走るジャック 2

 3回目に及んで警察の大失態はマスコミで大々的に取り上げられ猛烈な批判を受けた。この批判に警察は組織をあげての大がかりな警戒体制を組み、後発の事件発生をなにがなんでも防止する体制をとった。張り込みの刑事の増員、警官のパトロールの強化はもとより、犯人発見時の追跡の強化として、空から犯人追跡をするためヘリコプターを待機させ、自転車やバイクに乗った警官の配置、足の速い警官を選んでの私服のパトロールなど犯人逮捕の考えられるすべての体制をとった。

 事件の経過から見て、最初は夜中の十時、次が十一時、次が十二時、今度は深夜の一時であろうことは容易に想定できた。しかも、警察を愚弄でもするかのように、最初は足をねらい次は腰を、次は胸と続いている。今度は首をねらうと警告しているのは明らかだ。

 3回目の事件発生からちょうど一週間が過ぎた深夜、警戒の緊張はピークに達していた。

 走るのが得意なスミスには今、その足を十二分に発揮し、世間に認めさせる又とないチャンスが巡ってきていた。

 スミスは運も良かった。回りには同僚がちょうどいない。外灯の光が届かない、路地の曲がり角で出くわした相手は、スミスの服装を見るなりいきなり逃げ出した。スミスの動きも早かった。一人で逃げる相手を追いかけだした。

 スミスは走った。足の速さでは負けない。ぐんぐん追いつき肩を押さえて相手を制止すると胸ぐらをつかんだ。

 相手の顔を見るときはいつも客観的になれた。目は今にも飛び出しそうに大きく見開いて、口をだらしなく半開きにしている。恐怖に駆られておびえきっているのが、顔の全体の表情でよく分かる。

 スミスの片手にはカッターナイフが握られていた。カッターナイフは恐怖で動けなくなった相手の喉元にすばやくつきたたてられた。返り血を防ぐ布をあてると、今度もためらい無く切りつけた。

ー終りー