
ニュースや、身の回りであっても
悪いやつはけっこういるもんだ
だけど、それにもまして
いいヤツが多すぎるから
それなりに、今は楽しいと思う
2004・5・17
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この作品はフィクションです
写真
ばあちゃんも老い先短いし・・・とかいっちゃ失礼だけど
かわいがってもらったわけだし
ばあちゃん孝行しなきゃね、たまには
バイトして1年
無駄遣いも多いけど
そろそろちょっとくらいは
お金も貯まってきたしさ
1泊2日で、温泉旅行にでも
連れて行ってあげようかな
出発の朝
いつもはちょっとトばしちゃうけどさ
今日は隣りにばあちゃん乗せてるし
安全運転で行こう
急ぐ必要もないしね
ゆっくり行けばいい
途中でコンビニに寄ってくる
ちょっと待っててやぁ
おれはコーラ
ばあちゃんはお茶でいいかな?
あったかいほうがいいから
HOT緑茶でも・・・
最近はあったかいペットボトルも普通だね
あ、あとついでにアメとチョコレートも
はい、お茶
あ、あけれる?
ふたあけてあげるよ、かして
はい、どうぞ
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そうこうしているうちに
高速使って2時間半
目的地の旅館へ到着
のどかだねぇ〜
やっぱたまにはこういうとこに来ないと
人間本来を忘れちゃうねぇ〜
とかなんとか
知ったげに言ってみたり
さて、どうしよう、今から
どうする〜?
って、今日はおれがプロデューサーだから
おれが決める事か
地元のちょっとした観光スポットのお寺とかないのかな?
旅館の人に聞いてみたら
近くにいい場所があるってさ
行ってみようか
あ、記念に1枚写真とってもらおう
お願いします
ばあちゃんと2ショットとか
赤ちゃんの頃以来だわ
さぁ、行きましょ
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そのお寺は静かで
時間がゆっくり流れている気がした
気持ちよく流れている気がした
いろいろ考えてみる
この建築物はすごい
歴史を感じるなぁ
はい、知ったげ2回目
ごめんなさいねっと
もうちょっと一通り見てまわって
さて、帰ろうか
ちょっと歩いたけど
すこしくらい歩いたほうが
温泉も気持ちがいいでしょ
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旅館に帰って
高級料理だ(おれの給料にしてみれば)
うわ、やっぱそれなりにすごい
こりゃすごい
普段お粗末なもの食べてるのがバレバレだけど
もう1回こりゃすげぇ
あ、お肉がある
ばあちゃんには多いみたいで
お肉をちょっともらった
うん、うまい
おれが嫌いなはずの
ナスがうまい
どうしてだ
こういう風に食べたらお下品だよね
とか言いつつがっついてしまう
おなか減ってるんだし、仕方ないじゃん
誰に言い訳してるんだかしらないけど
あっというまに
ごちそうさま
満腹満腹
今日はじめて本当の意味での満腹を知ったよ
言いすぎでした
またちょっとゆっくりして
そろそろ今回のメインイベント
温泉でも入ろうか
気持ちいいやろ〜なぁ〜
という思いばっかりで
せかせかしてしまった
ばあちゃんが、おれを呼んだ
あらら、着替えとタオル忘れてた
ばあちゃんの背中流してあげたいけれどもさ
女湯には入れないし
別れて入る
んじゃ、またあとでねぇ〜
露天風呂かぁ
すごいなぁ〜
着替えてからお風呂まですこし距離がある
(とは言っても20メートルくらいだけど)
高いところから川が見える
すごいながめ
きれい
とはいうものの、、、裸で、下半身にタオル1枚
寒い寒い
すべらないように気をつけて
まっすぐお風呂へ直行
あぁぁぁぁ〜〜〜〜〜
気持ちいい!
こりゃ気持ちいい!
熱いけど気持ちいい!
ばあちゃんも入ってるかな?
あとでどんなだったか聞いてみよう
体の真ん中まであったまるわぁ〜
疲れも全部ふっとびそう
なんとかイオンだとかは
よくわかんないけど
なんか健康で
お肌ツルツルになっちゃう感じ
若返るねぇ〜
まぁ、まだ21歳ですけれども
満喫満喫
そろそろ出ようかね
のぼせて軽く頭クラッとしそうだし
また、さっきの20メートルを通って
着替え場へ
今日は服じゃなくて
浴衣でもきてみよう
外へ出たけど
ばあちゃん、まだ来てないね
ちょっと待とうか・・・
と思ったらすぐ来た
んじゃ、今日はこの気持ちいいまま寝ようかね
明日は、もう帰るし
あぁ〜〜
ふとんフカフカ
なんか今日は何もかも気持ちいいなぁ
し・あ・わ・せ
電気消すよ?
おやすみぃ
ばあちゃんとの旅の夜は
ゆっくり流れたような
あっという間だったような
不思議な時間の流れ
楽しんでくれたかな・・・ばあちゃ・・・・睡眠
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朝ごはん
鮭とみそしるとお漬物と卵とご飯
これぞ日本人
おいしい
ばあちゃんもこういうほうが食べやすいみたい
ふぅ〜
荷造り
ばあちゃんすわってていいよ
おれちょっと片付けるから
手伝わなくていいよ
すぐだし
ばあちゃんは、今日は何もしなくていいの
ほら、もう終わるって
帰ろうかぁ
来た道を戻るだけ
また高速で2時間だね
また、飲み物買ってこようかぁ
ばあちゃん何がいい?
あ、昨日のお茶が残ってるのね
んじゃ、いいか
あ、昨日買ったアメ食べてないね
食べよぉ
あぁ〜でもよかったぁ
家に着くちょっと前にばあちゃんが
おれにありがとうねぇ
と言ってくれた
2回も3回も
ちょっと照れるんだよね
でも、喜んでくれたみたいで
嬉しい
よかったぁ
そして、家に着いたところで
もう一回ありがとう
と言って車を降りた
ほへぇ〜
なんとか無事に帰ってこれたわぁ
って、そんな危ない事もないけどね
おつかれさまぁ、おれ
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それから1週間後
ばあちゃんは風邪をこじらして
それが肺炎に悪化してしまって死んだ
おれのせいだ
おれが連れ出したせいで・・・
やっぱ旅行で疲れがでたんだ・・・
いろいろ歩かせたし・・・
あのお風呂に行く途中の道
おれがながめがいいとか思ってた道
そういえば寒かったっけ
78歳のばあちゃんは
そりゃ風邪引くよ
イラつく
全てが自分のせいに思えて仕方ない
どうしようもない
途方に暮れて
冷たい涙がとまらない
お葬式なんて
わかんない、ってか信じられない、信じない
いっぱいお客様が来られるから
おばあちゃんの部屋片付けるの手伝って
と母親が言った
おれはよくこんなときに
冷静に部屋なんて片付けられるな
とか、思った
後になって思えば母親が悲しくないわけがない
でもそのときは
そのことがおれにはわかんなかった
部屋を片付けるときに
ばあちゃんの部屋のカレンダーを見つけた
ばあちゃんはカレンダーの空白部分に
日記のようなものを
毎日一言ずつ書いている
誰に対してかはわかんない敬語で
1日も休まず書かれた日記
人の日記を勝手に読むのはいいのかな・・・
そんなこと思いながら
1週間前の日記に目を通した
「3月17日
だいすけに温泉に連れて行ってもらいました
私を連れて行ってくれると言ったのには
嬉しいんですが、とてもびっくりしました
あんなに小さかったのに
今は私が連れて行ってもらうようになったのかと
だいすけも大きくなったのだなぁ、と思いました
写真を1枚とったのですが
できあがるのが楽しみです
だいすけありがとう
大きくなりましたね」
17日と18日にまたがって書いていて
それでも小さいカレンダーだったから
少しはみ出していた
よくばあちゃんの話し相手をしていた親戚のおばさんが
話し掛けてきた
おばあちゃんすごい嬉しそうだったのよ
何回もだいちゃんに温泉連れて行ってもらったこと
自慢されたんだから・・・
おばさんは、そのまま
泣いてしまって
何も言わなかった
数日後
バタバタしてて取りにいけなかった
写真をとりに行った
ばあちゃんとの2ショットは
とてもきれいにとれていて
ばあちゃんは
あの日と同じように優しく笑っていた
いつのまにか
温泉へ連れて行ってあげたことが
後悔じゃなくなっていって
この前とは違う温度の涙が出てきた
ばあちゃんのことで泣くのは
これで最後だ
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