どちらを向いて死にますか

最終更新日:99/09/06

ベランダで蝉がひよっていた。
死んでいるのかと、息を吹きかけてみるとピクリと動いた。まだ、息があるようだ。しかし、起きあがる気力は無いのだろう。

むかしから、蝉の終わりはあっけない。蜻蛉まで儚くはないが、それでも、夏をあれだけ賑わした虫とは思えない。
祭りの後の露店を片づけているのをみているような気分にさせる。始まりがあれば、終わりがくる。当たり前だが、夏が終わる。

で、死ぬ間際の蝉をみていると、裏返しのまま死ぬのは無念だろうと、地面に這わすか、近くに木があれば、木の根本に置いておくことにしている。そのときはベランダだったので、飛びやすいようにベランダの縁においてあげることにした。
後日、ベランダと見ると、蝉は死んでいた。しかし置いた場所ではくたばっていなかった。蝉は動いていた。木の方向を向いて。

蝉は死ぬ前に木に帰ろうとしたのか。それとも、木の遙か遠くに故郷をみたのか。ただ、単純にベランダをうろついていて果てたのか、それはわからず。

果たせぬ夢を見ていたのか、満足して去ったのか。

私は死んだら、どっちを向くのだろうか。
やっぱり北枕だろうか。

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