「ううっ、この話は感動する…」
一般的なもので、かなり作りはシンプルな作品だ。
しかし”シンプル イズ ベスト”という言葉があるように、たまにこういう直球感動ものを読むとドッカーンとくるものがある。
思わず体をバタバタさせてしまうシーンや、ハラハラしてしまうシーンなど、色々な分野が入ってる。
と、俺が真剣に読み入ってると…
コン!
「いてっ!?」
いきなり頭に痛みが走った。
俺の頭の痛みの正体は石だった。
だれかが投げつけたらしい。
俺は、ぶつけた奴はだれだと、辺りを見回した。
すると、
「…………」
「舞、お前がやったのか」
「…そう」
「痛かったんだぞ」
「私は痛くなかった」
「あたりまえだ!…で、なんで俺に石ぶつけたんだ? 理由によっちゃあ…」
「……ネコさんかわいそう」
めずらしく俺の言葉をさえぎって言ってきた。
「ネコさん?」
「下」
言われた通り下を見ると、
ニャーニャー
いた。
「うお! 気が付かなかった。いつからいたんだ!?」
「……さっきから」
「さっきって?」
「さっき」
「何分くらい前?」
「……30分くらい」
俺がこの公園で本を読み始めたのが1時間くらい前だから、このネコは丁度俺が真剣に読み入ってる時に下にくぐったわけだ。
しかし…
「どこが可愛そうなんだ? 俺はこのネコにはなにもしてないぞ」
「祐一、さっきから足をバタバタさせてた」
「確かにしてた…って、お前はいつからそこにいたんだ?」
「さっきから」
「30分くらい前だな?」
「そう」
「ここに来る前は一体なにしてたんだ?」
「……ネコさんと遊んでた」
「遊んでた? このネコはお前のなのか?」
「……違う」
「ノラか?」
「そう」
舞はうなずく。
俺はもう一回そのネコを見てみた。
ネコは毛を逆立てて舞を見ている。
………
「お前、遊んでたんじゃなくて単に追いかけ回してただけだろ」
「…遊んでた」
「じゃあなんでこんなに殺気だってんだよ」
「…祐一がバタバタさせてたから」
「それは、違う!」
「…………」
「それはお前が追いかけ回してたからだっ」
「…………」
「まぁ、動物が好きな気持ちもわかるが、ノラに手をだしてもダメだ。連中にとっては、自分達以外は敵みたいなもんなんだから」
「……敵?」
「そう、敵だ。舞だって敵に追いかけ回されるのは嫌だろ?」
「……嫌だ」
「だろ? こいつもそうなんだよ。だから、追いかけ回しちゃいけないんだ。わかったか?」
「………」
「………わかった」
「よし。……あれ? あのネコどっかにいっちまった」
「向こうの方へいった」
「そうか。あっちは林になってるからな。追うのは無理だろう」
「……」
そういうと舞は少し寂しそうな表情を。
「……ネコさん」
「…………」
「…………」
…………
よし。
「舞、これからヒマか?」
って、ネコ追いかけ回してたんだからヒマだろうな。
「……ひま」
「よし、じゃあペットショップでも覗きに行くか?」
「……行く」
「ようし」
そう言い、とりあえずさっきの本を紙袋にしまった。
「祐一、なに読んでた?」
「ん、さっきのか?」
「そう」
「ああ、これはな…」
「……あのネコさん、可愛い」
「ん〜あれはアメリカンショートヘアーだな」
「……あのイヌさん、可愛い」
「ん〜あれはコリーだな〜」
ここは、この辺りでは一番大きい大手ペットショップ。
ペットショップっていうからには、もちろんネコ以外にもいろんな動物がいる。
「祐一、あのネコさん変…」
「変? ああ、あれはネコじゃなくてアライグマだよ」
「アライグマさん?」
「そうだ」
「…………」
「どうした?」
「じゃあ、あのイヌさんは?」
「あれはイヌじゃない。あれは子供のクマだな」
「クマさん……」
舞は真剣に動物達を見入ってる。
動物に関心があるのはやっぱりいいことだよな、うん。
それにしてもさすが大手。
今はクマがペットショップで買える時代なのか。
かなり高いけど。
「…………」
「……」
「…………」
「……」
その後、俺達はペットショップを出てその帰り道…
「舞、ペットショップは楽しかったか?」
「……うん」
「そうか」
「祐一」
「ん、どうした?」
「ペットがほしい」
「そうか。で、舞はどんな動物がいいんだ?」
「クマさん……」
「無理だ」
「どうして?」
「お前値段見たか? 7ケタだったぞ」
「……そう」
「それに、クマは大きくなったら手が付けられなくなるぞ。餌代も相当になるだろうし」
「でも……」
「そうだな、クマはいくらなんでもムリだから、やっぱネコ、イヌあたりがいいんじゃないか?」
「ネコさん……」
「イヌとネコだったらネコがいいのか舞は。うん、そうだよな。イヌはちょっと俺も苦手なんだよなぁ。こっちに向かってきたりするときなんかビビっちゃって……」
タタタッ!
俺がしゃべっていると、舞がいきなり走りだした。
舞の走っていった方向を見ると、
「捨てネコか……」
「ネコさん……」
ニャーニャー
ダンボールに、『飼ってあげてください』という張り紙付きだ。
ニャーニャー
……
「飼う」
そう言うと思ったぜ。
「ああそうだな。すてられてたんだからな。ひろってやることはいいことだ」
「ねこ助……」
「……はい?」
「……ねこ助」
「それ、そいつの名前か?」
「そう……ねこ助」
まぁ、人それぞれだけど……
「……ねこ助」
「わかった、わかった。連発するなって」
「…………」
「じゃあ、舞が飼うんだなこのネコ?」
「……飼う」
「がんばれよ。なんか困ったら俺んちに来……電話してくれ。電話番号は○○○ー××☆☆な」
「わかった」
「……ほんとか?」
「ほんと」
「じゃあ今の電話番号いってみろ」
「…………」
「…………」
「××…」
「ブー。最初は×じゃない……覚えてないんだな?」
「……覚えてない」
「しょうがない。紙に書いてやるよ。えーと、紙持ってたかな? あっ、そうだ」
小説買ったときの紙袋があった。
「書くものは……」
無い。
結局あのあと、丁度近くにあった文房具屋の試し書きのところのペンを使って電話番号を舞に教えてやった。
その後、例のネコ(ねこ助)のことを色々語り合った。
「舞のやつ、嬉しそうだったな」
今日の舞はいつもよりたくさんしゃべってた気がした。
数日後……
俺は今公園のベンチで買ってきた本を読んでいる。
家で読んでもいいんだが、気まぐれで外で読んでる。
こんどの本は前買ったような小説ではなく、ただのマンガだ。
しかし、マンガとはいえなめてかかると痛い目見る。
感動ものを見れば、絵があるだけに涙をさそう…
「くっ…」
俺って感動屋なのかもな。
数日前のように感動の波に浸っていると、
コン!
「痛っ!?」
前に舞に当てられたところのコブがまだ直ってなくて、非常に痛い。
「誰だ?」
俺は辺りを見回す。
ニャーニャー
うわっ!
突然、ネコが俺に飛びかかってきた。
と、思ったら俺の膝の上に乗って丸まりだした。
「な、なんだ!?」
「……祐一」
「あ、舞。ってことはこのネコはあんときのネコか?」
「……ねこ助」
「ああ、そうそうねこ助だったな」
そのねこ助は俺の膝の上でゴロゴロやっている。
「なんだかイヌみたいだよなこのネコ」
「……どうして?」
「なんかやけに人なつっこい」
普通はいきなり膝の上なんかに乗りかかってくるか?
それも、ひろってやるときに会ったきりなのに……
「そういえば、さっき俺に向かって石投げなかったか?」
「……投げた」
「なんで投げたんだ? 俺は特になにもしてなかったはずだが」
「……声掛けても気づいてくれなかった」
「なに?」
そうだったのか
俺は本に夢中になってたからな。
しかし……
「じゃあ肩を叩くやらベンチを叩くやらすればいいだろ? 石は痛いんだぞ」
「……気が付かなかった」
「はぁ……まあいい許す」
「……どうもありがとう」
「…で、舞はこいつと散歩でもしてたのか?」
「……散歩してた」
「ネコの散歩っていうのも珍しいよな」
俺は膝の上で気持ちよさそうにしているねこ助を撫でてやった。
すると、ねこ助は俺の手に軽く噛み付いたりしてじゃれている。
はぐはぐ
はぐはぐ
「なかなか可愛いな。コイツ」
なでなで
はぐはぐ
「あ〜〜〜っ、あたしのミーちゃん!」
!!!
突然の大声に、俺や舞。
ついでにねこ助のやつもびっくりしてその声の方向を見る。
そこには、まだちっちゃい小学校だか幼稚園だかわからないくらいの女の子がいた。
その子は俺達に向かってきてこう言った。
「ねえ、おにいちゃんにおねえちゃん。あたしのミーちゃんをかえしてぇ」
「君の?」
「ねこ助……」
「うん。あたしが小学校行ってる間にお母さんが勝手にミーちゃんすてちゃったの……」
なるほど。
ねこ助のやつも変に緊張していないし、本当みたいだな。
と、いうことは…
「舞……」
「…………」
「返してやらないといけないな」
「……ねこ助」
「元の飼い主のところに戻してやらないと…な?」
「…………」
コクン
「ミーちゃん、おいで!」
ニャー
女の子が一声かけるとねこ助はピョン、とジャンプして女の子の腕の中に飛び込んでいった
「おねえちゃん、おにいちゃん。ありがとう!」
タッタッタッ
女の子はそう言うと嬉しそうに駆けていった。
「…………」
「…………」
「……祐一」
「なんだ?」
「私、もうペットはいらない!」
ダッ!
「舞!?」
短い間とはいえ、心を通いあわせてきた友人を失った深い悲しみからであろう、舞は公園を飛びだしていった。
「舞っ!」
タッタッタッ!
俺は舞を追って走っていた。
「おい、舞、まってくれっ!」
俺はさっきから呼びかけているが返事はなく、走るスピードが増すばかりだった。
「ハァハァ、ハァハァ」
くそっ。
たしか、そこを曲がったはずだ。
そして、俺は曲がり道を曲がってみた。
「ま、舞。なにしてるんだ?」
曲がった先には舞がしゃがんでなにかをしている。
?
なんだ?
「舞、いったい…………!!」
その理由はすぐにわかった。
舞のしゃがんでいるところから僅かに血が流れてきた。
…子供のアライグマだった。
車かなんかにはねられたんだろう、キュルキュルと弱々しい声は出せてても、身体は動かないみたいだ。
「祐一! アライグマさん…」
「舞! 動物病院に行くぞ。いますぐ!」
「わかった」
そう言うと、舞は優しく、だが素早くアライグマを抱きあげた。
その後、一番近い動物病院に駆けつけた俺達は、事の事情を説明し、すぐに治療してもらった。
それから数日経ち、様子を見に行ったころにはアライグマは元気になっていた。
「舞、よかったな」
「よかった」
「こいつ、野生かな? それとも飼われてたのを逃げ出してきたのか…」
そこらでアライグマ飼ってるなんてやつ聞いたことないけど。
そのアライグマは今、舞の手の中にいる。
どうやら、アライグマなりに助けてくれた人はわかるらしく、舞にはまったく警戒しない。
でも俺が体を撫でようとすると…
ギャウ
かみっ
「痛っ!」
こんな具合にすぐ噛み付いてくる。
こりゃ野生かな。
「祐一嫌われ者……」
「ううっ、くそ」
「祐一……私この子飼う」
「……そうか」
俺としては前のようにならないかが少し心配だが、おそらく野生なのでその心配はないだろう。
「……でも、ケガが全部治ったら帰してあげる」
「……なんでだ?」
「お父さんやお母さんに早く会いたいと思うから……」
くっ!
言ってくれるぜ!
「そうだな。まだ子供だしな。両親には会いたいよな。でも、傷が治って帰すまでは舞がお母さんだぞ?」
「……わかった」
「頑張れよ」
「……頑張る」
うんうん
どれ、ここでひとなで…
ギャウ
かみっ
「痛っ!」
だめだこりゃ…