「………」
「浩之ちゃ〜ん? お〜い、起きてよ〜」
「………」
「………」
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン……………
「うるせえな〜〜〜〜〜もう〜〜〜〜〜〜!!!」
「だったら早く起きてよ〜」
「ったく………」
「おいおいあかり、いくら俺が起きにくいとはいえ、あれはひどいだろ? 何回押したよ? ベル壊れちまうって」
「だって〜、浩之ちゃん前より起きてくれなくなったんだもの」
「それでもよ………そういえば、お前の性格も最近変わってきたよな〜」
「どういう意味?」
「いやなんていうかさ、前は何かやるにしても遠慮が感じられたんだが、今は何事に対しても前より良く言えば行動的に、悪く言えばやりすぎって いうかさ」
「そういう浩之ちゃんだってなんだか前よりよく喋るようになったじゃない」
「ほらほらそういう言い方だよ。以前のあかりだったら、最後のトコなんかは、『なったんじゃない?』とか言ってた思うんだけどなぁ〜俺は」
「そっちこそ、前の浩之ちゃんはそんな砕けた喋り方してなかったと思うよ」
「一年経つと何かと変化があるもんだ。俺が変わったっておかしくないじゃねえか」
「じゃあ、私もおかしくないね」
「あっ、そうか」
「あっ、あれ志保だね」
「ホントだ」
「志保〜」
「あかり…おはよ」
「なんだなんだやる気がねぇなあ〜、もっとシャキっとしろよ。そんなんだと毎日楽しく生きていけねぇぞ。ほら背筋を伸ばして」
「あ〜もう、うるさいわねぇ、ほっといて」
「なんだぁ〜お前、人が親切に言ってやってるのにその態度はよ〜。大体からして、もっと人を受け入れるようにならなきゃいかんぞ」
「よけいなお世話よ」
「なんだと〜」
「早く行こうよ二人とも、遅刻してもしらないよ」
「あ、ああ………なぁ、あかりってなんか随分前と変わった気がしねぇか?」
「…まぁするわね」
「俺達が付き合い始めた頃からだよな、あんな風になりはじめたのは」
「そうね、多分…」
「変わったといえばよ、お前も一年前より随分口数減ったよな。前は喋ればなにかと尾を付けて返してきたもんだけどな。なんかあったのかよ」
「あんたと一緒にいたらいつの間にかこうなってたのよ」
「俺のせいだったのか………そういえば俺も良く喋るようになったみたいだけど、そうなのか?」
「そうね、前よりはかなり喋ってるわ」
「そうかなあ、普通だと思うぜ。元々こんなんだったじゃなかったか?」
「………なんだかお互い入れ替わった感じよ。ハァ〜」
「う〜む…」
「………」
「………」
「………あかりは?」
「えっ?…あれ、さっきまでちょっと前歩いてたんだけどなぁ。おかしいなぁ」
「置いていったのね………」
「ああ、そうか、それなら納得いくよな。ほらやっぱ俺達が早く歩かなかったからだよな〜」
「のんきな事言ってないで早くいくわよ」
「で、どうよ雅史。はたして俺達って変わってしまったのだろか」
「う、う〜んそうだねぇ。はっきり言っちゃえば、変わったと思うよ」
「どんな風に変わったと思う?」
「浩之はねえ、人づきあいが上手になったよね。あと、積極的に喋るようになったかな」
「おお、プラス面ばっかじゃねえか。やったぜー」
「じゃあ、あたしは?」
「志保はねえ、一年前に比べたらあまり喋らなくなったかな。あと、なんだかいつも気だるそうにしてるよね」
「はぁ〜、そう…」
「はっはっは、お前はマイナス面ばっかじゃねえか」
「はいはい……で、あかりはどう?」
「あかりちゃんは前よりよく行動にでるようになったね」
「具体的に言うと?」
「う〜んと、例えだけど、あかりちゃんがくま好きなのは知ってるよね?」
「ええ」
「そのくまに対して誰かが、まあ誰でもいいんだけど文句を付けたとする」
「うん」
「前までのあかりちゃんだったら、ちょっと嫌な気はするけど心に留めておいてたと思うんだ。でも、今のあかりちゃんは、心に留めずに実際に行動にだすんだよ」
「文句言った相手を殴っちゃうとか?」
「そこまではしないと思うけど。少なくとも反論はすると思うよ」
「ふ〜ん、そう」
「うーん、これもぎりぎりプラス面だろ。というわけで、お前だけマイナスだというわけか」
「別にプラスマイナスを争っている訳じゃないのよ」
「そりゃそうだけどよ、やっぱ無いよりあった方がいいしな。マイナスよりプラスだろ」
「はいはいわかったわかった」
「じゃあさ、ぼくはどうかな? なにか変わったところあるかな? 話を聞いてると気になっちゃって」
「「雅史の変わったところ?」」
「そうそう」
「体力が随分付いたんじゃねえか」
「ちょっと成績落ちたわよね」
「いや、そういうのじゃなくて、性格面とかで何かあるかな?」
「ん〜、なんかあるか志保?」
「ふむ、無いわね、特に大きい変化は」
「そう? ということはぼくはあまり変わってないって事だね」
「そうなるな」
「ふ〜ん、そうか。うん、ありがとう二人とも。じゃあ、ぼく部活があるから」
「うん、じゃあね」
「じゃあな〜」
「さて、あたし達も帰りますか…」
「おうよ」
「なぁ、変わったってな、俺達」
「そうね…」
「俺、プラスな」
「本当のところ、あんた退化したんじゃないの?」
「おいおい、なんでそうなってくるんだよ」
「前は、そういう子供みたいな事、全然言わなかったじゃない」
「だってよ、まだ俺子供だぞ?」
「もう成人みたいなもんよ」
「別にこんなんでいいと思うけどなぁ。毎日が楽しいぜ?こうやって生きてるとよ、色々な事が楽しく思えるんだぜ?」
「いいわねぇ…簡単な事で良い気分になれて…」
「なんだよ、志保は楽しくないのか?」
「別に楽しくない訳じゃないわよ」
「じゃあ楽しいのか?」
「楽しいわよ」
「ほんとにぃ〜?」
「ホントよ」
「そうか。よかったよかった。これでめでたいな。俺だけ楽しくてもなんか嫌だしな」
「そうね…」
「なぁなぁ、これからカラオケにでも行かないか? 二人きりっていうのもひさしぶりで新鮮かもしれないしさ」
「カラオケ?…最近行ってなかったわね。うん、行ってもいいわよ」
「よし、そうと決まったら善は急げだ。走って行こうぜ。最近運動不足でなんか無償に走りたかったしな」
「別にカラオケは善とは関係ないけど」
「いいんだよそんな事は! ほらほら行くぞー」
「ああもう、そんなに強く押さないでよう! キャー!」
「さぁっそく俺からいかせてもらうぜ」
「ちょっと、マイクの音でかすぎよ!」
「そうか? こんなもんでいいじゃねぇか。ライブの最前列の席なんてこんなもんじゃねぇぞ。セミライブでいこうぜー」
「ああ〜うるさい〜、いちいちマイク通して喋るのやめなさーい!」
「じゃあ、なぁ…よし、、デュエットだ。こっちこい、こっち」
「いきなりデュエット〜? こっちは最近来てないのよ?」
「そんなの俺だって一緒なんだよ。おーい、早く来い来い、ほらはじまっちまうぞー。ほーらほらほらほら」
「ああ、もうわかったからマイク通さないで!………これでいいでしょ?」
「おう、ほら始まったぜ………♪……♪♪…♪」
「えー……♪…♪………♪……ん〜ちょっとつかみにくわ」
「お前なら歌ってれば慣れるだろ……♪♪………♪♪♪……」
「そんなの無茶……♪♪……♪…♪♪……」
「♪…………♪…♪♪………」
「♪………♪…♪……♪……」
「…♪………♪…♪…♪……♪…」
「…♪………♪…♪…♪……♪…」
「♪♪♪……♪…♪〜〜〜…♪♪」
「♪♪♪……♪…♪〜〜〜…♪♪」
「さあ、次はりきっていくわよ〜」
「さっきはあんなにやる気なさそうだったのに、歌ったとたんもうこれかよ。やっぱ切り替えの早さは変わってね〜な」
「あはは、なんだか歌いはじめると気分よくなっっちゃったのよね〜」
「あ〜うるさいなー、マイク通して喋るんじゃない!」
「あー、ごめんね〜………ふぅ」
「なんだどうした疲れたのか?」
「ええ、ちょっと歌いすぎちゃったわね。でもなんかすっきりした気分だわ」
「俺はお前の半分くらいしか歌ってないぞ」
「じゃあ歌いたいって言えばよかったじゃないの」
「お前が歌い終わったら次の曲をまとめて3曲くらいいれてたからだ! ったく、ルール違反だぞルール違反。法は守れ」
「まあまあいいじゃないの、そんな細かいことは」
「細かい? お前………まあいいや」
「前のあんただったら絶対あきらめなかったわよね。こういうことは」
「………やっぱ、かわっちまったんだよなぁ〜」
「ねぇ、なんでそんなに変わったの?」
「おお、いきなり大きくでたな」
「いいから教えてよ」
「知りたいか?」
「ええ」
「じゃあ、教えてやろう」
俺の知り合いにな、いつも元気で、何事も楽しんでいるようなやつがいるんだよ
俺は何度となくそいつに言われたよ。『もっと楽しそうにしろ』ってな。
俺は特につまらないわけじゃなかったんだが、なんだか見かけが楽しそうじゃなかったみたいでな
それに、俺はそいつのそんな明るい性格には少なからず憧れてもいた。
だから、外面もあかるくふるまってると、そいつに似てきているような気がして気分もよかった。
それに実際、こうなった事でわかった事もたくさんある。
しばらくしてたらそれが普通になってたんだよ。
「どうだ?」
「………」
「俺が話したんだからお前も話してくれよ。俺だけ言わせるのはずるいぞ」
「そうね」
「ほら、早く言えって」
「じゃあ、言ってあげるわ」
「うん」
「あたしはね…」
「うんうん」
あたしも、そう、知り合いが変わった原因なのよ。
そいつはあたしと違って、全然楽しそうに生きていなかったわ。本人は楽しんでいたみたいだけど。
そいつはあたしに何度となく言ったわ。『もっと大人になれ』とか、『落ち着け』とか。
別にそんなに気分が高かったわけじゃないときにもそいつは言ってきたわ。
別に、あれがあたしの普通だったんだけど、どうもそいつにははしゃぎすぎに見えたみたいね。
でね、ほんのきまぐれよ、一日そいつみたいに過ごしてすごしてみたわ。
正直つまらなかったわ。でも、確かに落ち着いて色々やってると、そいつみたいだなって思えてね、気分はよかった。
で、しばらく続けていたらね、これが普通になっていたわけよ。
「お前さ、歌っている時は前に戻るんだな」
「歌は楽しく歌うものよ。だらーっとしてたら面白くないわ」
「確かにそうだなあ。……一つ言っていいか?」
「なに?」
「俺、お前の話にでてきたやつ知ってる」
「あら奇遇ね。あたしもあなたの話にでてきた人知ってるわ」
「おお、本当に奇遇だな。じゃあ、そいつの名前言っていいか」
「……本当に言う気〜?」
「いや、言いにくいからやめときます」
「そうね、そうしときなさい」
「………」
「………」
「……そろそろ帰ろうか?」
「そうしときましょう…」
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