2001/10/09 (tue)
そろそろ陽一にスイミングクラブでも行かせてみようかと、近くのレクレーションセンターに資料収集しに行く。
学校の帰りで帰りのバスがなかなか来なくて、イライラしながら帰路を急ぎ、4時半頃やっと家にたどり着いたその時だった。
救急車が来て、なんと家の前に停まった。家の誰かがどうかしたのかと思い走り寄ると、運転席の男の人が出て私に
ハーイと笑顔で挨拶する。中からJodiが出てきて言った。「ああ、佐登子。陽一は大丈夫だから。分かった?陽一は大丈夫よ。」
と言う。救急車の中を見ると、陽一がハサミでズタズタに切られたトレーナーと毛布に包まって担架に横たわっていた。
一瞬で気が動転した。大声で「何があったの?」という私に2人の救急隊とJodiが「落ち着いて。大丈夫だから。」となだめる。
それからJodiが説明してくれた。学校帰りにいつものように校庭の雲梯で遊んでいたら、そこから落ちてしまったんだという。
右肩から落ちたんだけど、それをカバーしようと左手を地面に着いたところ、その角度が少し違ってたのか左手首の骨を骨折したらしい。
骨折・・・私に経験ないから他人事だと思ってたけど、とうとうあの心配していた雲梯で・・・保育園の雲梯で落ちて大腿骨を骨折した
お友達のことを思い出した。どれくらいの骨折なのか応急処置がしてあって、包帯で固定してあるので見れないが、陽一は泣いた後の目で
心配そうに私の顔を見上げていた。
とりあえず、部屋に重い学校の荷物を置くことも出来ず、救急車に乗った。Jodiは他のお母さんに預けている自分の子供たちを
引き取りに行き、それから病院に行くからと私にバトンタッチした。病院へ向かう車の中で救急隊からいろんな質問を受けた。
予防接種は全部済んでるか、既往症はないか、現在薬の服用してるか、アレルギーは?ファミリードクターはあるか、左手先を
触られて感覚があるかどうか (神経が破損してないかを確かめるため)、頭痛などの他の痛みはないか、痛みは1〜10までとしたら
どれくらい痛いか、視野ははっきりしてるかとか・・。どれくらいの骨折なのかと聞くと、骨が折れて少しずれているようだけど、
皮膚から骨が飛び出していることもなく、軽い方だから大丈夫だという。 複雑骨折なのかどうか、間接に近いところなので間接骨折
なのかどうかが不安だった。レントゲンで見ないと詳しくは分からないと言われた。その時の陽一の痛みは3くらいで、それほど激しい
痛みはない様子。泣いた後に車に揺られてか、うつろうつろと眠りかけている陽一だった。
病院に着いた。腕の骨折で担架から車椅子に移され、移すときも3人がかりでいかにも大事に大事に扱われた。入り口でカルテと腕に
巻くリストバンド(これには患者の名前と生年月日、カルテaA住所が記載されている)を作成し、外科病棟に行く。 レントゲンを撮り、
外科の医師に状態を聞く。救急担当の女性が、私が全てを理解できるように日本語の通訳を手配してくれた。通訳者が自宅でしか
対応できず電話を介しての通訳だけど、医師と私で電話を交換し合いながら、私からは骨の状態と手術の予定などを質問し、
医師からは最後に飲んだり食べたりしたのはいつかとか、救急車内と同じ質問などをし、満足するまで聞くことが出来た。
陽一の手首の骨は、片一方がきれいにポキンと(?)折れてちょっとずれ重なっているだけなので複雑なものではなく、手術は簡単に
済むと言われた。手術は骨専門のスペシャリストを呼んで手術するらしく、8時半頃からオペになるだろうとのことだった。
しばらくしてJodiが、私用の夕食と水筒、陽一用に上着とおもちゃとかぬいぐるみやキャンディーなど、万が一の為に歯磨きセットも
持って来てくれた。Jodiは陽一を見ると駆け寄り、「勇気ある子ね、グッボーイ」と陽一にキスをした。陽一が落ちて泣いたとき、Jodiは
抱き上げ、最初右肩を撫でてあげていた。 だからすぐに気が付いてあげられなかったらしい。でも激しくなく泣いたのも落ちた直後だけで、
救急車が着いた頃にはほとんど泣いてなかったという。 ほんとに良く我慢したねとJodiは陽一を褒め称えた。陽一も絵本を見ながら
嬉しそう。何よりも子供たちからの応援の気持ちだとJodiがくれた Shrekのおもちゃが、陽一に元気を取り戻してくれたようだった。
救急担当の女性が来た。何かと思ったら、手術を受ける子供の写真を持ってきて陽一に手術の流れを説明し始めた。
私が付いて陽一に説明したんだけど、こういう注射をして、ここから麻酔薬を入れて、こういう格好した人が何をする人で、こんな部屋に
行くんだとか写真を見せながら本人に説明する。本人告知?そういう義務がカナダにはあるのか、でも子供はすごく怖がるものだから、
それ以上説明しないでくれーという感じだった。いくら麻酔注射の時も、目を覚ましたときもお母さんが側にいるよと説明されても、
子供には残酷すぎない?と思った。案の定、陽一は泣き始めた。
小児科病棟の個室でビデオを見ながら手術開始を待ち、1時間半も遅れ夜10時過ぎにOR(手術室)へ。
私も手術着に着替えヘアキャップをかぶり付き添う。手術前には患者確認のため3回もリストバンドをチェックされた。
注射をうつ時も麻酔薬を注入するときも私はもちろん側にいた。薬が効いて眠り始める頃、離れようとすると、看護婦さんに
「グッナイのキスは?」と言われ、急いで従った。なるほどなぁ、これは良いシステムだなと感心した。手術は骨専門のスペシャリスト
によって行われ、その医師とは事前に何度か握手をし、私の緊張をほぐすかのようだった。
手術はほんの10分ほどで終わった。医師から、「もう陽一の骨は真っ直ぐに戻ってるから大丈夫。明日自分のオフィスに電話して
次回検診のアポをとること。陽一は本当に良い子だ。目が覚めたら褒めてあげるように。」と言い残し、自宅へ帰っていった。
簡単な骨折なんて日常茶飯事に手術してるだろうに、患者の気持ちのケアに細心の注意を払っているのが感じられ、本当に感心する。
私の小さい時なんて、外科なんか行ったら医師は黙って何の説明もせずに治療しだすからハラハラドキドキもんだったよなあと思った。
そうそう、ちょっとした楽しみの為か、子供のギブスは色を選べて、ハロウィーンでゾンビになりたい陽一は、 明るい所じゃクリーム色だけど
真っ暗い中じゃ蛍光グリーンに光る色(glow in the dark)を選び、ゾンビアームが出来上がった。麻酔から目を覚ましたのを確認し、
飲み物飲んだり、部屋を暗くしてゾンビアームを確認したりして、夜中の1時Jodiが再び迎えに来てくれ家に帰った。
帰る途中、なんと道路を悠々と横断している2匹の角の生えた鹿を見た。車をゆっくりにし、陽一もそれを見てビックリしていた。
眠くて仕方のない様子。なんともまあ、大変な1日だった。部屋に帰ると洗っていたシーツはちゃんとベッドメイキングしてくれてたし、
麻酔切れの寒気と吐き気を懸念し、湯たんぽのようなコーンバックやバケツが用意してあったし、車の中には毛布と枕を持ってきてくれてたし、
Jodiのいろんな気配りが本当にありがたかった。
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