戯れ言

八百屋
 週末、久しぶりにプールで泳いだ帰り道、近所の商店街を通った。
 プールから自宅まで歩くのに、公園沿いを通るか商店街を抜けるか二通りの選択がある。夏の暑い昼下がりに敢えて人の多い商店街を通ったのは、行きに公園沿いを歩いたからに他ならない。行きと帰りに同じ道を通ると損した気分になる。貧乏性の気質に加え、「せっかくプールまで来たのだから、ついでに街の活気にでもふれてみるか!」などと、無駄に張り切っている自分がいた。
 まず、目に入ったのは自転車屋で、段ボールで張り紙がしてあった。「釣り銭が不足しておりますので1万円札でのお支払いはご遠慮願います」ついでなので自転車を買おうかと思っていたのだが、どの自転車も1万7千円以上で手元には17枚も千円札はない。涙を飲んで自転車購入を断念した。
 自転車屋の数軒隣が本屋で、自転車は買えなかったが代わりに雑誌を数冊買おうとドアを開けようとして手を止めた。店主のおじいさんがスヤスヤ気持ちよさそうに寝ているではないか。外の気温は37度以上に上がっているが、客がいない店内はエアコンが程良く効き、刺すような日差しもおじいさんにとっては店内の冷えすぎを抑える「優しいお天道様」なのだろう。思わず、手をひっこめて家に向けて歩き出した。
 しかし暑い。暑すぎる。そうだ、こういう時こそ、かえって夏を満喫すればいいんだ。それにはスイカだ。小玉スイカだと思い、先に見える八百屋に照準を合わせた。店のおばさんと客のおばさんがおつりのやり取りをしているのが見える。誰もいないと買いにくいが、今なら買いやすい。だんだん大きくなる八百屋の店先には確かに「小玉スイカ。オイシイヨ750円」という張り紙と共にスイカがあった。が、買い物が終わったら帰ればいいのに客おばさんと店おばさんが井戸端会議を始めている。ああ、買いにくい。もし、私がスイカを買おうものなら会話を止めさせてしまうことになる。そうなると私が立ち去った後「あれどこまで話したっけ?まあいいわ、話変わるけど、あそこの奥さん・・・」などと二人の話題は別な方向に進み、さらに拡大発展して終わらなくなってしまう。客おばさんの家では「たまの休日、夕飯はあっさりとざるそばだな。じゃあお前、長葱かってこい」なんて言った亭主が待っているはずだ。しかし、客おばさんは噂話に夢中で亭主のことなんか忘れている。買い物かごの中に入った長葱はいつまでたっても届かない。そうなるのも気の毒なのでこの店も素通りすることにした。
 結局、商店街を歩いたのに何も買わずに家に着いた。しかしながら、この近所にはおつりが足りずに困ることもなく、昼寝で鋭気をやしない、薬味のきいたざるそばをすすっている男たちがいるはずだ。その人たちの平安は全て私が守ったのだと思うことにして、ベランダから地上を見おろした。なんとなくお忍びで街の様子を見に行った時代劇のお殿さまの気持ちが分かったような気がした。
2001年07月15日 07時42分10秒

マグカップ
 気が着くと食器類がやけに増えている。あまりこだわらない方だが、いつの間にか李朝やら、作家物やらの陶器が食器棚をしめ、安価なタンブラーやグラスやらは肩身が狭そうだ。
 そのなかでも頑張っているのが、マグカップ。コーヒーや麦茶を飲んだり、インスタントのスープを作ったり、溶き卵を作る際の器になったり大活躍だ。
 どこにでも売っている、容積が200ccのマグカップなので便利だし、壊れても悔しくならないのがいい。出番も多いので食器棚の手前にいつもあり、取り出しやすいからまた使う。
 人間でもこういう人がいるなぁ、と韓国製のとうもろこし茶を飲みながら思った。華はないけど、気さくで人あたりがいい。目立たないのにいつも側にいる。
 そんなことを思っていたら、マグカップへの愛しさが増して、いつもより丁寧に洗ってあげた。
 ・・・真夜中のキッチンにて・・・
2001年07月15日 02時47分08秒

夏のシャツを1枚
 冬服をしまい込んだのは2週間前。クリーニングをかけたり、手入れをしてクローゼットや衣類ケースに整理するのに手こずっていたら、もう夏になってしまいました。
 同時に、去年お世話になった夏服たちを眠りから覚ましてあげます。ハンガーに吊して風をあててあげたり、必要な物は洗濯したりしながら、この夏はこの服を着て、どこへ行こうかなどと想像をめぐらせます。
 そうして、ひとつひとつ丁寧に見てゆくと、今年はシャツを1枚買う必要が有ることが分かりました。気に入っていたシャツをずっと着ていることが多いので、日に焼けてしまった上に、すり切れていたので、冬支度をしたときに残念だけど捨ててしまったのです。
 以前から気になっていた東京・自由が丘のフェアトレードの店にシャツを求めに行くことにしました。
 途上国には、織物やアクセサリーの製造など、高度な生産力を持ちながらも、不当に安い値段で買いたたかれてしまって、労働が報われないばかりでなく、生活が苦しくなってその技術の伝承が危ぶまれている人々がいます。そうした人々の作った物を、適正な価格で買い求める運動をフェアトレードといいます。
 自由が丘の「PEOPLE TREE」には、世界の様々な地域で作られた服や食品、雑貨などが並んでいます。全てがフェアトレードで買い付けられてきたものですので、ここで買い物をすれば多少でも誰かの役に立ちます。誰かの役に立ちたいと思わなくても、さまざまな民族の知恵で作られた美しいデザインの商品が並んでいて、見ていて楽しくなりました。
 男性用の服のコーナーに茶色の、刺繍で沢山の縦縞模様が入っているシャツがありました。ポロシャツのように首もとにボタンが3個ついていて、素材はコットンです。他を探せば、日本製にも似たようなデザインはあるのでしょうが、あってもプリント柄で、そのシャツの刺繍のように手間暇はかけられていません。迷わず買うことにしました。他にも、草木染のバンダナを2枚買い求めました。
 家に帰ると、早速、新品のシャツに着替えました。エリを立ててみたりねせて見たり。ボタンのかけ方を1つにしてみたり、2つにしてみたりしながら、しばらくの間鏡の前で過ごして、すっかり嬉しくなりました。
 新しいシャツを着て、再び家を飛び出すと、先ほどまで苦痛に感じていた暑さが、いくぶん和らいで感じました。そして、このシャツと過ごす夏の休日が、きっと充実したものになるという予感を感じました。

<参考>
http://www.yk.rim.or.jp/~ngo/ft/aboutft.htm

http://www.globalvillage.or.jp/top.htm
2001年07月07日 03時38分30秒

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