夏までのダイアリー

 

第1話(1999.5.8.)

 ある日の放課後、利佳は美樹と会うために待ち合わせをしていたが、美樹はなかなか待ち合わせ場所にやって来ない。ちょうどその頃、帽子をかぶりマスクにサングラス姿のいかにも怪しい格好をした男が美樹の後を尾行していた。しかし美樹は友達の麻美、野崎恵の協力を得て、後をつけてくる男を振り切って利佳との待ち合わせ場所に向かうのであった。約束の場所にまだ来ない美樹に対して苛立ちを感じながらも利佳は一人で待っていると、ふと目の前に現れた見知らぬ男子高校生から一通の手紙を差し出された。何で手紙を差し出されたのか全くわけの分からない利佳は、初めて会った男子高校生の顔をただ不思議そうに見つめるだけであった。

 その手紙は利佳と同じ高校に通っている町田恵という子がその男子高校生に手渡した手紙であった。彼の名前は久住信太郎。しかし彼は町田恵から手紙を渡されたもののその気持ちに答えるつもりはないらしい。たまたま利佳が町田恵と同じ高校に通っているということで、その手紙を町田恵に返しておいて欲しいと頼まれただけだったのだ。別に手紙を託すのは利佳でなくても構わなかったのだが、偶然街中で町田恵が通う高校と同じ制服をきた利佳を見かけたので本人に直接手紙を返す手間が省けたという感じだ。ところが、その光景の一部始終を少し離れた所から見つめる一人の少女がいた。その少女こそ、久住に手紙を渡した町田恵なのであった。

 その日の夜、利佳の父・学が経営するもんじゃ焼き店(たんぽぽ)に美樹、麻美、野崎恵が集合して、昼間美樹の後をつけていた怪しい男の話題で盛り上がっていた。利佳はうわの空で、何か別のことを考えているようだったが突然、町田恵の話題を切り出した。確かに町田恵は利佳、麻美、野崎恵と中学校が一緒ではあったが、彼女は商業高校に進学して今は一緒の学校ではない。しかし今では高校を辞めてしまい、何をしているというわけでもないらしい。つまり利佳と町田恵は同じ高校には通っていないのだった。丁度その時、店の入り口が開いて制服を着た女の子が入って来た。愛美が帰って来たのだった。愛美と利佳は親戚で、利佳の家に住んでいてそこから高校に通っている。愛美の表情には笑顔はなく、何か冷めた表情をしている。愛想なく美樹たちに会釈だけするとそのまま2階へ上がってしまった。学は愛美を預かっている立場上、やはり帰りが遅いことを注意するのだが愛美はそんなことに耳を貸すつもりはないようだ。愛美が年上の大学生と付き合っていることは利佳も知っている。しかし自分や学に対して心を開かず、冷めた様子の愛美のことを利佳は心配しているのであった。

 その週の日曜日、利佳は町田恵と会う約束をしていた。彼女と会うのはいつ振りだろうか。この前、街中で久住から返しておいて欲しいと一方的に渡された手紙を町田恵に渡すためだ。久々の再会をなつかしむ利佳の言葉にも、町田恵はなつかしい気持ちなんて一切ないといった感じだ。利佳は預かっている手紙を手渡したが、町田恵は自分が出したのではなく誰かがいたずらで自分の名前をかたって出したのだと嘘をつき、その場で手紙を破ってしまった。帰っていく町田恵の寂しそうな後姿を利佳は見つめるのだった。

 その夜、利佳は美樹が乗りたがっていた観覧車に乗るためにお台場に来ていた。観覧車の中では夜景を眺めたり、写真を撮ったりと楽しんでいる。ただ2人にとって不満なことが1つある。それは言うまでもなく、何でせっかくの日曜日を女同士でデートしなければならないのかということである。周りはカップルだらけで、彼氏と来ていないのは利佳と美樹くらいのものだった。利佳も美樹も彼氏がいないので無理な話なのだが、彼氏なしの状態から早く抜け出してラブラブになりたいと思っている。美樹は現在片思い中なのだが、両思いになれたらどんなに幸せだろうと考えているに違いない。その帰り道、利佳は横断歩道の所で赤信号で停車している真っ赤なBMWにふと視線をやった。すると助手席にはなんと愛美が乗っていたのだった。利佳と視線が合った愛美は、ふと視線をそらすのであった。

 利佳と美樹が並んで歩いていると美樹の瞳が急に輝き出した。何故かというと向うから美樹が片思いしているという男の子が友達と一緒に偶然歩いて来たのだ。恋の予感がすると美樹は言っていたが、その予感が現実になるかもしれない瞬間であった。美樹はくるっと背を向けると男の子たちが自分たちの横を通りすぎるのを待ち、その後ろ姿を見つめていた。そのうちの一人が利佳に気付き、2人の元に歩み寄って来た。なんとその男の子たちというのは、以前街中で町田恵の手紙を本人に返しておいて欲しいと利佳に託した男の子たちではないか。この前はどうもといった感じで利佳はお辞儀をする。しかしそんな状況を理解できていないのは美樹だ。自分が片思いしている男の子が利佳と知り合いだったなんて予想もしていなかった。いや、予想どころかそんなことは全く考えてもいないことであった。その男の子たちと利佳が顔見知りであることを知った美樹は戸惑いを隠せない。

 美樹の思いは成就するのであろうか。利佳にも恋心が芽生えるのか。そして愛美はどうなるのか。夏までの,決して長いとは言えない時間の中でそれぞれにどのような出来事が待ち受けているのだろうか。今まさに恋のストーリーが始まろうとしている。1人1人の夏までのダイアリー,どんな出来事が各々の心のページに記されていくのか楽しみである。夏が終わった時に読み返すといい思い出になるに違いない。 

 

第2話 「土曜日の約束」(1999.5.15.)

 利佳の家は母親がいないため、利佳が朝食の準備をしていた。その姿を見つめる学だが最近、利佳が母親に似てきたと感じている。学が経営している店の従業員(名前の設定がないので以後、本名の通り石本としておきます。)は朝食を食べに毎朝、学の家にやって来る。どうやら石本は利佳のことが好きなようだ。そんな時、利佳の携帯が鳴った。友達の麻美と野崎恵からだ。美樹の様子がいつもと違い、やけにニヤニヤして浮かれていたので利佳に電話してきたのだった。実は先日、美樹の片思いしている男の子たちと偶然出会った時に2対2で週末にデートをする約束をしていたのだった。もちろん、浮かれているのは美樹の方だけであって、利佳はあまり乗り気がしない。美樹に一緒についてきて欲しいと言われてしまったので、仕方なくそのデートについていくのだ。できることなら付き添いを誰かに代わってもらいたいと利佳は思っている。その時、愛美が学校に行く準備を整えて1階に降りてきた。冷蔵庫から牛乳を取り出し、1杯だけ飲むと朝食も取らずに登校するため家を出た。利佳も愛美の後を追って家を出て行くのだった。

 その頃、美樹、麻美、野崎恵は先日美樹の後をつけていた怪しい男を偶然目撃した。なんとその男は警察官だったのだ(名前の設定がないので以後、本名の通り大島としておきます。)。大島も美樹たちに気付き、駐車違反取り締まりの仕事も放り出し、自転車に乗って一目散に逃げて行くのだった。

 学校に向かう途中、利佳はこの前愛美と一緒に車に乗っていた相手の男のことについて聞いてみた。愛美はそのことも含めて学や利佳には何も話をしないので、学は心配しているのだ。学は愛美を預かっていることもあって、そんな愛美のことを実の娘以上に心配している。利佳は一度、その彼氏を家に連れてきて学に紹介することを愛美に勧めるのだが、愛美はそんなつもりは全くなく、さらに愛美は避妊はちゃんとしているから心配しなくていいと利佳に言うのだった。何で愛美がそんなころを言うのか利佳は戸惑った表情をすることしかできなかった。

 すると1台の真っ赤なオープンカーが利佳たちの横で止まった。ドライバーの男がサングラスを外し、愛美に声をかける。茶髪で長髪の風貌で間違っても硬派という言葉には程遠い感じの男だ。この男がこの前利佳が目撃した,愛美と一緒に車に乗っていた愛美の彼氏である川辺だ。愛美は笑顔で川辺の方に歩み寄る。利佳や学には決して見せない笑顔だ。利佳は、車に乗りこみ学校をサボろうとする愛美を引きとめるが、愛美は利佳の手を振り払いお姉さんぶるその態度が気に入らないと利佳に向かって言うのだった。川辺が愛美に車に乗るように促すと、利佳は今度は川辺に向かってどういうつもりなのかと食ってかかった。非常に真面目で優等生的な行動をとる利佳に対して愛美はこれ以上ないといういやみを言う。そしてとうとう利佳は川辺の言葉に腹を立て平手打ちをしてしまう。利佳に平手打ちされた川辺は怒り、利佳に詰め寄るが丁度その時、久住が通りかかった。穏やかでないその雰囲気に久住は中に割って入り、利佳を連れて立ち去ろうとするのだが、久住と川辺は一発触発の険悪なムードになったもののその場は何事もなく収まり、愛美は川辺の車に乗ってどこかへ行ってしまうのだった。

 利佳は久住と歩いていると、週末に約束したデートに自分は行くつもりはないと久住から告げられる。久住の友達の忠が美樹のことを気に入っているみたいであの場ではデートの約束をする話の流れになってしまったのだが、久住はダブルデートみたいなチャラチャラしたのは好きではないのだ。そもそも利佳も乗り気ではなかったのだが、どういうわけか久住に約束通り絶対来て欲しいと懇願するのだった。道で偶然久住たちに出会った時のあんなに瞳の輝いた美樹のことを考えるとどうしても久住には来て欲しいという気持ちが利佳をそうさせたのかもしれない。とてもデートを楽しみにしている美樹が、久住が来ないと知ったらどんなにがっかりするだろうと思うと何としても来て欲しいと思ったのだ。美樹のためにというのが、久住を引きとめる理由なのだろう。おそらく利佳もそれ以外のことは考えていないに違いない。果たして久住は約束通り来てくれるのだろうか。それとも美樹の悲しむ姿を見ることになってしまうのか。そんな2人のやり取りを町田恵が見つめていた。町田恵は何を考え、そして利佳は何を思うのだろうか。暑い夏はもうそこまで歩み寄って来ている。

 

第3話 「ダブルデート?」(1999.5.22.)

 いよいよデートの約束をした土曜日になった。利佳は美樹と橋の上で待ち合わせていた。利佳の方が先に待ち合わせ場所に着き美樹を待っていると、背後で美樹の声がした。振り返ってみると、そこには化粧をばっちりきめて年相応でない大人を意識したファッションで身を包んだ美樹が立っていた。つま先から頭のてっぺんまでリキが入り過ぎている感じだ。男の子との待ち合わせに向かう途中、利佳は美樹に伝えようとしたことがあった。それはもしかしたら今日のデートに久住は来ないかもしれないということだ。しかし美樹のウキウキムードに押され気味で、そのことを言いそびれてしまうのであった。今日の主役は美樹と久住であることを美樹に念を押され、2人を盛り上げるように頼まれてしまうのであった。

 待ち合わせの喫茶店に着くとすでに相手は先に来ていた。だがそこに久住の姿はなく、久住の親友の忠が1人いるだけだった。忠の話によると久住とこの喫茶店で待ち合わせているのでもう少ししたら来るだろうということであった。おそらく、久住がこのデートに行くつもりはないということを忠にも言っていないらしい。つまり久住が来ないことを知っているのは利佳だけなのだ。そんなことを美樹はちっとも知らず、久住が来るのをワクワクしながら待っている。利佳たちから少し離れた席には麻美と野崎恵が座っていてこっちを見てニコニコしながら手を振っている。デートの様子が気になって冷やかし半分で見に来たらしい。デートが気になって様子を見に来たのは麻美、野崎恵だけではなく、たんぽぽ従業員の石本もその一人であった。やはり利佳がデートということでいてもたってもいられないらしい。

 久住が来るのをずっと待っているが、一向にやってくる気配はない。忠は色々な話題を出して場を盛り上げ様とするのだが、美樹は忠の話など全く聞いていない。美樹は忠の質問にもまともに答えるどころか、逆に久住に彼女がいるのか、どんな女の子が好きなのかということを忠の気持ちも知らずにお構い無しに聞くのだった。利佳と美樹はちょっと席を外して、洗面所に入った。そこに麻美と野崎恵もやって来てデートはどんな感じなのかと聞くのだが、久住が来ないので美樹はご機嫌ななめだ。美樹はもう帰ると言い出し、後は利佳と忠で仲良くやってというのであった。洗面所から出ていったん席にもどると、そこには久住の姿があった。久住は来ないつもりだったが、どうしたわけはやってきたのだった。急に美樹の瞳が輝くのだが、久住はちょっと話があるからと言ってすぐさま利佳を外に連れ出し、忠を美樹を2人だけにしてしまうのであった。

 久住はデートに来るつもりはなかったのだが、この前利佳にどうしても来て欲しいと言われたので来たのだ。外に連れ出された利佳は何の用かと久住に問いかけるが、美樹のことを気に入っている忠のためを思って気をきかせただけであった。美樹と2人だけにして欲しいと忠に頼まれたのだ。そんな久住に対して、美樹のもとに戻って欲しいとお願いする利佳であったが、逆に2人だけにしてやれよと久住に言われてしまう。久住は何で利佳がそこまで美樹のためを思って、自分を美樹に会わせたがっているのかが分からないようだ。その理由を利佳に聞いてみるのだが、利佳は返事に詰まり困った顔をしてしまう。すると突然、久住は利佳に名前を聞いてきた。そう言えば、久住はまだ利佳の名前を聞いていないので知らないのだ。突然名前を聞かれて、どうしていいか分からず利佳はまた困った顔をするのだった。

 利佳の周りには様々な恋愛模様が入り混じり始めている。久住のことを想う美樹。同じく久住のことを想う町田恵。美樹のことを想う忠。利佳のことを想う石本。利佳が想う相手は?さらに久住が想う相手はいるのか?

 学の家ではちょっとした事件が起きていた。愛美がまだ帰ってきていないというのだ。時刻はすでに午後11時を過ぎている。こんな時間になっても愛美が帰って来ないので学は心配になり、愛美から何か聞いていないかと利佳に聞くのであったが、利佳も愛美からは何も聞いていない。利佳の脳裏には真っ先に愛美の言っていた言葉が浮かんだ。利佳は愛美が川辺と一緒にいるに違いないと思い、愛美の携帯にかけてみるのだが電源が切られているようでつながらない。必ずしも愛美が川辺といるとは限らないのだが、最近の愛美のことを考えるとそれ以外のことは考えられない。しかし連絡の取りようがない状況ではどうすることもできない。時間は既に午前1時を回っている。利佳以上に愛美の帰りを心配して待つ学。一体愛美はどこで何をしているのか。長い夜の時間が過ぎていくのをどうすることもできずに、ただひたすら愛美の帰宅を待つ学と利佳であった。

 

第4話 「告白」(1999.5.29.)

 愛美は深夜になってもまだ帰宅していない。利佳と学は心配しながら愛美の帰宅を待っていた。そんな時、学は自分が利佳くらいの歳の頃のことを利佳に話始めた。お酒を飲み始めたのは利佳と同じ歳の時で、酔った勢いで女の子の部屋に忍び込みその子の父親に見つかり殴られたこともある。利佳はあきれるが、学の表情には何か悩んでいる感じがある。学は自分が利佳や愛美くらいの歳の時に、自分がやっていた悪さをたなに上げて、深夜遅くになっても帰って来ない愛美のことを叱る資格があるのか悩んでいるのだった。その時、玄関の扉を開ける音がした。利佳と学が1階へ駆け下りるとそこには愛美と町田恵が立っていた。学は町田恵に会うのはこれが初めてだ。町田恵は帰宅が遅くなったことを学に詫びるのであった。駅で偶然愛美と一緒になり、ファミレスに入ったのだが話が盛り上がってしまって結局帰宅がこんな時間になってしまったというのだ。更に自分が愛美を引き止めて遅くなってしまったのだから、愛美のことを叱らないで欲しいと学びに懇願するのだった。愛美はひと言も話さず、2階へ上がってしまった。学も愛美の後を追って2階へ上がっていった。利佳と町田恵は2人だけになった。学が心配しないように、ファミレスで一緒にいたと嘘をついてくれたことに対して、利佳は町田恵にお礼を言った。しかしそんな見え透いた嘘を信じる大人なんかいないと町田恵は言うのであった。帰ろうとして利佳に背を向けて外に出ようとして、町田恵はふと足を止めた。利佳に聞きたいことがあるのだ。しかし、やっぱりいいと言って利佳に何も聞かずそのまま帰ってしまった。

 利佳も2階へ上がると愛美の部屋の前で学が立ちつくしていた。学は愛美のことを怒っていいのか、それとも放っておいた方が良いのか分からないのだ。女の子は難しいと言い残し、学ぶは肩を落として1階へ降りて行った。利佳は愛美の部屋に入ると愛美はパジャマに着替えていた。そして利佳に背を向けながらお説教なんて聞きたくない、お姉さんぶらないでというのであった。いつものように困惑する利佳であったが、それでも利佳は愛美がどこに行っていたのかを聞き出そうとしていた。利佳は愛美が彼氏のところに居たのだと思いこんでいる。ところが愛美は利佳の質問には答えず、逆に町田恵のことを利佳に話すのだった。愛美は町田恵とクラブで会ったのだった。もちろん町田恵が言っていた、駅で偶然会ったというのは作り話である。愛美はクラブの後は家には帰らず、そのまま彼氏の家に泊まるつもりでいたが、町田恵に家に帰らなくてはだめだと叱られたのだ。それで町田恵に付き添われて帰ってきたのだ。愛美はそんな町田恵のことを、利佳の友達にしてはなかなかいい人だと思っている。突然、利佳は久住信太郎と付き合っているのかと愛美に聞かれた。実は同じ質問を愛美は町田恵からされていたのだ。町田恵は信太郎のことが好きみたいで、最近の利佳と信太郎の仲が気になっていたのだ。町田恵はそんなことを利佳に直接聞くことができないので、愛美に聞いたのだ。おそらく先ほど1階で帰り際に町田恵が言いかけたことはそのことだったのではないだろうか。別に信太郎とは付き合っているわけではないと利佳は答えるのだった。利佳と信太郎は付き合ってはいないと愛美は町田恵に言ったのだが、仮に2人が付き合っていたとしても奪っちゃえばいいと言っておいたと利佳に伝えた。利佳は何かを考えている表情をしていた。

 麻美と野崎恵は美樹の話で盛り上がっていた。美樹は忠と商店街を歩いているが、その光景は忠が美樹の後をくっついて歩いているといった感じだ。だが麻美が思うには、美樹は忠がしつこくしてくると言っているのだが、好きでない忠に言い寄られているのもまんざらではなさそうだ。見ていてちょっとでも忠に気があるようには思えないが・・・・・・。やはり美樹が好きなのは信太郎なのだ。忠にお構いなしに商店街をつかつか歩いていると、警察官の大島にばったりと出くわした。大島はニコッと美樹に微笑む。美樹は何なのという感じで大島をにらみ返す。美樹は忠の腕を引っ張ってその場を立ち去った。やはり大島も美樹のことが好きなのだろうか。今のところはよく分からない。美樹の肩越しに見える大島の顔は忠にやきもちを焼いているのがよく分かる。大島は美樹が忠と付き合っていると勘違いしているのだ。

 もんじゃ焼き店たんぽぽには利佳、美樹、麻美、野崎恵が集まっていた。そこへ忠が現れる。さっきまで一緒に美樹といたのだが、美樹はもんじゃを食べに行くからと言って忠と別れたのだ。美樹は忠に帰ってよと言うのだが、丁度その時信太郎が店に入ってきた。信太郎が会いたいと言ったので、忠が連れてきたということだ。誰に会いたいと思って来たのかは分からないが、信太郎は会いたいなんて言ってないと忠の言葉を否定するのだった。

 そんな時、あるマンションから町田恵が出てきた。どうやらこのマンションに住んでいるようだ。マンションの入り口を出たとろこで、一人の女の子が立っているのに気付いた。その女の子とは何と愛美だった。どんな用があって町田恵を訪ねてきたのだろうか。

 忠は美樹たちのことを探していた。たんぽぽを出た後、どこかに遊びに行くことになったらしいのだが、どうやら忠はみんなからおいてきぼりを食らってしまったらしい。ゲームセンターにいるところを何とか見つけることができた。さっそく美樹の元に行く忠。その光景を見ている麻美、野崎恵は利佳に、きっと信太郎は利佳に会いたいと思って来たに違いないと言うのであった。そんなことはないと言う利佳であったが、麻美に腕を引かれ信太郎の元に連れてこれらてしまった。そして麻美は利佳に彼氏が欲しいと言ってたじゃないと頑張るように小声で言い、信太郎に利佳のことよろしくと言ってその場を離れた。彼氏欲しいの?と聞く信太郎に対して、別にそんなことはないとそっけなく答える利佳。突然、信太郎は利佳に彼氏になってあげてもいいよと言った。利佳は冗談だと思って本気にはしていない。しかし信太郎は本気で言っているのだ。言い方こそ軽い感じで信じてもらえなさそうな言い方であるが、利佳のことを本気で好きになったようだ。たんぽぽで忠が言った、信太郎が会いたいといったから連れてきたという言葉を思い出してみる。その場では信太郎は否定したが、本当のところ、信太郎は利佳にもう一度会いたくてたんぽぽに来たのだった。改めて自分の彼女になって欲しいと利佳に告白する信太郎。ところが美樹が偶然、その場を目撃してしまった。2人をじっと見つめる美樹。信太郎は利佳に告白したが、利佳は何も言わず黙っている。何も言わないのではなく、何と言えばいいのか分からないのだ。そもそも美樹が信太郎のことを気に入って、美樹の付き添いで信太郎たちに会ったのだから、美樹を差し置いて信太郎と付き合うわけにはいかないと思っているのだ。ましてや利佳は自分が信太郎のことを好きなのかということもはっきり分からない。いや、もう自分の気持ちには気付いているのかも知れない。自分のことが嫌いなのかと聞く信太郎に対して、そういうわけではないと利佳は答える。煮え切らない利佳の言い方に対し、UFOキャッチャーの人形を取ることができたら自分と付き合うというのはどうかと信太郎は利佳に提案する。しかし付き合うとかいうことをそんなことで決めるのかと利佳は腹を立てて帰ってしまう。いつも困った顔しか見せない利佳であるが、初めて信太郎に見せる怒った顔であった。付き合うことをUFOキャッチャーで決めようと言って利佳を怒らせてしまった自分に対してまずいことを言ってしまったと落ち込む信太郎であった。

 その帰り道、薄く暗くなった空の下、橋の上で利佳はぼーっと信太郎の言葉を思い出していた。俺の彼女になってくれないかと告白された言葉を。

 家に着くと家の前で信太郎が利佳が帰ってくるのを待っていた。けげんそうな顔をする利佳に対して信太郎はニコッと微笑み、取っちゃたと言ってUFOキャッチャーで取ったぬいぐるみを利佳の前に差し出すのであった。

 自分の気持ちに正直になり始めた「夏までのダイアリー」。今後、どのような展開になっていくのか楽しみだ。 

 

第5話 「恋と友情」(1999.6.5.)

 利佳は部屋で一人悩んでいた。信太郎に付き合って欲しいと告白されたもののどうしたら良いのか分からなかった。信太郎がUFOキャッチャーで取ったカエルのぬいぐるみだけは何の悩みもないかのように笑顔でいるのだった。

 放課後、利佳が歩いていると突然携帯が鳴った。何と信太郎からPメールが送られてきたのだ。永代公園で待っているというメッセージだが、信太郎に携帯の番号を教えた覚えはない。丁度その時、川辺が車で通りかかった。利佳に声をかけるが利佳はいかにも不快だという表情を見せるのだった。川辺というのは愛美と付き合っている大学生だ。真っ赤なBMWに乗っていて見た目も軽い感じのする男だ。以前、川辺に会った時の失礼な態度を忘れるわけがなく、利佳はこの男のことが好きではない。しかし川辺のことを好かない理由はそれだけでなく、愛美と付き合っていることも関係しているのだ。学もそのことを心配しているし、愛美を夜遅くまで連れ回すのはやめて欲しいと思っている。愛美はまだ高校生なのでそういうことはやめて欲しいと川辺に言うのだが、軽く聞き流されてしまった。利佳は相手をにらみつけるのだが、川辺はそんなことは全然気にしていないようだ。完全に利佳のことを子供扱いしてちゃかしている。さらに、自分と付き合ってくれるのなら愛美とはもう会わないと、冗談としか思えないことを利佳に言うのだ。利佳はそんな川辺のことを無視して永代公園に向かうのであった。

 愛美は町田恵と会っていた。普段、利佳や学に対して素直でない愛美も何故か町田恵に対しては心を開いて話をするのだ。川辺のどこが好きで付き合っているのかと町田恵に聞かれるが、愛美はよく分からないと答える。本当に心から好きで付き合っているというわけではないようだ。車もお金も持っているし、ハズレではないので一応付き合っておくかという感じだ。まあそういうことはよくあることだが・・・。そんな理由で付き合っていると結局は自分がバカをみると町田恵は忠告してくれた。愛美のためを思って言っているのだ。いつもならそんな説教じみたことを言われると反抗する愛美だが、町田恵に言われると素直に聞き入れることができる。愛美は逆に信太郎のことをどう思っているのかと町田恵に尋ねるが、はぐらかされてしまう。愛美は信太郎のことをまあまあ悪くはないと思っている。

 永代公園に行くと信太郎が川をボーっと眺めながら待っていた。利佳は着くなり、あなたとは付き合うつもりはないから勘違いしないでほしいと言うが、信太郎がいつもと違い様子が変であることを察知した利佳はどうかしたのかと尋ねた。実は信太郎は美樹に呼び出されたのだった。てっきり忠のことで相談があるのだと思っていたのだが、その場で信太郎は美樹に好きだと告白されたのだ。信太郎は美樹が自分のことを好きだったとは知らなかった。本当は美樹が自分のことを好きなのを知っていたのではないかと信太郎は利佳に問い詰めた。もちろん利佳はそのことは知っていたが言えなかったのだ。信太郎は親友の忠が美樹のことを好きなのはしっていたし、何で美樹が自分のことが好きだということを教えてくれなかったのかと利佳を責めた。信太郎は利佳のことが好きなので、美樹に告白されたがはっきり断ったと利佳に伝えた。それを聞いた瞬間、利佳は美樹の元へ走り出した。美樹のことを傷つけてしまったと利佳は思った。美樹の携帯にかけるが留守電になっていてつながらない。美樹が目を輝かせて信太郎のことが好きだと教えてくれた時のことが脳裏をよぎる。とにかく美樹に会わなくてはと思い、美樹を探して走りまわるのだった。ある商店の前を通り過ぎた時に利佳は美樹に呼びとめられた。美樹はその店からソフトクリームを舐めながら出てきた。そんなにあわててどうしたのかと、いつもの美樹の言い方だった。

 2人は神社の境内で腰を下ろした。美樹は忠から、信太郎は利佳のことが好きだということを聞いていたのだ。信太郎と付き合える可能性はほとんどないことを美樹は分かっていたのだが好きという気持ちを伝えておかないと後悔すると思い、当たって砕けること覚悟で信太郎に告白したのだ。全然落ち込んでいないと強がってみせる美樹であった。だから遠慮なく利佳は信太郎と付き合っていいんだよと言うのだった。信太郎は美樹に告白されて断った際に、利佳のことが好きだから君とは付き合えないとは美樹には言わなかったのだ。美樹の親友の利佳のことが好きだからということを言ってしまったら、自分が立ち直れないと思ったので信太郎はそのことを言わなかったのだと美樹は思った。そういうところまで気を使ってくれる信太郎のことを好きになったのは間違いでなかったと美樹は思った。ふられてしまったものの信太郎のことを好きになり自分の気持ちを伝えたことを後悔していない。そんな優しい信太郎と利佳がうまくいくようにと美樹は神様にお願いするのであった。それと、自分にももっと素敵な彼氏ができますようにと。すると美樹の目からは今までこらえていた涙がどっとあふれてくるのだった。

 その帰り利佳と並んで歩いていると、その前に忠が立ちはだかった。美樹に愛の告白をするために。しかも大勢の公衆の面前でだ。自分は頭が悪い、信太郎よりも足が短い、しかし美樹を思う気持ちは誰にも負けない、しつこいかもしれないけどふられてそのまま引き下がることは出来ないというのだ。それほど忠は美樹のことが本気で心から好きなのだ。だが美樹たちは突拍子のない忠の行動に驚いて走り去ってしまった。

 たんぽぽでは石本と利佳が食器の後片付けをしていた。石本は利佳と一緒に後片付けをすることができるためか顔がニヤけている。するとそこへ愛美が帰ってきた。学校の帰りに寄り道をしてきたのだ。いますぐ夕御飯の準備をすると利佳は愛美に言うが、これから出かけるから夕飯はいらないと愛美は言う。制服から私服に着替えるために愛美は2階に上がっていった。こんな時間から出かけるのかと利佳は思った。ふとまたあの男のことが頭に浮かんだ。きっと川辺に違いない。直感で川辺が愛美をこんな時間からまた連れ出そうとしているのだと思った。おそらく家の近くに川辺が車をとめて待っているはずだ。そう思った利佳はちょっと買い物に行くと言って店を飛び出して川辺を探しに出た。思った通り店から少し離れたところに車をとめている川辺を発見した。こんな時間から愛美を連れ出さないでと言いかけたのだが、話は聞くからとりあえず車に乗ってと助手席に座らされてしまった。父が心配しているからと言うが、川辺は別に愛美と付き合っているわけではない、なんだったら愛美に聞いてみなというのだった。すると突然、川辺は車を発進させた。利佳は車を止めてと何度も言うのだが、川辺はそんな言葉を無視してアクセルを踏み込んだ。利佳の様子を見に店の外に出た学の目の前を利佳を乗せた車が丁度通り過ぎた。自分の目を疑う学。何で買い物に行ったはずの利佳が男の運転する車に乗っているのだ。私服に着替えた愛美が川辺の待つ車のところへ向かおうと店から出てくると何故か川辺の運転する車が走り去った後であった。愛美は自分のことをおいて利佳を乗せて走り去っていく車を見つめるのだった。どういうわけで利佳を乗せて走り出したのだろうか。まさか川辺もまた信太郎と同じように利佳のことが気になり出したのか。自分と付き合ってくれるならもう愛美とは会わないというあの言葉は本気だったのだろうか。

 ドラマも中盤を過ぎ来週あたり恋の新展開があるのだろうか。とても楽しみである。

 

第6話 「洋介のキモチ」(1999.6.12.)

 洋介(川辺洋介)が利佳を車に乗せて走り去ったのを心配して石本が警察に連絡した。利佳のことが心配な学だが、愛美からは洋介のことは何も聞き出せない。そこに新米警察官の大島が駆けつけたが、愛美は大袈裟すぎる行動にあきれるた様子で冷ややかな笑いをする。この状況に笑うことに腹を立てた学は愛美のことを怒鳴るが、逆に何事でも利佳のことになるととても心配性になる点を指摘されてしまう。愛美はそう言い残すと店を飛び出し、どこかへ走り去ってしまった。

 愛美は洋介の携帯に電話をかけていた。しかし洋介は出ずに留守番電話になってしまった。それもそのはず、洋介は携帯を車の中に置いたまま車から離れていた。おそらく利佳と一緒に。ちょうどその時、向うのほうから信太郎と忠が歩いてきた。先ほどたんぽぽに警察官が来ている時に利佳の家に電話をしたのだが、状況がこのようになっているのでもちろん利佳とは話すことはできなかった。愛美は信太郎たちに気付くが、愛美の表情は悲しそうな表情をしていた。洋介とは本気で付き合っているつもりはないのだが、このようなことになるとやはりショックを受けているのだろうか。

 その頃、利佳は洋介と一緒にクラブにいた。赤や青の光線の中に渦巻くタバコの煙。音楽に合わせて体を揺らす若者たち。利佳はこのような場所には来たことがないようだ。洋介に話があったのだが、このような場所に連れてこられてしまった。洋介は利佳が言おうとしていることは分かっている。愛美とはもう会わないで欲しいというだ。洋介は愛美とは本気で付き合っているわけでなく、愛美とは遊びだとはっきり利佳に言うのであった。遊びで付き合っているという洋介の言葉に利佳は怒るが、どうせ愛美だって自分とは遊びで付き合っているのだと言うのだった。愛美が自分と付き合っているのは学や利佳に心配させたくてあてつけで付き合っているのだというのだ。利佳はそんなことは思ったこともなかったので、あまり信じていないようだ。愛美とはもう会わないでくれというのなら、もう今後会わないと洋介は利佳に約束した。洋介は何気なく利佳に信太郎と付き合っているのかと聞くが、そんなことはないと言う。すると洋介は、それなら俺と付き合わないかと利佳に言うのだった。利佳はそんなことを言う洋介にあきれた顔をする。しかし洋介は、お前が思っているほど俺は悪い奴ではないと言って利佳の肩に手を回した。すると突然、利佳の肩に手を回した洋介の腕をつかむ者がいた。そう、町田恵だ。愛美から町田恵に連絡があってここにやって来たのだ。町田恵は利佳の腕をつかんでこのクラブから連れ出そうとした。まだ話は終わっていないと利佳の腕を掴んで引き戻そうとする洋介であったが、すぐさま数人の男が洋介を囲んだ。無言の重圧で洋介にプレッシャーをかけると、洋介はやばい雰囲気を察したのか利佳の腕を離した。

 店の外に出ると町田恵は何も言わず立ち去ろうとした。利佳は愛美から何か聞いていないかと町田恵に尋ねた。愛美が洋介と付き合っているのは、学や利佳を心配させるためだということをだ。そんなことは本人に直接聞けばいいと町田恵は言った。するとそこに愛美が駆けつけた。信太郎や忠も一緒だ。町田恵は信太郎と視線が合うとくるりと背を向けて何も言わずその場を立ち去った。洋介も店から出てきてその皆が一同に介した。愛美は洋介に歩み寄ろうとするが、洋介は冷たい態度でもうお前とは会わないと宣言した。利佳とそう約束したからだ。更に洋介は信太郎に対しても、利佳は信太郎のことは何とも思っていないとわざわざ伝えた。そして一言、利佳は自分がいただくと言うと車に乗りこみ走り去って行った。