「ラブかよ。」

負けたので、
中央の神様に「ごめん」と誤って
皆さんにも「ごめん」と謝って、謝罪して、土下座したら
「そうやって一番てっぺんの城から、いきなりワープして大地にはいつくばるのはお前の悪い癖だ!」
と、町長さんに指摘された。
まったくその通りなのだ。これは長年卑怯街道を渡り歩いてきた俺の処世術であり、ウル技でもあった。
親は騙せても他人は騙せんと言うしな、まいった。
そのまま黙って地面を見てたら、
一匹の蟻んこがかっぱえびせんのカス(螺旋構造で分かった)を運んでいた。
あのかっぱえびせんは、俺がずっと昔、まだ京都にいた頃、森下公園のすべり台の上から
ゾフィーになりすましながらバラまいた、いつかのポテトチップスだ。(かっぱえびせんだけど)
涙が出てきた。
ふと、見上げてみると辺りにいた皆さんは、俺が地面を見ながら泣いたりしたので
「あーあ、シラけたな。」というふうなニュアンスで、ちりぢりになって帰りだした。
土管のところで町長さんが振りかえって、俺を見ていた。
がんばれよ、と言ってるふうに感じた。
地面を見るとさっきの蟻がカスカス音をたてて、かっぱえびせんを食っていた。
「えっ!?蟻が菓子食ってる音が聞こえる!?ラリってんのか、俺!?」
次の一瞬、立ちこめていた雲共が一挙に東と西にちぎれ、レーザーのような光が、丘の上を指した。
行ってみよう。あの丘の上へ。
足取りは軽かった。
まるで生まれたての産毛のように、
白(ホワイトホール)から出たばかりの純粋なスピリッツが決まってそう振舞うように
ああ、引力が苦にならない。
そう、時間の制限を感じない。
陽射しの1つ1つの粒子が、俺の肌から、毛穴から進入して
俺の体の細胞の1つ1つをリニューアルさせていく。
細胞は高速で回転し、やがてそれは波紋のように広がって体中の隅々へとつたわっていく。
共鳴音。ビッグバンより遥か太古の音。
音がはじめてこの世に現われた時の、あの周波数! 軽快なる肉体の調べ。
どこからか風が吹いて、ボクの頬を撫でる。サンキュ。
丘の上にはあの娘がいた。
「ゴメン、待たせて」
ボクは少し恥ずかしかった。
あの娘はボクにビンタしてから、
溢れる涙そのままで、ボクに抱きついてきた。
「ラブかよ。」

素敵―
太陽が俺に言う。「ラブだよ、それ。」

「ああ。」
ボクは黙ったまんま、彼女を抱きしめた。

Copyright 馬野 みき

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