現在 8 栄養素を掲載
平成11年 2月12日
「……死ぬか生きるか、命のやりとりをする様な維新の志士の如き烈しい精神で文学をやって見たい」
この言葉は明治の文豪、夏目漱石(1867-1916)が鈴木三重吉(1882-1936)に宛てた書簡に記した言葉です。
生業としての小説家が氾濫する現代では考えられないような激しい一言ではないでしょうか。
創作に携わる者として、いつもこころの片隅にこの言葉を記しておきたいものです。
3月10日
10分間でコント作りに挑戦
毎週金曜日深夜 25:45
からCX系にて放送中の番組「ロクタロー」(地域により放送日時が異なる場合があります)のワンコーナーで、コメディー集団「ジョビジョバ」がその日のゲストが出したふたつのお題をもとにして、10分間でショートコントを作ってしまうというものです。
例えば、3月5日の放送では「お水(水商売のほうです)」と「代打」というたったそれだけの言葉からひとつのショートコントを作り上げてしまいました。
完成したコントの出来もさるものですが、私は相談をしている際のメンバーの真剣な目に強く惹かれました。
完成した作品の出来というのはもちろん重要ですが、それを作り上げる過程。そこにかたむける情熱というものをあらためて教えられたような気がしました。
7月2日
この感覚があるからこそ小説を読むのはやめられない。
わたしは小説を読んでいて数年に一度、「やられた」と感じる瞬間があります。
それは引き込まれるほど面白い本に出会い、最後の一行を読み終わったときにおとずれます。
先日、ひさびさにその感覚を味わいました。
そのとき手にしていたのは、
『秘密』(文藝春秋) 著者・東野圭吾 1905円(税別)
初版が平成10年9月10日と一年近く前に出版された小説なのですが、たまたま時間つぶしの立ち読みをしているときに手に取ったのがこの本です。
オビの情報によれば、夏に映画化されるとか。それなら近いうちに文庫化されるでしょうから、それを待てばいいようなものですが、すぐにでも読みたいという欲求をおさえられず、予定外の出費をしてしまいました。
同じ著者の『パラレルワールド・ラブストーリー』(こちらは文庫本であります)でも「やられ」てしまったので、東野圭吾さんにはわたし、二連敗中なのです。
平成12年 5月12日
夢をかなえるためには、まず歩き出すことだ。
ひとには、誰でもやりたいことやなりたいものといった何かしらの夢があるはずです。
でも、それを現実のものにするためには、まず行動することしかないと、最近実感しています。
夢のために歩き出し、そして歩き続ける気力を保つことのできる人間こそ、とても尊いのではないでしょうか。
歩みの速度は問題ではありません。
ただ歩み続けること。
最近、なかだるみしている自分自身をかえりみて、上の一文を胸に刻みたいと考えます。
12月30日
古書店に置かれた過去
もうずいぶん前のことになるが、友人宅を尋ねた際に駅前の大型古書店である本を手に入れた。
『書いて稼ぐ』 鳩よ!編集部 編 ISDN 4-8387-1231-6
内容は書評家やイラストレーター、小説家といった専業兼業を問わず、いわゆる自分が作ったもので原稿料や印税を得ている方々のインタビュー集である。
テーマも「いかにして今の仕事を得たか」や「どうしたらそうなれるか」等々の、この手の企画ではすでに見なれたものだ。
心に響く言葉の一つや二つなかったわけではないが、今回私の創作脳を刺激したのは、残念ながらこの本そのものではない。
普通、私のような変わり者を除けば、この類の本を買おうと思うのは、何らかの形で原稿料生活者になりたいと思っている人ではないだろうか。
そこでこの文の冒頭に目を移していただきたい。
私はこの本を、古書店で購入した、と記したはずだ。
つまりかつては「何か」を志した者がこの本を買い、そして手放したということだ。
そこには何らかの事情があったのだろう。
本に書かれたことを自分のものとし、目的を成し得たか、あるいは志し半ばにして筆を折ってしまったのか……。
私はまだこの本を読み終わっていないが、続きを読むとき、頁のあいまに挟まれた過去を思うと、自然に背筋をただしてしまうのではないだろうか。
平成13年 1月1日
指先から得られるインスピレーション
みなさんは小説にかぎらず文章を書くとき、どんな道具を使われているのでしょうか。
仕事ではパソコンやワープロ、手紙などの私的文書は手書き、というスタイルが一般的なのではないでしょうか。
私自身を振り返ってみれば、やはり仕事はパソコン、手紙やメモは手書きが主流という状態です。
いまでこそこれが当たり前になっていますが、私もはじめは原稿用紙に鉛筆と消しゴムで小説を書いていました。
生まれて初めて応募した賞への原稿も原稿用紙です。
いまはもうパソコンに慣れてしまったため、すべてをあの頃の環境に戻すのは不可能ですが、いまでも刺激を得るために時々原稿用紙を使って書くことがあります。
これは多分に私の思いこみかとも思うのですが私の場合、キーボードを使っての執筆よりも、手書き執筆の方が創作脳のエンジンのかかりが速いような気がします。
軽快なキータッチ音もよいのですが、どうやら私にとっては筆記具が紙を叩き、擦る音。それを耳と指先から感じることが良い刺激になっているようです。
そのため、私にとって「手書き=原稿用紙」とは、思うように書けないときに還る場所、いわば原点ともいえるものなのです。
一時期、その原点に敬意はらい、自分に合った紙質を探して幾種類もの原稿用紙を買いあさったこともありました。
いまでもその頃の名残が、部屋のそこかしこに残っています。
みなさんもときには手書きに戻ってみてはいかがでしょうか。
少なくとも忘れてしまった漢字を思い出す役には立つはずですよ。
平成14年 1月4日
こころの3℃
平成14年最初にお届けする頭のえーよーそは、小説「異人たちとの夏」を取り上げたいと思います。
小説読みならば一度は手にしたことがあるであろうこの作品。じつは私、今回が初読なのです。
もう何年も前に古本屋で文庫版を買っておきながら、例によって書棚の肥やし状態にしたままだったのを、先日の引越しで発掘しました。
いやぁ、してみるもんだなぁ、引越し。
この作品が映画化されていたのは知っていたので、たぶんそういう映像化しても大衆受けするような内容なのだろう、と私たかをくくっていました。
はっきりいって久しぶりに読まされた感じです。
読み進むうち、胸の中の温度が3℃幅で上下させられます。
物語は離婚を経験した直後の47歳の脚本家が、鬱々とした毎日を過ごす中、ある日12歳のときに死別したはずの両親にそっくりな夫婦に出会い……。というような、じつにファンタジックな内容。
はい、ここが+3℃の部分。
じゃあ、−3℃はというと……。
ファンタジックではないその部分は、ぜひお手にとって確かめてください。
脚本家である山田太一氏の、目の前にその場の情景が浮かび、音まで聞こえてきそうな描写が読めるだけでも、その価値はありますよ。
新潮文庫
『異人たちとの夏』 著・山田太一 ISBN 4-10-101816-2
平成16年 1月12日
万人引力の法則
このHPを以前より見てくださっているかたには「いまさら」な感もありますが、じつは僕は小説の読み書きと同じくらい、いやそれ以上と言えるくらいアニメを見るのが大好きです。
さすがにここ最近の風潮である「キャラ萌え」には正直ついていけないところもありますが、ここ数年のテレビ作品も観ています。
先日も正月という時期からか、スペシャルと銘打たれた1本を観ていました。
『はじめの一歩 TVスペシャル 〜Champion Road〜(チャンピオンロード)』
じつはこの作品、以前昼間の時間帯に一度放送していたのですが、そのときは残念ながら見逃してしまい、後半部分、それも終わり間際を少し観ただけでした。
今回はビデオ予約して、きっちり頭から堪能させていただきました。
感想は「すごい」の一言。
思わず息を呑み、身を乗り出してしまいました。
ストーリー自体の出来はもちろんですが、僕の目を惹いたのはその演出技法です。
「音」「動き」「カメラアングル」すべてが僕がアニメに対して抱いていた、表現の限界を打ち砕いてくれました。
とくに「音」の使い方には脱帽もの。リング上で闘うボクサーの筋肉の軋みまでもが、ダイレクトに伝わってきます。
ちなみにこの作品、原作を知らない一見様でも大丈夫です。
登場人物の役どころなどが、観ているうちに、おしきせでなくごく自然に理解できるようなつくりになっています。ビデオレンタルもされているようですので、ぜひ一度ご覧ください。
そういえばこの敷居の低さというか、居心地の良さはどこかで感じた覚えが……。
……そうか、寅さんか……。