ワタシノタカラモノ


「貴方の一番大切なものはなに?」

彼女はそう言って私に笑いかけた。

そうして、いつのまにか私の数々の宝物は姿を消していた。

 

彼女はまだほんの子供であったが、私の子供などでは決してなかったのだ。

それなのに、彼女はいつも悲しそうに私に問い掛けた。

「貴方の一番大切なものはなに?」

彼女の欲している答えに気付かないまま私は、随分長い時間を経てしまった。

私は彼女の名前すらろくに覚えていなかった。

彼女はふとしたきっかけから、私の家に棲む事になった俄かの居候であった。

それ以外のつながりといったら、遠い親戚という程度のものしかなかった。

会ったこともないような、小さな女の子の一番欲しいものが何であるのか、私にわかる訳もなかったのだ。

加えて私は母親でもない。

だから、私には彼女の気持ちなどさっぱり理解できていなかったのだ。

私の大事なものが次々と姿を消していく部屋に、彼女を一人置き去りにしたのも
彼女の気持ちを考えていなかった私の過失なのかもしれない。

彼女は私に置き去りにされるたびに私の大切な物を一つずつ隠していった。

私は当然彼女が犯人だということに気付きもしたし、怒りもした。

彼女は怒った私をみて、僅かに嬉しそうな微妙な表情をした。

私にとっては不可解以外のなにものでもないその態度は
私に、彼女との関係を失望させるのには充分だった。


彼女を迎えにくるという老夫婦の連絡を受けて私は心中密かに小躍りしたものだった。

ついに私は、彼女が引き取り手である老夫婦に引き取られていくまで
全く彼女の欲しいものについて考えをめぐらすことをしなかった。

 




彼女の消えた部屋の中で
私は消えていたタカラモノの山を見つけた。

不思議と嬉しいような感情が湧かなかった。

なにかが自分のなかで納得いかなかったのだ。

自分の感情に「妙」というレッテルを貼るのは可笑しなことかもしれないが
そのときの私は自分の感情を当に妙だと思ったのだ。

そうして、箪笥の奥からでてきたタカラモノの山を見つめながら
私ははじめて彼女の欲しがっていたものの正体を考えるに至ったのだった。

 

 アナタノイチバンタイセツナモノハナニ?

それは確かに私の目の前にある山などではなかった。