パラドックス〜王も読者も右往左往〜
突然ですが問題です。
あなたはライオンに捕まってしまいました。
今にも食べられそうです。
泣きながら命乞いをするアナタにライオンはいいました。
「ワシの考えていることを当てられたら食わずに逃がしてやろう」
さあこの危機を脱する為にはアナタはなんと言うべきでしょう?
お分かりでしょうか?
答えは・・・
「私のことを食べようと考えていますね」
もしライオンがアナタを食べようと考えているのならば約束に従って食べられませんし、
食べようと考えていないのならば食べられることはありません。
ご存知の方も多いと思いますがこの問題は 「ライオンのパラドックス」という有名な問題です。
パラドックスとは矛盾やつじつまが合わないことを意味する 言葉です。
ライオンは自らの言葉のつじつまを合わせるために アナタを食べることができなくなってしまうのですね。
・・・というわけでエピソード2はパラドックスがテーマです。
トロイア戦争をご存知でしょうか?
敵が残した巨大な木馬を戦利品として城内に運び込む 守備側トロイア軍。
しかし、それはギリシアの知将オデュッセウスの策略であった。
木馬の中に隠れていたギリシア軍の精鋭によって、 難攻不落と謳われたトロイア城もついに陥落した・・・
という「トロイの木馬」で有名な戦争です。
さて、本稿の主人公であるクレタ王も、ギリシア連合軍 の一員としてこの戦争に参加しておりました。
戦後処理を 終えたクレタ王は一路故郷のクレタ島を目指します。
しかし、帰国途中王はよからぬ噂を耳にします。
「クレタ島に残してきた重臣が謀反を起こしクレタ島をのっとってしまった。」
どうも噂は事実のようです。
王は激昂します。
「あの恩知らずめ!目に物見せてくれる。」
とはいうものの王に従う軍勢はトロイア戦争の激戦を終えてきたばかり。
疲れきっています。勝てるかどうか微妙です。
こんなとき、ギリシア人は占いに頼ります。
早速王は二人の有名な占い師に使者を送り、 クレタ島に戻るべきか否かを占ってもらいました。
最初に戻ってきた使者は報告します。
「進むべし。大勝利間違いなし」
王は喜びます。
しかし、次に帰ってきた使者はこういいます。
「留まりて力を溜めるべし」
王は悩みます。
「はて、どちらの占いを信じるべきか・・・」
そんな時、側近が進言しました。
「占いといえばデルフィの神託が一番です、もう一度デルフィで占ってもらったらいかがでしょう」
「それは名案!」 ということで王は再び使者をおくることにしました。
進めといってくるのか、留まれといわれるのか。
しかし首を長くして待っていた王の元にもたらされた占いの結果は予想外のものでした。
「クレタ人のいうことは嘘である」
王は戸惑います。何のことやらさっぱりわからないからです。
家臣ともども考えたすえ、最初の二人の占い師のうちどちらかがクレタ人ではないか? ということになりました。
再び人をやり、調べてみると占い師は二人ともクレタ人では ないということ。
もう訳がわからない王はとりあえずクレタ島に戻ったものの、 疑心暗鬼に陥り、兵を進めることができません。
そしてついに元重臣によって攻め滅ぼされてしまうのでした。
元重臣は王が占いの結果に悩んでいたことを知り笑いました。
「占いなんて自分に都合のいいのを信じればいいのさ」
さて、ここで問題にしたいのは占いに心惑わされた老王とあくまで占いは士気鼓舞のための手段と
割り切った元重臣の対比ではなく、
「クレタ人のいうことは嘘である」 という占いの結果のお告げを告げたのは誰か?ということです。
もしこのお告げをしたのがクレタ人だったとしたら?
クレタ人が「クレタ人のいうことは嘘である」という。
括弧のなかが正しいとすれば全体が正しくなくなり、その結果括弧の中も正しくなくなる。
おかしい。
逆に括弧の中が正しくないとすると全体は本当のことになるから 「クレタ人のいうことは嘘」になる・・・
ということは括弧の中は正しい。
やはり、おかしい。
括弧の中を正しいとしようと正しくないとしようとどちらにせよ 矛盾してしまう・・・パラドックスです。
突然話はかわって・・・ 高校数学で「背理法」を習いますよね。
「ある仮定のもとに論証をすすめて、矛盾が出てきたらその仮定は間違っている」 ってやつです。
例をあげれば:
アミダくじである終着点に来るスタート地点は一箇所以上あるんじゃないか? と疑問に思ったとします。
このまま考えても良くわかりません。
そこで「アミダくじである終着点に来るスタート地点が何箇所かある」 と仮定してみます。
この状態でアミダくじの前後をひっくり返します。 つまりスタートがゴールに、ゴールがスタートになるわけです。
するとどうでしょう。
仮定の部分を逆転させると「一箇所のスタートから何箇所かのゴールに着く」 という明らかにおかしい結果が出てきます。
ということで「アミダくじである終着点に来るスタート地点が何箇所かある」という 仮定が間違っていたことになり
「アミダくじである終着点に来るスタート地点はただひとつしかない」
ということが証明できるわけですね。
さて、先のクレタ人の話にこの背理法を適用するとどうなるでしょうか?
「クレタ人の言うことは嘘である」という命題が正しいとしてもしなくてもおかしくなります。
ということは、最初に「この発言をしたのがクレタ人である」と仮定したのがおかしい、
つまり、「こういったのはクレタ人ではない」ということになるのでしょうか?
確かにこう考えればつじつまはあいます。
しかし、なんかおかしい気がしますねえ。
だって考えてみてください。
私が「私のいうことは嘘八百だ」と言った瞬間、私は私でなくなってしまうんですよ?
・・・わからない。何回考えても私の足りない頭ではさっぱりです。
なんかもう、考えすぎで頭が痛くなってきましたので今回はこの辺で・・・
(もしこの件でご意見があるかたがみえましたら、どうかこのボンクラに説明してください・・・)