中性的偽証による友

「貴方の全てを受け入れてあげられるほど、私出来た人間じゃないみたい。」

美春は小さな頭をかわいらしい仕草で傾げて見せた。

その前で酷くショックを受けているのは大した迫力のある美人だった。

骨格の整った美人というのは、立っているだけで際立って見えるものなのだ。

その美人は、美春の肩口に顔を寄せて苦痛を堪えているようだった。

「泣かないで、玲子。なにも友達やめるとは言ってないでしょう?」

美春は困ったように肩口に埋められたウェーブのかかった髪を撫でた。

「私・・・貴方に恋人取られるとは思ってもみなかったのよ。」

そう言って小さくため息をついた。

「でも、考えてみれば玲子は美人だし、スタイルもいいし・・・ありえない話ではなかったのよね。」

玲子はふと顔を挙げると美春の顔をみつめて笑った。

「そうやって私のことを褒めてくれるのは美春くらいなもんよ。
私は、健治を美春から奪おうなんて、少しも思ってなかったの。でも・・・」

そういって少し美春に申し訳ないような顔をすると、
「あぁいう言葉って、誰から言われてもうれしいもんなのよねぇ。」
と続けた。

どうやら、多少の照れはあるらしい。

「でも、私は美春というものがありながら誰にでも声をかける健治にすっごい腹が立ったのよ。」
にっこり笑って拳を固めるようなポーズを見せる。

「で・・・殴っちゃったのよ。ごめんなさいね。」

表情が豊かな玲子を見ていると、
美春は複雑な心境もそこそこに、すぐにでも笑って許してしまいたくなる。
玲子はそういった魅力を生まれながらに兼ね備えているかのようだった。

「でもねぇ、殴ったのよ。それなのに健治、逆に「そんなつれない君も好きだ」とか言い出すのよ。」
呆れたように美春に訴える玲子に、健治に対する何がしかの感情はおよそ見当たらない。
つまり、眼中にないのだ。

美春はいくら薄情な元恋人とはいえ、少々可哀想になってきた。

しかし、それ以上に情けなくなってきた。

「・・・・バカね;」

美春は健治のそういった姿を想像しながら呆れてしまった。

自分といる時の健治にはそういう所は見られなかった。

そんな部分を微塵も感じさせなかったくせに、
酷く情けない所業で玲子に言い縋る健治が美春の中でも降格したような気分になった。

「でも、多分・・・健治は気付いてないのね。」

「そうなのよぉ。困っちゃうわ。どうせそんなことだろうとは思ったの。」

綺麗な顔が大袈裟に困ったような顔を作る。


「そうね。でも、男に負けたわけか。私は・・・」

苦笑いしながら言う美春に
「やだぁ。男なんて言わないでちょうだいよ。」

玲子は野太い声で返した。

空がとても綺麗だった。