正直な子供達
 自転車でパトロールをしていたときだ。マンションの塀の影でタバコを吸っている子供2人を見つけた。子供達も俺の姿をみて、急いでタバコの火を消した。俺が近づいて「お前らいくつだ?」と聞くと「は、二十歳です。」・・・。
 
( ̄ー ̄ )・・・・・・・・。お前ら、正直だな。


インチョキブルース〜不景気
不景気、公務員は関係無いなんて思っている人もいるかもしれないが、我々公務員も給料を減らされボーナスも減らされ何かと不景気を肌で感じている。そして、現場に行っても・・・・。
 ある日、万引きの現場に行ったときの事だ。警備員室の奥に色白で細身の女性がうつむいて座っていた。身元の確認のため免許証を見せてもらう。写真にはどちらかというとふくよかで血色のいい女性が写っていた。警備員さんから、万引きしたものを見せてもらう。「握り寿司、大根、魚の切り身、お菓子・・・・・。」。普通の万引きの被害品とは少し傾向が違った。普通は、食料品はまずやらない。少なくとも生物を取る人間なんていない。万引きをした女性から詳しく事情を聞く。

   
「夫のやっていたか会社が倒産して、数千万の借金があり、もう2日間なにも・・・。」


こんな万引きをこの2年間ですでに3,4件扱っている。 

二色の血
 暗赤色の液体と鮮紅色の液体が入り混じっている。それが何だか分からなければきっと綺麗に見えるのだろう。所々に白い欠片が散らばって、アスファルトのキャンパスはさらに鮮やかさを増す。動脈決は鮮紅色、静脈血は暗赤色。理科の教科書にはそう書いてあった。白い破片・・・・、White Matter、白質、脳の表側の部分。そして横たわっている女性。腕が奇妙なところで曲がっている。頭部を指で突くとグニャっとへこむ。高さ50メートル・・・・・・・・・・、即死だ。


忘れられぬ重さ
 初めて現場に行った時のことだ。俺はまだ研修中の身だった。
 玄関のチャイムを鳴らす。中から中年の女性が出てきた。おそらく奥さんだろう。涙で目が真っ赤になっていた。その女性に台所まで案内された。途中、廊下で二人の女の子、娘かな?身を寄せ合うようにうずくまって泣いていた、「なんで・・・・・。」と。女性は「こちらです。」と言うと我々を台所に入れた。彼女は台所に入ってこようとはしなかった。見るのがつらかったのだろう。
 勝手口のアームのところにロープがくくりつけてある。そして、ロープにぶら下がっていた。顔は真っ赤にうっ血していた。口から舌を出し、床は失禁で濡れていた。先輩が写真を撮る。そしてロープを解こうとしたとき先輩に「足を持て。」と言われた。廊下から女の子達の泣き声が聞こえる。動けなかった。「びびってんじゃねぇ。」と怒鳴られた。びびってなんかはいなかった。学生時代、人体解剖もやった、独学だが法医学もやった。死体を見ても臆する気は微塵もなかった。実際、死体は全然怖くなかった。でも、動けなかった。
 毛布にくるみ廊下を通って寝室に運ぶ。また女の子達が激しく泣き出す。重い・・・・、つぶれそうだ。当然、女の子達は毛布の中身を知っている。目の前を通るなんて酷すぎる。
 寝室に入り、毛布を解き、黙祷をささげる。検視が始まる。隣の部屋で先輩が「性生活は?保険金は?借金は?遺言書は?」と女性に尋ね調書をまいている。何も、すぐにそんなことを・・・・・。しかし、殺人か自殺か確かめるためには聞かなくてはならないことだ。
朝、家族が勝手口にぶら下がっているのを見つけたとき、どんなにショックだったろう?残された家族はこれからどうするんだろう?そんなことを考えると満足に動けなかった。
 今まで息子、亭主、おじいさん、いろんな人の現場に行った。どこに行っても家族がうずくまって泣いている。息子の時は、母親と目を合わせることができなかった。あの空気の重さ、それより重いものがこの世にあるのだろうか?  


ヤクザの正体
制服のお巡りさんと刑事2人が路上で話しているとき、突然制服のお巡りさんの無線に「○○町○丁目において警察官がヤクザに絡まれているとの一般人からの申報、至急応援に向かえ。」と指令がはいった。これはイカン!刑事2人と制服のお巡りさんは急いで応援に向かおうとした。「んっ?!まてよ、○○町○丁目?それってここだよな・・・??」
程なく近くをパトロールしていたパトカーがやってきて、それを見つけた一般人「お巡りさん、あいつらです、早く早く!!」その一般人がヤクザ→だといって指差した先にいた者、それは紛れもなく警察官と一緒にいた刑事であった。

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昔の事件簿
 ある朝、彼は目覚めた。あたりを見渡す。何かいつもと違う。窓には鉄格子がついている。服はいたるところが破けており、体には無数の傷跡がある。ここはどこだ?何があったんだ?彼は何が起きているのか理解できていなかったようだ。突然、彼の顔色が変わった。昨日の夜に何が起きたのか思い出したのだ。そして、そこに友達がいないのに気づいた。友達はどこかと彼は我々に尋ねてきた。私は一瞬回答に困った。先輩がとっさに「友達は今病院にいって治療してもらっている。」と嘘をついた。しかし、彼はしきりに友達に会わせろとないてすがり付いてきた。彼は友達がどうなっていたのか分かっていたのだろう。昨日の夜、彼は友達と酒を飲み、車で帰る途中自爆事故を起こしてしまったのだ。車は炎上し、友達は車の中から出てこなかった。彼が我々に泣きすがるその真下、駐車場の検死台の上にその友達は黒焦げになって横たわっていたのだ。