わかれ

1978

街のはずれの
古い館が君の家
日の暮れる頃
呼び鈴押した胡桃の陰
君は無言の手招きさ
サフラン色のドアを開けたよ
(原田真二「タイムトラベル」より)

星空を見上げ時の流れに思いを馳せることが新鮮だった
新興住宅地の空き地の街灯の光の中
宇宙の将来を思い描いては不思議な震えに身を任せた
独りもの思いに耽った14の頃

学校の帰り
ある晩秋の夜
乗客の誰もいない郊外電車の先頭車両で
耳の中に鳴り響いたメロディを
ふと思い出すほど静かな独りの夜です

君との邂逅が
なぜか少年の頃の、夢と希望と不安が織り合わさった
あの苦しいときめきを甦らせた

深夜のカフェテラスで
君の見せた悲しげな横顔の残映が
まるで十数年前の、夕陽に映える部屋の白壁に
重なってみえるよう

あのころ出会っていたら
君はたぶん高嶺の花
悪戯そうな微笑みで
立ち尽くす僕の前を通り過ぎたことでしょう
時の悪戯は
十数年後にダイヤルを合わせ
暫しのモラトリアムを与えた

偶然を装った必然
宇宙に想いを馳せる間もなく
夕陽の中に消えていった
君のインカネーション

僕は再びただ独り
夕陽に映える白壁を見つめ
宇宙の必然について考える
少年の頃の
郊外電車の心地よさの中で

サフラン色のドアが開けられるまで…


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