2006年1月・虻な句会・撰句結果                兼題・・寒夕焼・・


1・・裸一貫突っ立って寒夕焼     犬親父

特撰・・美代子評・・ この句を採ろうかどうしようかと迷いました。「裸一貫」と「突っ立って」はどうかなと。むしろ、裸一貫以外は言わないで、「裸一貫にて候」と強調してくれたほうが・・・私は好きだけど。「突っ立って」と書かなくても分かるもの。。。うだ。うだ。ぅ。内容重視で頂きます。胸にずんと来たからに。


並撰・・百花評・・ 裸は夏の季語ですが、裸一貫の熟語としての意味が寒夕焼と相俟って、ジンと来ます。人生、まだまだ解決しなければならないことがありそうな寒夕焼。
2・・裸木の掃くほどの星瞬かせ    麻子

並撰・・犬親父評・・ イルミネーションなぞより、綺麗な景が目に浮かびました。


並撰・・秀彦評・・ 「・の」でしょうか。そこが気になりましたが、しかし佳句と思いました。
3・・背を向けてみんな寂しいどんど焼き  美代子

並撰・・痾窮評・・ 「みんな寂しい」がドウかな?「みんな」が決め付けに成る。余談ですが「さみしい」か「さびしい」のどちらが正しいかってラジオでやってまして、どちらも正しいのですが、私は「淋(さみ)しい=個人的」「寂(さび)しい=特に範囲を指定せず)の様に思い、漢字の選択はこれで良いと思います…。更にはずれますが、日本語は話し言葉を文字で表す様に成った時、それ自体意味を持つ漢字を使った訳で(記紀・万葉の時代)、単なる発音記号を使う場合に比べ、表記された漢字の意味に引きずられ、話し言葉と書き言葉が乖離して煩雑になる不幸とも、豊かに成ると言う幸運とも言う事態が出来し今日に到りました。講演や口述筆記をそのまま印刷した物は何処か間の抜けた印象に成ります。俳句の場合、嘱目で詠んだ音だけの場合と、推敲し表記に配慮した文字としての物とは違いが出てきます。掲句、これが、実景であるとして、やはり中七は一考。


4・・ほほゑみの残影食めり寒夕焼    秀彦

並撰・・痾窮評・・ 「残影」と「夕焼」は近いのでどうかと思うが、観念を実景が侵していく、あるいは、満たしていくと言うのは私好み。


5・・初夢やエンドロールを共犯者   痾窮

並撰・・百花評・・ そう、初夢にしたって関係者は複雑で、こちらの事情も複雑で、夢の分析はほんとは簡単じゃあないんですよね。関係者を全部揃えないと納得できない作者。


6・・御降や日がな一日眠りをり    園を


7・・寒夕焼音たてて引く椅子の足   百花

並撰・・園を評・・ 余計とも思える「足」の効果。それに、あの音。寒夕焼けに拮抗します。


8・・ひえびえと独楽打つ男波音す   秀彦

特撰・・麻子評・・ ひたひたと迫ってくるものを感じたので頂きました。


9・・大寒のマネキンひとりづつ笑ふ  園を

特撰・・百花評・・ ひとつづつではなく、≪ひとりづつ≫というところが秀逸。まだ着衣していないような雰囲気も。


並選・・美代子評・・ 最初は気味悪いかなあって。でもね、人間もこんな風だったらいいのになあと思ったの。ただ、意味もなく笑うのは困るから、「みんな微笑して」 くらいにしてくれない?お願いだから。
並撰・・秀彦評・・ 大寒ならばこそマネキンの笑みが空々しい。
10・人も鳥も生きる川沿ひ寒夕焼   麻子

特撰・・痾窮評・・ 本当は「生きる」なんて仰々しいのですが「生きる」と言う語を使った事で、ユリカモメとホームレスの青テント、と言った見慣れた景色が見えて来ます。


11・初凪や常に偽名を使う君     犬親父

特撰・・秀彦評・・ 偽名の人、匿名の人、とかいうのには、なぜかひかれるのです。


12・俳人と知れて隠れる雪女     痾窮

並選・・美代子評・・ これ、逆だったらもっと嬉しいなあ。<雪女と知れて隠れる・・・> だとドラマチックだもの。大好きになっちゃうな。


並撰・・園を評・・ これは可笑しい。それってんで観察されちゃたまりません。
並撰・・麻子評・・ 目がどうの髪がどうの果ては持ち物検査まで俳人には敵わないとそこが面白いです。
13・寒夕焼嬰児に聴かすビバルディ   美代子

並撰・・犬親父評・・ 胎教というのはどこまで効果があるのかわかりませんが、生まれてきた赤ちゃんには、情操教育になりそう。


14・ふるさとや空の滴の冬林檎    百花


15・家売りに来しセールスマン寒の月  麻子

特撰・・園を評・・ もし逆撰があったなら選ぶかもしれないギリギリのところで特選です。夜、家を売りに来るとなると、これは買う気があって呼んだということで、妙に現実的。理屈では。だけど、これは笑うセールスマン(みたいな)が来たのだと感じたのです。冴え冴えとした月下の玄関の前に立っている「虚」の魅力。


並撰・・秀彦評・・ セールスマンってのはすごいと思う。家まで売っちゃうのだから。簡単に売れやしないやね。寒の月が身にしみます。
16・背の闇の尖りちくちく寒夕焼   痾窮

並撰・・犬親父評・・ 素肌にセーターを着てるような感じがしました。「背の闇」に、深い意味があるのだと思いますが・・・。


並撰・・園を・・ これは「ちくちく」が余計だと思うんですが、作者は身体感覚にこだわってる?赤と黒の対比がよいです。
17・綿雪の三隣亡の重さかな     美代子

並撰・・麻子評・・ ふわふわと積もり人間の生活をすっぽり埋めてしまう豪雪のような恐さを言っていると思いました。


18・数の子のまだ塩抜きをせぬと言ふ   秀彦


19・寒夕焼帰りたくない人ばかり    園を

特撰・・犬親父評・・ 何気ない表現ながら、とても共感できます。


並撰・・百花評・・ 帰る先がいろいろですが、まだまだ時間的に早いのに急かされているという感覚が、寒夕焼にぴったりです。西方浄土にしたって、ほんとは帰り(行き)たくないところかもしれないですよね(??)。
並選・・美代子評・・ 句柄はあっさりですが、帰りたくない理由はそれぞれなんだろうなあと妙に共感してしまって。人間の生きる悲しさみたいなのが仄見えて。。。ぐっと来た。
並撰・・麻子評・・ 誰も経験するお名残惜しさを言い得ていると思いました。
20・ざぼん狩がりがり齧る仔馬さん   犬親父


21・焼藷やすぼめてをりし五十肩    百花

並撰・・痾窮評・・ 私も一年ばかり「五十肩」です。これは関節の炎症であるそうで、特段の治療をせずともそのうち直るとか…そう信じたいし、早く治って欲しい(@_@)。ここは「五十肩」より「尻の穴」が順当な所ですが、それでは「や」の切れが無意味に成るとしての配慮でしょうか。<焼藷に尻すぼめをり五十肩>あれ!?読み違え?

☆・・・・・ありがとうございました。虻なBBSにて、もっと採りたかった句についてのお話など、どうぞ。・・・・・☆

最高点句・≪園をさん
次回の『兼題・・ 』 を1月31日までに百花までお寄せください。


参加者・あいうえお順
・痾窮・麻子・犬親父・園を・秀彦・美代子・百花・