水族館  

 

砂漠で一人バスを待つような

渇いた夢から目覚めると

闇のなかの立方体は

二人の濃密な吐息に満たされていた

 

そう、私どもの夫婦の寝息は液体で

寝室はさながら水槽になる

水底に横たわる

妻という名の生物の

ほの白い影をさぐると

眠りとは

あらためて仮死のことだと思う

 

無防備に開かれた手のひらに

人差し指を置いてみる

やんわりその花弁は閉じられて

もう私という魚を放さない

 

妻という名の生物は

深夜になると

この世の底に咲く水中花

人としては死に

植物として闇に発光している

 

誰のために

迷う魚の私のために

 

花の寝言のあぶくが

立ちのぼり

花のあぶくは

桃色で

少女の夢を追いかける

 

私はその少女と

夢の野原で遊ぶことができる

誰のために

あなたのために

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