変なお姉ちゃん


最近、桜の帰りがおそくなった。晩御飯も一緒にしなくなり、
パパとママと桜はしょっちゅうけんかをするようになった。
海未は、タローの話が聞けないのでつまんないなと思っていた。
でもタローにいつ会ってもいいように
「コンドルが飛んでゆく」の歌を口づさんでいた。

夏休みが終わって二学期が始まると、海未は小学校へ
行かなくてはならなかった。
クラスの男のコに「好きです」と言われて、
「子供とはつきあえないの」と海未は鼻で笑った。
なんで あたしは小学生なのかな?タローに会いたいな
子供ばかりの所はうんざりだわ
と、たいくつな日々を過ごしていた。
以前大好きだった鬼ごっこや
カニとりも急につまらないものに思えてきた。
ママの使っている赤い口紅をつけてみたり、
おこづかいで赤いサンダルも買ってみた。
桜がそのサンダルを見つけてはくとぴったりで、
海未は嵐のように泣いて、怒った。
お姉ちゃんは最近きれいになった 海未はそう思った。
以前のようにおしゃべりもしなくなったし、なにか考え事をすることが
多くなった。以前は海未をいじめたり、からかったりしていたのに、
海未が眠るときには、桜はそっと手をつなぐようになった。
「またタローに会いたいな」と海未はつぶやいた。
すると「先生は最近忙しいからね」と桜はためいきをついた。
「かわりにお姉ちゃんが英語をおしえてあげるよ」と言った。
「ハッピー」と「グッバイ」と「グッ ナイト」を覚えて、
いつのまにか眠りについた。
でも海未は決心していた。明日タローに会いにいこうと

朝から海未はうきうきしていた。学校の勉強もきちんとした。
友達づきあいもして、鬼ごっこもして遊んだ。
そして夕方になると、一目散にタローのいる学校へとむかった。
「コンドルが飛んでゆく」を口ずさみながら運動場を歩いていると
桜の友達にばったり会った。海未をみるとちょっとびっくりしてから
「お姉ちゃんなら3年B組にいるよ。一階のどんつきね。」と教えてくれた。
「ありがとう」とニッコリ笑うと、
「可愛いね。海未ちゃんは大人になるとすごい美人になるよっ」
と言って頭をなでなでされた。
わたしは今でも十分美人だわっ 
それに あたしはタローに会いにいくのよっ 
とモデル歩きをしながら心で呟いた。
英語教室は3階のどんつきにある。
ローカは静まりかえってしん・・・としている。
海未は怖くなったが、
タローに会いたい一心で英語教室に向かった。
すると「コンドルが飛んでゆく」がかすかにきこえる。
タローはよっぽどこの歌が好きらしい。
おどろかさないように海未はこっそりドアをあけた。
教室のピアノのうしろにタローと桜がいて
そしてキスをしていた。

海未は、そのまま一目散に階段を駆け下りて、走った。
何度か転んで、途中誰かに声をかけられたが
それもふりきって、走って走った。
学校にはいたくなかった。家にも帰りたくなかった。
涙があふれてとまらなかった。
夢子浜まで走った。
心臓がばくばくいっていた。海未は泣きながら思った。
「なんであたしは小学生なんだろう」
そして人魚姫に出てきた魔法使いのおばあさんを思い出して
「どうか大人にして下さい」とずっと祈り続けた。

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