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<古ばなし>            ★



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                  ☆ 村のお年寄りの中に、話好きな人がいた。
                   昔は、今と違ってたいそうおおらかだったそうで、
                 耳にしたのは、ここに記したよりも、はるかに直接的な表現のものであった。


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何したい      どこ行くの    シッポ        田植え
          村の衆が
    間違い      半分だけ     植え付け
           差込み       暇乞い
     狐と馬        丸干し
            強い薬       瓜の子    
New脚気の薬   New 牧場の柵

                             ☆
                                  ★

          ★




 若い二人が、結婚することになったん。
ところが、昔は自分の家の座敷で祝言あげて、披露宴をやったんだな。
だから、大人たちの飲めや歌えやの騒ぎで、なかなか二人っきりになれないん。
 下を向いてつまんなそうにしてた花嫁が、花婿に、
「あんた、いま、あに考えてるん?」
って、ちっちゃい声で聞いたんで、花婿が、
「おまえと、同じことだよ」
って、返事ィしたら、
「まあ。いやらしい人!」
そう言って、花婿の脚をつねったんだと。
 思いは同じ、二人とも、どっかがうずうずしてたんだと。

      return  


 これも、新婚さんの話だけどね。
花嫁は何にも知らねえんだけど、花婿は遊郭なんてとこでいくらか遊んでいたんだと、
だから、二人っきりになってから、その瞬間に、
「あーッ」
てんで、いつもの言葉が出てきちゃったんだ。
花嫁がびっくりして、
「あれま、これからどっかへ、出かけるんかい」
って聞いたんだと。

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 その日、作蔵が親類の娘のおゆうと、山の畑で蚕にやる桑を切っていたんだと。
暑い日だったもんで、じきに喉が渇いちまって、湧き水のある池へ飲みにいったんだと。
作蔵はがぶがぶ飲んだけど、おゆうは池に落っこちそうで、うんまく飲めなかったんだと。
「その木に、とっ掴まって飲みゃァいいんだよ」
「だけんど、片手じゃァよくすくえねえんだよ」
「そんじゃあ、おれがシッポつなぎィしてやっから、両手で飲めや」
「作蔵さん、シッポがあるんか?」
「いいからおめえは、黙って飲んでろ」
 そういって作蔵は、自分のシッポをおゆうの、シッポつなぎの穴に差し込んだんだと。
そうして、おゆうは両手で水をすくって飲めたし、作蔵は十分にシッポつなぎを楽しんだんだと。
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 田植えのときにゃァ、男たちゃが、天秤棒でかついでった苗を、田ン中へ放り込んどくんだ。
娘や女たちゃァ、横一列に並んで、両手で届くところを植えては、後ろへ下がってくるんだ。
みんな菅笠ァかぶって、手甲をつけて、絣の着物を短く着て、並んだなァいい眺めだ。
 その田が、いま少しで終わりそうになったとき、バシャーって音がしたんだ。
見たら、おしげっていう娘が尻餅ついて、バタバタやっていた。
やっと起き上がったおしげは、へっぴり腰で畦まで行くと、四つんばいでゴソゴソやっていた。
わしゃァ、心配になって、おしげの側へ行こうとしたら、
「来ちゃ駄目だーッ、来るなーッ」
っていいながら、ハアハア息が荒いんで、それえ見た、おたけばあちゃんが,
「おめえがいくんじゃねえ。よくあることだよ。おしげ、落ち着いてつまみ出せ」
 後で聞いた話じゃあ、むかしゃァ、パンツなんてはいてなかったんだ。
だから、すぐに立ち上がれねえと、ドジョウのやつが入りこむんだと。
どこにだって?、そらあ
どこだかなあ。おらにゃァ、わかんねえとこがあんだと・・・。
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 ある百姓のおかみさんが、体の具合が悪いってんで、医者のとこへ行ったんだと。
ひととおり診た後で、医者が、
「こりゃァ。奥さんおめでたですな」
「おめでたなんて、いまさらどうすべえ」
「ご主人がいけないんですな」
「主人じゃなくて、村のみんながいけねえんだよ」
って、言ったんだと。
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むかし名主様だったでっかい農家にゃあ、何人もの男と女の奉公人が働いてたんだと。
明治から昭和になっても、一人か二人いたくれえだ。
みんな住み込みだったし、夜は女と男が隣同士の部屋に寝ていたんだ。
 ある下男を好きになった下女が、細い紐を障子の向こうへ出して、寝たんだと。
話を聞いたその男は、紐を足に縛って寝たんだと。
『紐を引っ張ったら、こっちの部屋へ夜這いに来い』っていう合図だったんだと。
その男は、昼間の疲れで、すぐに眠っちまった。
 
 そのうち、隣の男が、小便に行くべえって起きたら、布団から出てる足の紐に気がついたと。
「何の合図だんべえ、面白そうだな」
その男は、小便からけえってくると、紐を自分の足に縛っちまった。
 それから、家中が寝静まった頃、下女仲間の寝息を確かめた女が、紐を引っ張ったんだと。
目ェ覚ました男は、暗闇の中で紐をたぐって、女の布団に足のほうからもぐりこんだ。
待ってた女は、好きな男だと思って、男の腰が抜けそうなくれえの、乱れっぷりだったと。
 はじめの男だけが、馬鹿を見たわけだけど、こらァ、ほんとにあった話しだそうだ。
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 むかし、地主さまン家で旦那が死んで、嫁と子供だけ残されたんだと。
暮らしに困るっつうしんぺえはなかったけんど、後家になった嫁様ァ、まあだ四十半ばだったんだ。
そんで、どっかがさびしくってしょうがねかったんだと。
「そんで目ェつけたんが、村一番のいい男で小作人の新吉だけんど、新吉にゃァ嫁がいたんだと。
それがこの年が米の出来が良くなかったんで、新吉が地主のうちィやってきて頼んだんだと。
「小作米ィまけてくんねえか。おら、あんでもすっからよう」
「そうかい。そんじゃ夜来てくんな。そん時、話ィするべえ」

 夜ンなってやってきた新吉ィ引っ張り込んだ部屋にゃァ、布団が強いてあったんだと。
「あんだんべえ、こらあ。おらにゃァかかあがいるんだで」
「おめえ、あんでもするってゆったじゃねえかい。
「そんじゃあ、こうすべえ。おめえの物ォ半分だけ貸してくれたら、小作米半分に負けてやんべえ」
仕方ねえんで新吉も、かかあに申し訳ねえって思いながら、ふんどしィはずしたんだと。
そんで、新吉がそうっと半分だけ入れたら、後家が新吉のものを握ってぐっと入れたんだと。
「あれっ。そらあ、駄目だ。半分だけって約束だんべえ」
「だから、先っぽの半分はわかったから、こんだあ根元のほうの半分だ」
って言いながら、後家が自分でぐいぐいって突っ込んだんだと。

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 むかし、名主さんとこにゃあ娘が二人いて、二人とも近在でも評判の器量良しだったんだと。
だけど、人間の欲ってえなァ、きりがねえもんでな。
二親にとって見れば、「一人だけでも息子だったら良かったに……」と思ってたんだと。
そこで、お寺の和尚に相談に行ってな、
「どうか和尚様のお力で、男にしてもらえなかんべか」
と、お願いしたんだそうな。
「ウム。お経の方にも「変生男子」という法があるによって、やって見ましょう」
と、いうことになって、二人の娘を寺に連れてったんだと。
和尚は、娘たちをかわるがわる、部屋に連れ込んでは、怪しげな祈祷を続けたんだと。

 そうして、三七、二十一日の満願の日になったけど、男に替わるわけはねえ。
「和尚様、どうだったんべえ」
「ウム、わしも精一杯努力してみたが、残念ながら二人とも仏縁にうすいようじゃな」
仏縁に薄いといわれちゃァしょうがねえ。家に連れ帰って、二人に、
「一体どんな、ご祈祷を受けたんだい」
って聞いたら、姉娘が、
「和尚様は、一生懸命植えつけようとしたんだけど、そのたびに抜けてしまって……」
「植えつける?」
そうしたら妹が、姉に代わって言ったんだと。
「でも、抜けるのは当たり前かもしんねえ。いつも逆さに植えつけようとしてたもの」
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このごろは、村の農家でもな。いろいろ機械を使うようになってな。
その機械の調子が悪くなっても、なかなか修理屋が来てくれねえんだな。
 仕方がねえってんで、親父が朝から晩までいじってたんだけど、終わらなかったんだと。
だから、いっぺえ飲んで、飯を食って、布団に入ってからも寝ぼけちまってな。
機械のスイッチだと思って、かあちゃんのおっぱいさわって、
『おかしいな。動かねえな』
って、つまんだり、ねじったりしてるんだと。
 そうしたら、目ェ覚ましたかあちゃんが、言ったんだと。
「やだねえ、おまえさん。動かねえはずだよ。まあだ、差込が入ってないんだよ。
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 むかしは、神社や寺の講ってのがあって、年番の人がまとめて代参に行ったんだと。
歩いてった時代なんぞは、大変だったそうだが、たいていその近くに女郎屋があった。
そこで厄落とししてくるのが男たちの楽しみだったらしいな。
「お前さん気をつけて行ってくんだよ。女郎屋なんかに泊まるんじゃねえよ」
「たかが二、三日のことじゃねえか、でえじょぶだよ」
「きっとだよ。お前さん」
「それよりも、短くっても旅は旅だい。お暇乞いしようじゃねえか」
「駄目だよ。子どもが目ェ覚ますよ」
「でえじょうぶだよ。なあ、おい」
ってんで、充分にお暇乞いをして、あくる朝。出掛ける支度ゥしてると、子どもが、
「父ちゃん。うちの鶏も一緒に行くんか?」
「鶏なんか、行きゃあしねえよ。どうしてだ」
「だって、あすこで、お暇乞いしてるよ」

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 むかしはどこの町や村でも、街灯なんてもなァなかったから、夜は真っ暗闇だったんだ。
村の治作ってェ男が、隣村まで用足しに行ったけえり道の話だ。
「あー、遅くなっちまった。月があるうちゃあいいが、雲でも出たら足元も見えなくなっちまうなあ」
そう思いながら前を見るってえと、ちょうちんの明かりが見えたんだと。
 追いついてみるってえと、若い娘の一人歩きで、夜目にも白い肌がちらりと見えたんだな。
「ねえちゃん。こんな夜更けに、どこまで行くんだい」
「はい。母が急病で、隣村まで薬を貰いに」
「そうかい。おいらァ薬屋の番頭だけど、よけりゃァいくらか分けてやってもいいぜ」
前に回って顔を見るってえと、目元ぱっちり、おちょぼ口、いい女だったんだと。
辺りに人影なんてあるはずもねえ、治助でなくたって考えるなあ同じことでな。
月が雲に隠れたのを幸いに、ちょうちんを取り上げて明かりィ消して、娘を押し倒したんだと。
裾から娘の着物ォまくって、自分もふんどしィ外して、でっかい奴を突っ込んだんだと。
 月が雲ン中から、また顔を出したときにゃあ、すっかり済ましちゃった。
そんで、月明かりで娘の顔を見たら、目はつりあがって、耳までピンと立ってるんだと。
「おいっ。お前は狐だな。正体あらわせっ」
てえと、娘は、落ち着き払って言ったんだと。
「なんだい。お前こそ、馬のくせに」
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 その日、幸助は嫁のお初と山の上の畑へ、麦刈りにいったんだと。
思ったよりも仕事が進んで、早く終わりそうになったんで、
「お初よう。こけえらで一服しねえかよう」
腰を下ろして汗を拭いてると、お初の胸のふくらみがチラッと見えて、幸助はおかしな気分になってきたと。
家族が多いし、まあだ元気な親たちもいるで、夜の二人はご無沙汰だったんだと。
幸助は、お初を抱き寄せながら、
「なあ、いいだんべえ」
「あれ、とうちゃん。こんなとこでかい」
だーれもいねえ山の畑だから、二人は日頃のたまってたのを思い切って吐き出したんだと。

 だけど終わってみたら、拭くものがねえ。
仕方がねえんで、麦と同じようにおっぴろげて、お天道様に乾かしてもらうことにしたんだと。
 ところが、じきに、お初が立ち上がったんで、
「あんだ、お初。はあ、乾いたんか?。ずいぶん早いじゃねえか」
って聞くと、お初が真面目な顔で言ったんだと。
「そらあ、早いだんべえ。とうちゃんのは丸干しで、おらのは開き干しだもんなァ」
      return


「先生、助けてくだせえよ。かかあが夜もちっとも、おらの誘いに乗ってこねえんでさ。何か、かかあに飲ませる薬かなんかなかんべかね?」
「いや、そんな薬を処方するわけにはいきませんな」
「先生、長い付き合いじゃねえかね?おらを、助けてくんねえかい」
医者は根負けして、引出しを開けて、中からちっちゃな紙包みをいくつか出したんだと。
「普通はこれはしないんだけどもね、いいかね、これはかなり強い薬だからな。1包みだけだよ。1包みだけおかみさんに飲ませなさい。」
「へえ、1包みだけだけだね・・・かかあは、かなり冷めてるだよ・・・」
「いや、1包みだけ。それ以上は絶対にだめだよ。」
「ああ・・・わかっただよ」
 男が家に帰ると、おかみさんが夕飯を作って待っていた。
飯がすむと、おかみさんが台所に立った隙を見て、急いで紙包みの薬を1つ、おかみさんのお茶の入った茶碗の中にいれたんだと。そんだ、ちょっと考えて、もう1包み、入れたんだと。
それから男は考えた。医者はかなり強い薬だから、と言っていた。
男は、そこで、自分の茶碗にも1包み入れたんだと。
 おかみさんは、傍に戻ってきてお茶を飲み終わるとすぐに、体をぶるぶるさせて、息遣いも荒くなったと。
そんで、聞いたことがねえような声の調子で言ったと。
「おら・・・男が・・・欲しい・・・」
男は目をぎらぎらさせ、両手をぶるぶるさせながら、それに答えたと。
「おらも・・・」

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 むかしの旅は歩いていくのか当たり前でな。
長い旅になるってえと、街道筋の村から村へ馬を乗り継いで行ったんだそうな。
馬の背に揺られるってえなあ、股のところをこすってるのと同じなんで、変な気分になってくるんだと。
「馬子さんや。ちょっととめておくれ」
「お客さん、もよおしたんかね」
「ああ、どうも、いけなくなってきた」
「そんなら、そけえらのマクワ瓜で用を足すとよかんべえ」
言われたとうりに、道端の瓜畑で適当なのを選んで、用を足して旅ィ続けたんだと。

 その旅人が、それから三年ぐれえたって、また同じ道を通りかかったんだと。
「馬子さん、ちょっと止めておくれ」
「へえ。用足しかい」
旅人が、適当なマクワ瓜がねえかってさがしてると、かわいい瓜が見上げて言ったんだと。
「あっ、父ちゃんだ」
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 むかし、村のお寺の坊さんがなくなったんで、新しく京都から若い坊さんが来たんだと。
ところがじきに、この若い坊さんの元気が、なくなっちまったんだと。
「ありゃあ、脚気ってやつだな」
「脚気かい。あにか、いい薬はなかんべえか」
「あんでも、娘のあれえなめるといいって、聞いたことがあるけんどな。こらあ、堅物の和尚じゃ無理だんべえ」
 大人たちの噂話ィ陰で聞いてた、十五ンなる名主の娘のお花が、お寺へやってきて、
「和尚様。おれがいい薬持ってきたからなめてくんな」
そうゆって、着物をめくって足をおっぴろげたんで、若い和尚はたまげちまった。
「お花さん……わたしは仏に仕える身ですから……」
だけど、脚気に効くって聞いたんで、お花の出す薬ィなめたんだと。
和尚が村へ来たときから、一目ぼれだったお花も、うれしくなってどんどん薬ィ出してやったんだと。
それから和尚は、飯ももりもり食えるようになって、元気ンなったんだと。

 そんである晩、外からお花の部屋の戸を、トントンひっぱたく音がしたんで開けてみたら、
「和尚様。こんな時間にあんだんべえ」
「お花さん。また薬が欲しいんです」
「あれ、はあ、足のむくみもなくなったんだんべえ」
「あれから、別のところがむくんで困ってるんです。そこに薬を付けてください」
「あれ、どこだんべえ」
 和尚が、何も言わねえでふんどしィはずすと、そこだけがむくんでたんだと。
お花は、うれしがって、一番奥のほうにたまってる特効薬ゥ、出してやったんだと。
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 芳っぺの家じゃあ、山羊を何匹も飼ってたんだ。
朝は桶に乳を搾って、ビンに詰めた乳を頼まれた家に配って歩く。
その後は、山へ山羊たちを連れてって、草を食ってる間は、草の上で居眠りをしてたんだ。
「ゴツン!」っていう音で、目ェ開けてみたら、雌山羊が一匹、木の柵に頭ァ突っ込んで動けなくなってた。
立ち上がってそばへ行った芳っぺは、股引を下ろしてふんどしも横に外したんだと。
そのまま、雌山羊の尻を両手で抱え込んだ時、向こうの道を二人の男が歩いてきた。
「おーい、芳っぺー、何してんだあーい」
遊び仲間の久助と治助の声が、近づいてきたんで、芳っぺは雌山羊から離れながら言った。
「今なぁ。この山羊が頭ぁ突っ込んで、動けなくなってたんだ。お前たちもやってみるかい?」
「そらぁ、面白そうだなあ。やってみるべえ」
 久助と治助は、雌山羊の両脇に並ぶと、芳っぺのように股引を下ろしてふんどしを外した。
そんで、二人揃って木の柵に頭を突っ込んだんだと。
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