を砂浜にあげ、「おいしょっ おいっしょ」と言いながら
海未のかくれている岩かげをこえて、道路の方へ舟を押して行った。
月明かりに照らされた男は、身長はすらっと高く、
さわやかな感じでちょっとキムタクに似ていた。
しばらく海未はその青年にくぎづけになっていた。
青年が道路の向うに消えると、それと入れ違いに
ママが怖い顔をしてやって来た。
海未をみつけると、おしりをぶって家につれて帰った。

海未は学校の授業中もあの青年のことを考えていた。
どこからきたんだろうとか、きっとキムタクの遠い親戚に
違いないとか、この町のどこに住んでいるのだろうとか、
裏山のマンションに住むに違いないとか、海未の空想は
どんどんふくらんでいった。

晩御飯の時に青年の謎がわかった。
どうやら桜の学校の英語教師になったらしいのだ。
桜はイカをほうばりながら、うれしそうに
英語教師の話をしていた。
パパはその話をちょっとむっとしながら聞いている。
どうやら自分以外の男のうわさは好きではないようだ。
「年齢は25歳で東京から来たんだって
趣味は読書で彼女はいないらしいのよね〜。
血液型はA型でおとめ座なのよ。」
そのおしゃべりはとまることを知らなかった。
それから、晩御飯のたびに桜は先生の話ばかりするようになった。
英語も大嫌いだったはずなのに、一生懸命勉強している。
それにまけじと海未も呪文のように唱え始めた。
「あいむ・げっちゅう。。。」

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