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 ひさしぶりに小学生の時の夢を見てから2ヶ月ほど過ぎ、明日がクリスマスイヴということで、町ではクリスマスの景色が広がっている。

 もうお金は9割がた貯まり、アルバイトも数を減らせるようになってきた。

 思えば今年の2月にアルバイトをやりはじめてからは疲れている日が多かったなぁ。
 でも、これからは楽になりそうだ。


『ジングルベ〜ルジングルベ〜ルすっずがぁ〜なるぅ〜』


 商店街のスピーカーからも頻繁にクリスマス関係の曲が流れる。
 明日はクリスマスイヴだけど、ぼくらの学校の終業式でもある。
 さて、今ぼくが商店街にいる理由というのも、明日の為の買い込みを、浩之、あかりちゃん、志保、の四人でしているからだ。
 荷物はぼくと浩之が持って、あかりちゃんと志保が主に品物を選んでいる。

 今年パーティをする場所は、なんと来栖川系列の研究所だ。
 なんでそうなったかというと、今年の春に一週間だけ学校に来ていたロボットのマルチちゃんに関係がある。
 マルチちゃんの開発主任と浩之がどういうわけか知り合いで、そこから通じているらしい。

 最初のうちは志保が、研究所なんて辛気くさいとか地味すぎとか言っていたけど、最近は『どうせやるなら』って感じですごくやる気も出てきたみたいだ。
 この買い物の発案も、志保によるものだ。

 ちなみに、マルチちゃんは五月はじめあたりからまた学校に来ている。
 今度は今の三年生が卒業するまで学校に来るって浩之が言ってた。



「おい志保、こんだけありゃもうい〜だろ。もう持てね〜ぞ」

 両手にビニール袋をぶら下げて、志保に突っかかるように言う。

「これくらいで根をあげてどーすんの。ほら、そのちっちゃいやつも左手にもって右手を空ける!」
「お前も少しは持て!」
「あたしだってちゃんと持ってるわよ」
「そんなしょってるだけのバックは持ってるとは言わねぇ」
「まぁまぁ二人とも。浩之の分なら、ぼくが少し持つよ」
「でも雅史ちゃんも両手に持ってるし、私が持つよ」
「大丈夫、ぼくのは比較的軽いから。さ、浩之、それ」
「いいって、大丈夫だ。こいつのバッグにいれる」

 そういうと、浩之は志保のバッグに無理やり荷物を詰める。

ガサガサ

ぐいぐい

「ちょっとぉ、勝手に人のバッグ触んないでよ」
「これぐらい入れとけ。ん〜、ちょっとは軽くなったな」

 浩之はぐぅ〜っと伸びをする。

「う〜、重い〜」

 こっちはおもいっきりだれる。

「いいじゃない志保、少し位持っても。浩之ちゃん、私も少し持つよ」
「お、そうか、悪いな。ところで志保、もう買うものはないのか?」
「ん、あとはキャンドルを買って終わりよ。それにしても重い〜。これで転んで怪我でもしたらあんたのせいだかんね」

 荷物を詰めるために持ってきたバックだろうに…
 こんなような感じで、ぼく達は買い物を済ましていった。











18:00
中央駅前


「それじゃあみんな、明日はここに16:00に集合よ。みんな遅れないで来るのよ。んじゃ、わたしは電車だから。じゃあね〜、しーゆー」
「バイバイ志保」

 あかりちゃんが志保に言う。

 明日は16:00にここ、中央駅に集合。
 覚えとかないと。











「じゃあな雅史」
「バイバイ雅史ちゃん」
「うん、2人共さよなら」

 浩之とあかりちゃんの二人と別れて、ぼくは自分の家へ。











21:00
自宅 自分の部屋


ガチャ
バタン

「ふぅ〜」

 いいお湯だった。
 ぼくの好みは42度くらいだ。
 鶴来屋は温泉旅館だっていうから湯加減が気になるなぁ。

 さ、それはさておき、明日はクリスマスパーティー。
 忘れ物の無いように、おさらいしておこう。

 まず、パーティーする日は明日、12月24日。
 会場は来栖川系列の研究場。
 詳しい場所は明日浩之に案内してもらう。

 参加する人は、
 ぼく、浩之、あかりちゃん、志保、研究員数人。
 あとマルチちゃんと、ぼくは会ったことないんだけどセリオちゃんっていう子も参加するそうだ。

 持っていく物は、今日買って分担して持ち帰ったもの。
 ちなみにぼくの担当しているものは、クラッカー10個、わたを人の頭2つ分くらい、キャンドル3つだ。

 集合時間は16:00で、場所は中央駅前。

 このくらいかな。

……あっ、そういえば明日はクリスマスだけじゃなくて学校の終業式もあるんだった。
 忘れるとこだった、準備しとかないと…









12月24日
10:10
教室 2ーB


 終業式も終わり、先生が戻ってくるまでみんな教室で自由にしている。
 かくいうぼくも、あかりちゃんと一緒に浩之の席に集まっている。
 あかりちゃんの、『みかんの皮を使うと蚊が寄ってこない』といううんちくを最後に、先生が入ってきてお開きとなった。











16:00
中央駅前


「みんな集まったわね〜。じゃヒロ、さっそく案内して」
「そろそろ研究所前行きのバスが来るからまずはそれに乗るんだ」
「うんうん、それで?」
「研究所の入り口に、担当の人が立っているから、その人にパーティーする部屋まで連れてってもらう」

 説明するまでもないような説明だった。

「ねえ浩之ちゃん、どんな部屋でパーティーするの?」
「今日空いてるホールがあるそうだぜ」
「どんな所なんだろう。ドキドキするなぁ」
「あっ、バスが来たみたいだよ。みんな、乗ろう」

ブオオォ〜〜〜











16:30
研究所前


「ようこそお待ちしてました。藤田くん御一行」

 研究所前に到着すると、見知らぬおじさんがぼく達に話しかけてきた。

「長瀬さんがお出迎えだったんですか。みんな、この人は長瀬さんといって、この研究所の主任をやってるんだ」
「はじめまして。長瀬源五郎です」
「こっちは右から神岸あかり、長岡志保、佐藤雅史っていいます」
「「「はじめまして」」」

 三人いっぺんに返事をする。

「じゃあ、早速ホールの方に案内しよう」

 ぼく達は長瀬さんに案内されて研究所内に入った。
 途中、何度か話をしてみると、思ってたより気さくでいい人だった。

 話によると、マルチちゃんを作りあげたのもこの人だという。
 人間やっぱり外見で判断しちゃいけないんだなぁ、とあらためて思った。





「おまたせ。ここが今日のクリスマスホールだ」

ガチャ

 長瀬さんがちょっと大きめのドアを開けると、中には体育館よりちょっと小さめの部屋が現れた。
 ホールの中には机や椅子が数個。
 奥には大きめのクリスマスツリーが飾ってあった。



「さぁみんな準備始めるわよ〜。それぞれの持ち物忘れてないでしょうね〜?」

 志保の仕切りで、各自自分の荷物を確認、取り出す。
 クラッカー、わた、キャンドル、よし全部あるぞ。ほかのみんなはどうかな?

 浩之の担当はわた以外のクリスマスツリーの飾りだ。
 ツリーのてっぺんに付ける星なんかは結構重いので、一番力がある浩之が担当した。
 あかりちゃんと志保は今日の料理の材料を手分けして担当した。

「おう、ちゃんと持ってきてるぜ」
「わたしもあるよ」
「じゃあ、ヒロと雅史は飾り付けしといて。あたしとあかりはパーティーのご馳走を作ってくるからね〜」
「ああ、わかったぜ」
「二人共、頑張ってね」
「まかしときなさいって! ごほ、げほ…」

 張り切って胸をたたいて見せるもんだから、むせてしまったみたいだ。

「どうせお前はあかりのサポートだろ?」
「うっ、うるさいわねぇ。あんたはいちいち一言多いのよ」
「それはお前だろ」
「まあまあ、浩之ちゃんも志保も…」











17:15
パーティー会場


 あらかた飾り付けは終わり、ちょっと一息いれている。
 本格的にパーティーを始めるのは17:30からの予定だ。

 飾り付けをしている最中マルチちゃんが来て、あかりちゃん達の料理の手伝いをしに行った。
 料理を頑張って練習したって言ってたな。

 ぼくはマルチちゃんの料理は食べた事無いからわからないけど、浩之によると全然ダメらしい。
 浩之はどんなのがでるか不安がってたな。

 マルチちゃんの来た3分後くらいに、セリオちゃんが研究員と共にやってきた。
 マルチちゃんみたいに話すと思っていたから、結構びっくりだった。
 セリオちゃんはぼく達の飾り付けを手伝って、その後あかりちゃん達を手伝いに行った。



「浩之ってさ、いろいろな知り合いがいるよね。今回の長瀬さんといい、来栖川綾香さんといい」
「まぁな。成り行き上知り合ったやつもいるしな」

 成り行き…ねぇ。

「成り行きで研究所の主任さんなんて人と知り合えたの?」
「一学期によ、マルチがテスト期間が終わって帰った時があったろ」

 ぼくの質問には直接答えず、浩之はちょっと昔の事を持ち出す。
 あの時は、毎朝挨拶する元気な声が聞けなくなって寂しかったものだよ…

「あんときにうちの近くの公園通ったら、丁度ハトに餌やってた長瀬さんに話しかけられたんだよ。まぁ、いま思うとあれは俺を待ち伏せしてたんだろうけどな」

 ハトに餌をあげているって言うのも、なんか不自然な気がするしね。
 まさか白衣を着たままあげてたんだろうか。

「なんで待ち伏せなんてしてたの?」
「さぁな。マルチになんか聞いたりしてたんじゃねえか?」
「その話に興味が涌いて、浩之に会いにきたんだね、長瀬さんは」
「多分な。んで、その日以来マルチの事なんかで会ってたわけよ」
「ふ〜ん。知らなかったなぁ」
「お前はそんときバイトに精をだしてたからな。仕方ねぇよ」
「ふうん。じゃあ、綾香さんとはどうやって知り合ったの?」
「綾香とは、俺のやってる部活に綾香と知り合いの娘がいて、その娘を通じて知り会ったんだよ」
「そうなんだ」

 凄いな。
 ぼくがバイトに夢中になってるときにそんな事が起きてたなんて、全然しらなかったよ。
 垣本が格闘技の本で綾香さんを見せてくれた時も、浩之は特に何も言わなかったし。











17:30



「「「「「「「メリークリスマース!」」」」」」」

パパパパパパパパパ〜〜〜ン

「わ〜っ!?」

 一個でも大きい音がするクラッカーをこれだけ鳴らすとそれはもう凄まじい音が鳴り響く。
 ちなみに、今驚いたような声を出したのはマルチちゃんだ。

「び、びっくりしましたぁ」

「ん? マルチ、お前のやつ鳴らせてねぇぞ」

「えっ? わたしちゃんとひもを引きましたよ」

「見ろよ、先っぽのところが空いてないだろ」

「あっ、ほんとです」

「これは結構力を入れて引っ張るんだよ」

「そうなんですかぁ。………えい!」

パ〜〜〜ン

「わ〜っ!?」

「自分のにびびってどうすんだって…」



「ねぇねぇセリオちゃん、聞きたい事があるんだけどいいかな?」

「はい、なんなりとお聞きください」

「セリオちゃんって色々な情報を手に入れられるんだよね?」

「はい。サテライトサービスによりあらゆる情報をダウンロードする事が可能です」

「捜し物なんかもみつけられるの?」

「捜し物といいますと?」

「あのね、わたし今買いたい本があるんだけど、どこにも売ってないの。どこに売ってるかわかるかなぁ」

「題はどのようなものでしょうか?」

「ええっとねぇ、『世界のクマ達』っていうんだけど」

「承知いたしました。しばらくお待ちください」

「うん」

「………」

「………………」

「………………………」

「………………………………」

「………………………………………」

「………………………………………………」

「………………………………………………………」

「………………………………………………………………」

「………………………………………………………………………」

「ダウンロードを終了いたしました」

「み、見つかったのかな?」

「はい。時間をかけてしまいすみませんでした。『世界のクマ達』は、この町に売られております」

「ええっ! この町の本屋さんはみんな行ったんだけどなぁ」

「正確には売られているのではなく、これから売りにだされます」

「これからってどういうことなの?」

「明後日、この町で営業している本屋のひとつが閉店いたします」

「あっ、知ってる。わたしの通ってる学校の近くにある本屋だ」

「その店の情報によるとそこに、現在置いてある全ての本を店先に並べるようです。そこに先程の本が出されるもようです」

「うん、わかった。明後日だね? ありがとうセリオちゃん」

「いえ…」



「マルチ〜ちょっとこっちいらっしゃ〜い」

「は〜い。なんでしょうか?」

「あんたロボよね。だったらやっぱり体温とかも目で見てわかっちゃうわけ? サーモグラフィみたいに」

「サーモグラフィってなんですか?」

「人の体温とかを色で区別して見える機械のことよ。赤ければ赤いほどが温度が高くて青ければ逆に低いの」

「いえ、わたしにはそのような機能はないと思います。わたしが知らないだけかもしれませんが」

「無いの〜?」 「は、はい。すみません」

「じゃあ手とか外したりできる?」

「あ、はい、それならすることができます」

「外してみせて」

「はい! 了解しましたぁ。ええっと、たしかこうやって、ここをこう」

ガチャ

「外れました」

「どれどれ、へぇ結構軽いわねぇ」

ぽーんぽーん

「わっ、志保さん、投げないでくださいよぅ」

「あはは、ごめんごめん。それにしても片腕取れてると不気味ねぇ」

「志保さん、あの、そろそろ返して欲しいんですけど」

「いいわよ。はい」

ぽーん

「わわっ!?」

ドサッ

「あ〜らマルチちゃんったら〜、ちゃんと取らなきゃダメじゃないの」

「ううっ、片腕だけだとものすご〜く取りにくいですぅ」





 みんな各自でたのしそうにやってる。
 特に、志保なんかアルコール入ってるようなテンションだ。

…なんて、主催者でもないのになに偉そうなこといってんだろ。

「こんなに研究所が賑やかになったのはひさしぶりだよ」
「えっ?」
 後ろから声がしたので、思わずびっくりしてしまう。 「佐藤くんだったかな。君はみんなにまざらないのかい?」
「長瀬さん。いえ、ぼくは見てるだけでもおもしろいですよ」
「それは同感だな。みんな個性的で素晴らしいね」

 長瀬さんは、会場のみんなを見て微笑んで言った。

「時に佐藤くん。君は隆山温泉に行くそうじゃないか」
「え、なんで知ってるんですか?」
「藤田くんがね、教えてくれたんだよ」
「浩之が?」
「そう。バイトで体が疲れてるんじゃないか心配していたよ」
「そうですか…」
「そうだ。今日はクリスマスだし、君にプレゼントしよう。これだ」

 白衣をゴソゴソやった長瀬さんの手には、一枚の紙があった。

「なんですか、これは?」
「それは鶴来屋の割引券なんだよ」
「えっ!?」
「わたしの親戚が手に入れたものなんだよ。鶴来屋に泊りにいくそうじゃないか。今年中で期限は切れちゃうし、よかったら使ってほしい」

 にこにこと笑いながら言う長瀬さん。

「でも、いいんですか?」
「研究所を離れられないんでね。行きたくても行けんよ。だから君が使ってくれ」
「はいっ、ありがとうございます」
「お〜い長瀬さん、雅史ぃ。二人ともこっちこいよ」
「あ、浩之」
 声の方を見ると、浩之が手を振ってぼくらを呼んでいた。 「どれ、ひさしぶりに騒いでみるかな。佐藤くん、行こうか」
「はい。……今そっち行くよ〜」







*








22:00
佐藤家 雅史の部屋


 このようにして、夜分遅くまで続いた今日のクリスマスパーティーは幕を閉じた。
 今日の、というのは、志保は明日もどこかでなにかをやらかすらしいからだ。
 要するに、巻き込まれるかもって言うことだ。

 思えば、今日のパーティーでは、長瀬さんに鶴来屋の割引権をもらってからずっと興奮してた気がするなぁ。
 長瀬さんの言っていた通り、この割引権の期限は31日までだから、この機械を逃す手はない。

 と、なると、ぼくの貯めていたお金がけっこうあまっちゃう事になるけど、まぁ、残っていて悪いことはないと思うし、気にしないでおこう。






 そして四日が経つ。





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