戯れ言(2000年11月)
煙草
 風邪をひいて先週末は寝込んだ。その後も調子が悪く、ぼんやりと過ごすことが多かった。病院に行き薬をもらったが、いまだに咳は止まらずだるさが残っている。
 こんな体調でも煙草がやめられずにいる。いつも吸っているヘビーな煙草ではなく、ニコチン・タールが少ない煙草に変えて咳き込みながら吸っている。頭では、もうこんな物は吸わずに生きたいと思いながら、気がつくと火をつけて、ちびちび吸い始める。
 軽い煙草の買い置きが無くなり、仕方なくヘビーな煙草に市販のフィルターをつけて吸う。ニコチンとタールを効果的に取り除くと謳う、スーパーマーケットのレジ付近に10個入り100円程度の値段が付けられ置いてある物である。これで吸うと、瞬く間に砂糖を焦がしたような、どろっとしたタールがフィルターにたまった。今まではこれが肺に直接入り込んでいたんだと思うと苦い気持ちになる。
 もうやめようと誓ったはずなのに、1時間もたたないうちに、またフィルターでタールを取って吸えばいいことを免罪符にして吸っている。懲りない自分に呆れながら。
2000年11月24日 19時56分41秒

風邪
 せっかくの日曜日だというのに風邪をひいて一日中寝込んでしまった。全身が重く、喉が痛む。
 仕事が忙しく、そろそろ倒れる頃か、と予感がしていたので、薬や食料などを買い込み、万全の体制で倒れた。
 ふだん気がつかず、倒れてみると分かるのは健康の有難みだ。風邪が治ったら温泉に行ってやろうとか、海に潜ってやろうとか、炭焼きに出かけようなど考えるが、ここは結局、布団の中。仕方なく睡眠をむさぼる。
 眠るのに飽きると、軽く食事をし、薬を飲んでまた眠る。しかし、最後には眠るのにも飽きる。枕元に置いてある本、トーベ・ヤンソンの「ムーミン・コミックス」を眺めては、北欧の妖精たちと同じように冒険の計画を練る。
 体調が悪いときほど、頭の中は行動的だということに気付き、反省しきりだ。
2000年11月20日 11時06分35秒

約束
 テレビ番組の制作の世界に入ったのは、3つの理由がある。一つは他の企業より収入がよいと聞いていたから。二つ目は職人気質が残っている職種だから。三つ目はある男との約束を果たすため。
 その約束とは、大学時代に友人の仁科貴と交わしたもので、いつか彼が映画監督になったら私が資金を集めるというものだ。
 卒業以来、全く連絡を取り合っていないが、「同じ道を歩んでさえいればいつか必ず再会する宿命にある」と言い合い別れた。
 あれから数年が経ち、私は番組作りと資金集めのノウハウをラジオ、新聞、テレビ局の大御所から仕込まれ、仕事は満足とは行かないまでもなんとか放送業界の一員に加えてもらえるようになった。
 そして、今、NHKの朝のドラマ「オードリー」を見、同じように頑張っている仁科の姿を見てやはり来たか、という思いを禁じ得ない。
 主人公に恋するうどん屋の息子で大部屋俳優役を見事に演じている。彼の祖父も父も映画に携わってきたから、太秦の撮影所を舞台にしたこのドラマへの抜擢は、何か因縁を感じる。
 電波の果ての束の間の再会だが、同じ道に向かって歩んでいる仲間を見てどこか安心している自分がいる。10年後、いや20年後だろうか、同じ仕事をする日を夢見て今日も過ごす。
2000年11月17日 04時41分34秒

ダンス・ダンス・ダンス!!
 メディアは煽る。現象、ブーム、ムーブメント・・・言葉を変えて、品を変えて煽る。広告費を稼いで生活をしていたとき、私自身もそうやって稼いできた。
 例えば、パソコン、例えば車、たとえば健康。消費者に広告し、買わせることが我々の仕事だった。「おしゃれに見える、他の人と違って見えますよ」と電波や雑誌のページを使って消費者にささやきかける。本体を買わせたら、今度はパーツだ、「他の人とは違った、あなただけの物をつくりませんか?」。煽る、煽る、煽る。
 ダイレクトな広告に消費者が反発し始めると、ドラマの中で人気の俳優に商品を使わせ、消費者の頭の中に刷り込ませる。
 買わせるだけ買わせて消費者の金が尽きるとさあ、今度はローン会社、消費者金融の出番だ。煽れ、煽れ、煽れ。
 自分の欲望のまま金を使ってくれる20代前半から30代半ばがターゲットだ。他人と同じ事が嫌いな人間ほど煽りやすい。独自の価値観を持っていると豪語する人間の方が踊りやすい。さあ、踊れ!死ぬまで踊れ!
 メディアには御注意を。ただで情報が得られると勘違いしやすい民放テレビには更に御注意。民放はただで放送してるのではなく、消費者を踊らせることを条件に広告主から巨額の広告費を得て放送しているのだから。
 今になって初めて言える、民放の仕事のお話。
 
2000年11月16日 19時12分07秒

ヒットナンバー
 ウォークマンを引っぱり出してきた。いまさら、カセットテープである。パーソナルな音楽デバイスとしてMDが全盛のこのご時世にである。
 使わないのも無駄だし、かといって引き取り手もいないようなので、寿命を迎えるまで使い込んでやろうと考えたのだ。
 CDやMDと比べて曲を飛ばして聞くことが面倒なので録音されている順番に聞いてゆくと、今まで入ってこなかった言葉が聞こえてくる。作詞者の言葉の選び方やつなげ方、アルバムの選曲の順番など作り手の意図を理解する楽しさが、カセットテープにはある。
 最近の作品ほど曲の山場が頭につけられ、「つかみ」で聞かせる曲が多いようだ。またアルバムの曲の並びは最近の作品はかつてほど繊細さはない。サーチが容易になったためだろう。
 時間を見て、ドライブ用の選曲集を作ろうと思う。MDに録音するよりも気を使う作業になるのを覚悟で、真剣に選曲してみようと思う。
2000年11月14日 16時33分01秒

メンテナンス
 バイクのスパークプラグを交換した。走っている途中でエンジンの吹け上がり方が弱くなったので、バイクに積んであるプラグレンチで予備のプラグと交換した。
 プラグには焼けた電極がこびりついており、まもなく電極自体が溶けて無くなりそうだった。1本300円程度の安い部品だが、これがないとバイクは走らない。いつ不調になってもいいように、予備は持ち歩くに限る。
 プラグを交換して出かけた先はホームセンターである。リビングの照明が暗くなってきたので交換用の蛍光灯を買いに行く途中だったのだ。買い物も済み家の照明を交換する。やはり蛍光灯がそろそろ寿命だった。
 秋が深まる中で、自分の中でも、何かひと区切りついたような気持ちになっている。
2000年11月12日 23時46分14秒

時速60キロの交錯
 夕暮れのR246でバイクを走らせる。信号で横に赤のSRXが並ぶ。黒のシングルライダースを着て赤一色のヘルメットをかぶった華奢な女性だ。
 20代半ばだろうか、ミラーが左にしかついていなかったり、グローブをせずに運転していたり危なっかしい所もあったが、走りは安定しており好感がもてた。
 彼女とはR246から表参道に入り、代々木公園まで特に気にしたわけでは無かったが、併走した。別れしな、彼女は左手を挙げて私に合図をし、曲がっていった。
 彼女はこれから何年バイクに乗り続け、そして私もいつまでバイクに乗り続けるのだろう。走り続けていれば、また出会えるだろうか。そんな事を考えていた。
 アスファルトには夜の気配が漂い始めていた。
2000年11月10日 17時49分56秒

エルフを拾う
 夜の街で小悪魔を拾う。行き場所がないという。ひとしきり泣きつかれたのか、ホットミルクを飲んで今は寝ている。
 こういう空気が冴えた夜は変な拾いものをする。余計なことに巻き込まれなければいいがという気持ちと、妙な巡り合わせを楽しむ気持ちが交錯する。
 明日になればどこかに飛んでゆくだろう。自分の力で飛ぶだけの羽は持っているようだ。
 朝になったらスープを作ってやろうと思う。
2000年11月09日 03時33分01秒

ホテル暮らし
 ここ数カ月間、月に3、4日、ホテル暮らしをしている。
 チェックインし、バスタブに湯を張り終わるのを待つ間、買ってきた飲み物を飲みながらラジオのスイッチを入れる。文庫本をバッグから出し、前回の続きに目を通す。ホテルの暗い照明の下で、あまり急がずに行間を追いながら読む。
 湯が張り終わる頃合をみて、持ってきた石鹸とタオルを使って入浴する。日常生活を感じさせないホテルの部屋へのたった一つの反抗が、この石鹸とタオルの持ち込みだ。
 風呂から出、アラームをセットし、ベッドのサイドテーブルの照明だけをつけてまた1時間読書をする。眠気を感じなくとも、その後は寝るようにする。
 目が覚めてホテルをでると、まだ薄暗い都会が広がっている。自動販売機の明かりが妙に眩しい。一瞬、自分がどこにいるのか分からない錯覚にとらわれながら、歩き始める。
 気のきいたサービスも、色気もないそんなホテル暮らしを最近は気に入りかけている。
2000年11月08日 01時49分20秒

革を羽織る
 私はバイク乗りということもあり、数着の革のジャケットやコートを持っている。
 寒さをしのぐという点では既に化学繊維にはかなわないが、丈夫さではこれ以上の素材はいまだにない。万が一の転倒の際を考えると、体を守るためにも、バイク乗りには革製品は必需品だ。
 数年前、ライダーウエア専門メーカーが作った4万円ほどの化繊のジャケットを着て転倒したことがある。それは防水、防寒に優れ、バイク乗りのために便利な機能が盛り込まれたジャケットで、実際、冬の寒さをものともしない保温性を持っていた。路面に流れていたオイルでタイヤが滑り、転倒すると、そのジャケットは見事に裂けた。ある程度の速度で転倒すると、アスファルトはヤスリとなって全身を削る。この時は幸い怪我は無かったが、ジーンズも裂けていた。その後、雨に弱く手入れも大変だが、結局、革に行き着いた。
 獣を着て、イグニッションをひねる。ギアをたたき込み、アクセルをひねる。背中で獣が雄叫びをあげる。・・・さあ、風を裂きに行くか。

 
2000年11月07日 02時58分19秒

夏の忘れ物
 久しぶりにLALKを買い、吸ってみた。
 冬の足音が聞こえる東京の下町を見おろしながらLALKの香気を楽しんでいると、どこからか風鈴の音がする。
 仕舞い忘れたのだろうか、ガラスと金属が出すその音色は、冷たい空気の中に響いている。
 涼を呼ぶはずの風鈴の音を、不思議と寒々しいとは思わなかった。おそらく、まだ夏が私の心の中のどこかに潜んでいるのだろう。
 数カ月したら、日本の真冬を抜け出し、南の島で数日間暮らそうと思う。焼けた砂と透明な海と、ギラついた太陽だけしか無い島で、ただ何もせず過ごそう・・・誰かの家の軒先で忘れられた風鈴が、夢を見る余裕を与えてくれた。
 LARKを一本吸い終わる間の話。
 
2000年11月05日 05時23分08秒

スカイウォーカー
 世間は三連休で、渋谷の勤務先周辺も若い人々で賑わっている。50ccのスクーターで街を走っていると、自然ばかりでなく、人々のファッションにも季節の移り変わりが感じられる。今年は、茶色やカーキが多いようだ。
 いつも通る道だが、250ccのバイクと50ccのスクーターでは見え方が違う。スクーターだと制限速度も時速30キロと遅く、操作は左右のブレーキレバーと右手のアクセルだけで気軽に運転できるため、視野に余裕が生まれる。店の看板や、人々の表情も運転しながら認識できる。
 両足をステップボードに投げ出して、空を飛ぶ感覚で街を走る。50ccの軽やかな排気音につられ、なにかいいことがありそうな予感を感じて。
2000年11月03日 19時57分39秒

秒針は何を刻むか
 人と会う予定がおよそ無い日は機械式の腕時計を左手に巻き付ける。今日もそんな日だ。
 1950年代に作られたものだろうか、彼は今も秒針を60秒で一周させている。現在の一般的な腕時計は秒針が1/60の目盛りを一つ一つ移動してゆくが、この時計の秒針は流れるように進んでゆく。つまり、秒と秒との間に区切りを置かない。
 彼はぜんまいを巻いてやると動き出す。活動は持つ人間に委ねられている。怠惰であれば怠惰なりに彼は働かないし、几帳面に接していれば、それに応えてよく働く。
 左腕に視線をやり、彼に何かを教えられるような気持ちになる。
 さて、襟を正して、雨の街に出るとしよう。
2000年11月02日 16時30分49秒

不夜城にて
 渋谷の円山町のまっただ中にお好み焼き屋がある。店の名は「たるや」という。
 元は居酒屋だったとのことで、焼酎、日本酒の類を見ると、各地の銘酒から選び抜かれた酒がラインナップされていた。
 周囲はネオンと、女と、それに群がる男達の街・・・。不夜城に浮かんだ島にいるかのような錯覚の中、同僚の話に耳を傾ける。在り来たりの愚痴もあり、得意話有り、子どもの話有り。
 客の層もいろいろで、インターネットで店を探してきた若い女の子2人組もいれば、訳有り風のカップル、店の評判を聞きつけてきた食通などなど。店内は酒をめぐる人々の博物館のようでもある。
 若さに疲れた大人の方、渋谷の街を笑い飛ばしながら、杯を傾けてみてはいかが?

「たるや」
電話03-3461-3325
渋谷区道玄坂2-20-6
2000年11月02日 16時02分28秒

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