満月には爪切りを
片思いの女と会う夜は
満月がいい
ひげを良くそり
爪切りを用意しよう
かわいい女ほど
わがままだ
公園のベンチで
丸い月を見てダダをこねるだろう
あたし とがった三日月が好きよ
じゃあ おじさんが
と背伸びして
爪切りで
満月をパッチン!
できた三日月をカッターにして
天蓋のカーテンを縦に裂く
星が降る降る
地球が笑う笑う
「乱暴おやめ銀河の狼、宇宙が壊れるよ!」
「そういうお前は、天の川の赤頭巾ちゃん!」
トラウマは繰り返す
裂かれた宇宙の皮の向こうには石がごろごろ
僕の腹の石か?
帰れというのに帰らず
耳を長くしたのは君だったくせに
いや もう過去のことは良い
僕は門限が気になってくる
宇宙を縫いにかかっている
ホッチキス
最近の赤頭巾は
今日は無理なら明日でも
わたし食べられたい!
はっきり言う
えらい ほんとにえらい
海に行きたいとも言う
旅に行きたいとも言うか
あそこのお好み焼き食わせろともいう
でも恥ずかしいのはオイラ
もう鋭い爪もない牙も抜けた
だから
これからとても恥ずかしいことを言うよ
と前置きして
淋しい低音で
‥‥僕は形のよい君の耳の詩を書きたい
すました女の耳は
鍋で玉子のようにゆでられて
月のように昇ったのだ
花のように咲いたのだ
「今度の満月にも爪切りを!」
と宇宙銀河の耳は水蒸気を吐きながら
やっと言った
(2002.10.14)