素晴らしい公開講座!? (浄土真宗親鸞会)


 ある年の6月頃、当時自分の通っていた学校の中で「公開講座」の参加者募集を積極的に行なっている若者がいた。学校内で学生がやるイヴェントとしては少々時期外れという気もしたものの、自主的な講座や勉強会等に参加するのが結構好きな自分は「何の公開講座だろ?」と聞いてみる事にした。

「あの、何の公開講座ですか?興味ある分野の物なら参加してみたいんですが・・・。」

「そうですか!では今から此方に来て下さい!」

小柄で小太り、そして四角い黒淵の分厚い眼鏡を掛けた20歳前後の男性に物凄く近い距離に顔と体を近づけられながら(引いても間を詰めてくる)、半ば強引に会場となる小さな空き教室に案内される。参加者は勧誘を行なっていた男性と自分の2人だけ、まさにマンツーマン。どう見ても「公開」されてる様には見えないんですけど・・・。おまけに何の講座かっていう質問にも答えてもらってないし。いや、主催団体すら聞いてないぞ。・・・ま、いいや。取り敢えず相手の話を聞くだけ聞いてみよう。

 バインダーに入ったイラスト入りの説明パネルをパラパラ捲りながら話してくれた。内容は要約すると此んな感じである。

「人はこの世で生きているが、此の世の幸せを追求する事等に一体何の意味があろうか?どんなに御金を稼いでも、どんなに立派な行ないをしても、所詮死んでしまえば結局全ては無に帰し、全くの無駄、無意味である。本当の幸せとは、御金等とは別の物なのではないだろうか?御金や名声といった此の世の幸せ等という目先の利益への欲望を一切捨て去り、本当の幸せを追求する為に真実を学ぶべきだ。」

現世で生きる意義を徹底的に否定した、何とも絶望感に満ち満ちた内容である。余りにあんまりな内容だったので、

「あの、自分に限らず人はいつか死にますが、人が築き上げた財産も、行ないの結果も後世の人々に引き継がれますよね。今生きてる自分達も先人達の築き上げたもののおかげで生かされてるんだと思いますし、社会に生きている限り人の人生が無駄なんて事は有り得ないと思うんですが・・・。」

と感想を述べたが、それを遮って、

「どうでしょう?もっと学んでみませんか?」

と更に誘いが続く。学校近くで集まりを開いているというので、「こうなりゃ毒を喰らわば皿まで」と思い、付いて行く事にした。歩いて数分、1部屋が2階分使える広めのアパートへ到着。入口に表札は無く、昼間にも拘らず窓は分厚い濃紺のカーテンが閉めてある。中に入ると、会員と思しき若者や誘われたと思しき学生達が数名歓談していた。壁にはホワイトボードのカレンダーが掛けてあり、「講座」「合宿」等とスケジュールがびっしり書かれている。本棚に目をやると、親鸞の生涯を描いたアニメのヴィデオテープ(出演:中尾彬、日色ともゑ他)が置いてある。成る程、浄土真宗系、少なくとも仏教系の新興宗教か・・・。

 指導者と思しき男性に声を掛けられる。年の頃は20代半ば位かしら?

「僕達は素晴らしい事について学習してるんだよ〜。君も合宿に参加しようじゃないか。空いてるスケジュールを教えてね。」

「あの、素晴らしいって具体的にはどんな感じなんでしょ?」

「素晴らしい事だよ〜。いつ合宿に参加するの?」

「いや、どう素晴らしいのか・・・。」

「素晴らしい事だよ〜。いつなら参加出来る?」

全然答えになってないっつーの。幾ら具体的内容を聞こうとしても、とにかく「素晴らしい事」の一点張り。そして強引に空き時間を聞き出して合宿に組み入れようとするばかり。

 こりゃもう耐えらんねぇやと思い、「他の予定が確定してから伺います。」と言い残し、出された茶を飲み干して逃げる様にその場を立ち去った。彼等に関わると時間の浪費でそれこそ「全く無意味で無駄な人生」を送らされると感じ、2度と関わるまいと思った。

 校舎に戻ると、別の信者が定例校内演説会を終えた左翼系団体の活動家達を勧誘していた。ガチガチのマルキストに偏狭な仏教思想めいたものを説いたって時間の無駄だってば・・・。案の定活動家は呆れる様な、そして若干哀れむ様な表情で信者を見ていた。

 彼等の正体は浄土真宗親鸞会。サークルとして活動している所では「歎異抄研究会」等の名前を使っているとの事である。信者の学生が布教活動に専念させられ余り学校に出席出来なくなったり、家族と連絡が取れなくなるなどの問題が相次ぎ、それらの問題を告発するサイトも開設されている。今考えると、「御金を稼ぐのは無駄」と強調していたのも、「金は全く無駄なものなのだから持つべきではない。捨てたと思って、全財産を教団に寄付しなさい」と命令する為の方便だったのかもしれない。他にも全財産寄付を強要して問題となった集団が幾つか有ったが、それと同じ様な気が・・・。

 彼等は今も何処かであの「公開」講座を開いているのだろうか・・・。

(文:水野 松太朗)


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