走るジャック 1
スミスは走るのが得意だし好きだった。警察学校在籍中に地区の代表選手として出場し、中距離で優勝をした経験がある。スミスは空手とか柔道とかボクシングのような格闘技はどうも苦手だった。警察内では走るのが得意であるよりも、格闘技が得意な者の方が幅を利かせている。スミスは警官になってからあまりぱっとしない状態が続いたが、やっと仲間を見返してやれるときがやってきた。
彼の担当する管轄内の都心近くの静かな住宅街で、3件の通り魔事件が続いて起きたのだ。
初めは夜中の十時頃に、残業帰りのサラリーマンがジョギングをして近づいてきた者に、大腿部を鋭い刃物で切りつけられ大怪我をした。犯人は暗闇の中に走り去り、後ろ姿しか分からないため、警察の捜査では犯人の特定が出来ないままでいた。
続いて初めの事件発生からちょうど一週間後の夜中の十一時頃、二度目の事件が起きた。夜遊びをして帰宅した若い女性が、フードで顔を隠したジョギングスタイルの通り魔に、自宅の近くで腰の辺りを鋭い刃物で切りつけられやはり大怪我をした。警戒体制を引いていたにも関わらず犯人は途中で服装を変えたらしく、警察の警戒の網には掛からずまんまと逃げられてしまった。
警察は非常警戒体制をとり犯人逮捕ための万全の体制をとった。ところが二回目の事件が発生してからやはりちょうど一週間目に、警察に挑戦でもするかのように第三回目の事件が発生をしてしまった。今度はさらに深夜になり真夜中の十二時に酔って帰宅途中の会社の役員がよく切れる刃物で胸を刺されて重傷を負ってしまった。
その役員の記憶では、犯人はやはりフードで顔を隠したジョギングスタイルをしていて、刺した後そのまま走って逃げていったという。張り込みの警官の人数もかなり増えていたので、深夜の住宅街をジョギング姿で走っている犯人らしき者を目撃して職務質問をしようと追いかけた者がでたが、あまりにも足が速く見失ってしまったという。
ー続くー