私が彼に初めて出会ったのは、彼の部下になってから。
私は高校を卒業するなり就職した。
勉強も出来なかったし、親の重圧に耐えられず大学進学等は
最初から希望していなかった。
就職したのは、あるメーカーだった。
私は現場(工場)に配属が決まり、毎日製品とにらめっこ。
おまけに上司はアンポンタンで話しの分からぬカタブツ。
頭脳明晰なワリに、物事の論理を全く理解できない上司。
「こんな場所で働けるか!」それが私の入社翌日の感想だった。
石の上にも3年・・・と言う。
だが3年も、こんな場所ではとてもじゃないが耐えられない!
そう思い、1年間は我慢してでも勤める事にした。
私は高校生の頃、バイトに明け暮れた。
部活もやっていたが、要領よくサボったりしながら。
今思うと、よく体力があったものだと思う。
高校生の頃は何個もバイトを掛け持ちして、高卒初任給以上の
お給料を毎月手にしていたのだ。
それに比べたら、「なんてヒマで退屈でバカらしい仕事!」と感じた。
まだ社会で働く中での、余裕や時間配分と言うものを分かっては
いなかったし、ただガムシャラに働くだけのバイトという職しか私は
知らなかったのだ。
なんとか1年間この会社で働き続け、1年1ヶ月が経った頃、
ついに上司に辞表を出した。人間的に、どうしようもないと思って
見ていた上司だったが、「あなたは頭の良い人だからもったいない」
こう言ってくれたのには驚いた事があった。
こうして私が辞表を出したのを聞きつけ、彼が私を自分の部下に
引っ張ってくれたのだった。
彼の部署は営業。
私は彼の顔も何も知らなかった。
彼も私を全く知らなかったハズ。
でも・・・同じ社内、噂くらいはお互い知っていた。