すべての高校生に。

春 風

小笠原 月山

 

私は晴れて高校生になったのだが、一番最初の授業の日から今日で

続けて4日連続で遅刻してる。

家から学校までは自転車で40分くらいである。

家から学校までは、ずっとゆるやかな坂である。

ゆるやかな坂と言うのは急な坂よりも嫌なものである。

急な坂は、登れば次ぎはくだりだが、ゆるやかな坂と言うのはどこまでいっても、

ゆるやかな坂なのである。

これはいわゆるラディゲが言ってる様な状態であった。

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猫の尻尾の先に一生涯くっつけられているコルクの栓みたいなものだった。

猫にとっては、おそらく、1ヶ月間鍋をくっつけられているほうが望ましいに違いない。

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僕の通学路にはもう一つ不幸なものがあった。

五葉おろしと呼ばれる、三月の終わりから4月の初めに吹く、春一番である。

この五葉おろしは不幸にも、学校に向かうには逆風なのであります。

ゆるやかなながいながい坂と五葉おろしの逆風とは、四十分で行ける学校を五十分にも

1時間にもしてしまい、そのために、入学そうそう私は四日連続して遅刻してしまい、

クラス中の笑いものになってしまい、担任の先生もひどく私を軽蔑してるのであった。

五日目の朝も、空は晴れていかにも春。

十六歳の青春にぴったり合った春なのだが、昨日同様、強い五葉おろしである。

私は私の愛車であるママチャリのワニ1号の前のカゴに教科書の入ったバック、

次に私の一番の楽しみである、まだあたかい弁当袋と入れて、

今日こそは何としても遅刻しない様に、力強く自転車を漕ぎだした。

 

今日は昨日よりも風が弱いみたいだし

今日はだいじょうぶだ。

 

家を出て五分くらいたつと、風は昨日、同様強く、吹いているのだった。

自転車を力強くコグのであるけれども歩くほどしか進まない。

百メートル先の方に、二,三人、学生がいるが、彼らとの距離もしだいに離れていく。

家を出て三十分くらい。

通学路には僕の他だれもいない。

さっき僕の前を走っていた二,三人の人が最後だったみたいだ。

僕は死にもの狂いで自転車を漕ぐこぐコグ。

 それでも、前の彼らとの距離は離れてとうとう見えなくなる。

体は汗でびっしょりになる。

また、風がいじわるく、いきなり強く吹く。

 

僕は考えた。

向きを帰え、家に向かったらどんなに楽だろう。

風は順風もいいところだし、ゆるいと言っても家まではずっと坂だ。

一回もごがなくても進んでいくにちがいない。

下り坂と順風な春風、これぞ十六歳の青春にぴったりではないか。

 

 

 

おもいきって向きをかえよう。

 

 

 

 

遅刻してみんなに笑われることも、

おまえの様にだらしない新入生はみたこともないと先生に言われることもない。

家に帰ろう。

私は向きをかえたら、まさに順風、であったと言うまに一回もペダルを踏まなくても、

いままでの二倍のスピードになった。

私はもっと風を利用するために背筋をピンと伸ばし、

学生服のボタンを全部はずした。

これは学生服を帆のかわりにするためだったが、帆のかわりにはならなかった。

けれども汗をかいた体には気持ちよかった。

走れば走るほどスピードはましていった。

私は思いっきり両足をひろげた。

 

 

 

スピードは、恐い程でた。

 

 

 

 

 

ペダルを踏んでみたけれども、スピードが出ているので空回りをした。

家には二十分もしないでついてしまった。

家に帰ってまだあたかい弁当を母と一緒に「ルック・ルックこんにちは」を

見ながら食べた。

母はおもいっきり理解のある人で、あんなバカな先生に教えてもらうよりは

家で勉強をしてるほうがいいわよといって、ちっとも僕をおこらなかった。

 

僕が弁当を食べていると、母も自分で焼きそば作って食べはじめた。

 

 

 

「牛乳と焼きそばって本当に合うのよね。」

 

 

といいながら、焼きそば食べながら牛乳を飲んでいたので、

私も、一口焼きそばを食べて牛乳を飲んだら、

本当に焼きそばと牛乳は合うのであった。