壱千九百九拾九年参月参拾壱日、此の日も岡山刑務所で糾弾行動が行われるとの情報を聞きつけ、岡山刑務所へ向かった。行く途中何拾台もの街宣車を見かける。どの街宣車も一様に御経を流している。どうやら死亡した憲政党総裁への供養の意味らしい。
刑務所周辺に近づくにつれ、鋭い目つきの機動隊、警官、公安等が警備を行っている。無関係で後ろめたい事は一切無い私も其の異様な雰囲気に緊張してしまう。本当は刑務所正門前に行きたかったが、警察関係とはもめ事を起こしたく無いし、面が割れたり色々聞かれたりするのも嫌なので散歩を装って見通しの良い場所から遠巻きに観察するのが精一杯であった。
私が刑務所周辺に着いたのは壱拾壱時頃であったが、その時は警備は物々しかったが街宣車の台数は未だそんなに多くなかった。そこで、先ずは周辺をグルグル回り地理を把握、見通しの良い場所を確認する。壱拾弐時頃、周辺のコンビニやレストランで腹拵え&観察。特攻服にサングラスの威圧的な雰囲気の男達が買い物や食事をしている。
食事時も終わった頃から街宣車が続々登場。北は北陸から南は九州まで、あらゆる団体が押し寄せてくる。「褒め殺し」で一躍有名と為った「日本皇民党」、元総裁が有名な「大日本愛国党」、自民党とも関係の深い任侠団体「稲川会」系の「大行社」、任侠団体「住吉連合」系の「日本青年社」、長崎市長射殺未遂事件で有名な「正気塾」、キティちゃん街宣車の「大日本維新党」、桃太郎プリント街宣車の「大和塾」、其の他数え切れない程(後日新聞で調べると六拾台前後)の街宣車が押し寄せていた。大半は「任侠系」である。
それにしても「糾弾活動」を行う団体の醜悪ぶりは目に余る物であった。巨大な改造バスを公道に真横にドッカリ止まらせて、大音量スピーカーで「どかんかっ!こらぁっ!轢き殺すぞっ!」と一般車両や通行人に怒鳴り散らし、耳を劈く程の音量で騒音その物である御経・軍歌・突撃喇叭を撒き散らし、抗議内容も「刑務所長○○は左遷を繰り返し家庭でも相手にされず、不倫迄している不道徳極まる奴で・・・」と胡散臭さ極まる個人攻撃に終始。一体何の為の「糾弾活動」なのであろうか?この事件の問題はあくまで「密室での犯罪とその隠蔽を図った組織の構造」である。然し此等の行為は任侠団体の恫喝その物で在る。此の恫喝的「糾弾活動」は夕方迄延々と続いた。猶、其れに伴い連日市街では交通渋滞が続き、住民は日常生活に多大なる迷惑を被った。
此から何れだけ「活動」がヒートアップするか國粋趣味者としては見物であったが、四月初旬に始まった一斉地方選挙を契機に全ての団体は一斉に沈黙してしまった。選挙に出て主張する団体も無く、選挙後活動を再開する団体も無かった。何とも拍子抜けで尻窄みに彼らの「活動」は幕を閉じた。
(後日談)
後に岡山刑務所は憲政党総裁の変死に際し刑務所職員側に非が有ったとして六千万円の賠償金を遺族に支払った。権力犯罪の閉鎖性を表したと同時に、右翼団体の発言権を強める隙を与えた「汚点」とも言える事件であった。
(余談)
刑務所周辺では、街宣車以外にも面白い物発見。先ずは地域自治会掲示板に貼って在った「思想新聞」号外。内容は「御家芸」とも言える日本共産党(通称「代々木」)批判で在る。此の新聞が統一協会の偽装団体でも在る右翼団体「国際勝共連合」機関紙である事は周知の事実である。其んな物が公共の掲示板に堂々と貼られて居るのは大問題ではないか。
御次は「極東新聞社」。岡山地域限定の右翼系新聞社だった様だが、事務所に人が居る気配は無かった。後で調べてみると九十六年以降休刊と為って居たらしい。う〜む、一度読んでみたかった。
最後は「大日本旭日社」。建設会社と併設の右翼団体で、衆院選にも出馬歴がある。屋上に鳥居と祭壇が有るのは御愛嬌か。右翼団体にも拘わらず、何故か「自民党支部掲示板」と某国会議員後援会連絡所の看板が・・・。保守政党と右翼は矢張り切っても切れない関係なのであろうか。
(注:個人名は伏せてあります)
(文:水泡 國粋円)