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准看護婦問題調査検討会報告書
調査結果の概要とその考察
平成8年12月20日
准看護婦問題調査検討会 座長:藤敦夫 (地域振興整備公団総裁)
2 准看護婦問題調査結果の概要とその考察
○准看護婦養成所の入学に際し、生徒が医療機関で働くことが原則となっている養成所は全体の3分の2を占めている。生徒は就労と学習との二重生活のため、過労や自由時間の不足などの訴えが多く、学習に集中できない様子がうかがわれる。教育の効果を上げるためにも、生徒が学習に専念できる環境整備に努め、就労を望まない生徒にまで医療機関への勤務を義務付けることは適切でない。また、准看護婦養成所の入学条件として、特定の医療機関勤務を求めていることは、実質的に1年を超える雇用の強制となりかねず、労働基準法上間題となるおそれがあり、直ちに改善すべきである。
○医療機関に勤務している准看護婦養成所生徒の勤務時間は、養成所の平均的な授業時間である週20時間以上の者が86%、そのうち、週40時間以上の者も17%(内、週50時間以上は4.2%)にのぼっている。また、給与は月8万円未満が31%あり、時給でも600円未満が18%あるなど、労働基準法や最低賃金法に抵触する状況も示唆される結果であった。准看護婦養成所生徒の中には夜勤や宿直を行っている者もおり、看護婦・士や准看護婦・士のいない中で夜勤を行うという状況もみられた。
○准看護婦要請所生徒が医療機関での勤務中に行っている業務の中には、血圧測定、浣腸、採血、注射、導尿、点滴などがあり、看護婦・士等の資格を持たない者が行った場合には保健婦助産婦看護婦法に違反すると考えられるものが含まれていた。これらは即刻なくすように指導すべきであり、准看護婦養成所生徒の雇用主、管理者等の職能意識や管理能力の向上・改善を図るべきであると考えられた。
○准看護婦養成所生徒の4割を超える者が勤務先の医療機関から奨学金を受けている。全体の17%の者は、奨学金の受け取りが義務付けられている。また、奨学金の返済条件等の説明を受けなかったり、説明が不十分な実態も明らかとなった。こうした状態が返済にまつわるトラブルを生んでいると考えられる。奨学金制度は生徒への経済的な支援として重要なものであることは論をまたないが、これは強制されるものではなく、返済条件等についても十分な説明がなされなければならない。また、生徒が勤務する医療機関からの奨学金の貸与は、雇用契約と混同しやすいため、雇用契約と奨学金契約とを明確に分離する必要がある。
3 准看護婦養成所の運営について直ちに改善が必要な事項
○准看護婦問題調査結果を踏まえると、准看護婦養成に付随する問題点の少なからぬものが、准看護婦養成所生徒が働くことを条件とされ、学んでいる実態に起因しているように思われる。看護職員は、人の生命や健康に直接関わる業務を担うものであり、その養成の過程は、本来、しっかりと看護の知識や技術を身につける教育の過程として位置付けられるべきものである。しかしながら、調査結果をみると、准看護婦養成所での就学と医療機関での勤務の両立に悩む生徒の姿が浮き彫りにされている。
○このような観点から、医療機関での勤務を准看護婦養成所への入学の条件とすることは、就労を望まない生徒にまで勤務を強いることになり、教育機関としては適切ではなく、また、ケースによっては労働法現に抵触するおそれもある。したがって、医療機関での勤務を義務位けることを直ちに禁止するための法令上の整備が講じられるべきである。
○また、医療機関が生徒に奨学金を貸与する場合には、純粋に経済的支援のためのものであるべきであり、将来の雇用の拘束につながるものであってはならない。このため、医療機関において、次のような取り組みがなされるべきである。
1.奨学金の受給を准看護婦養成所生徒に義務付けることは、将来の勤務の拘束につながるおそれがあるので行わないこととし、奨学金の受給は生徒の自由な選択に委ねること。
2.奨学金の受給者に未成年者が多いことに鑑み、奨学金契約の内容については望ましい標準様式を定め、生徒、保護者に対し、文書により十分な説明を行うとともに、第三者である学校教師等が契約書に副署する等、生徒の契約に参画する措置を講ずること。
3.雇用契約は奨学金貸与契約と峻別すること。なお当然のことながら労働法親に適合したものとすること。
4.奨学金の返還については、公的な奨学金と同様に違約金や損害賠償的な意味合いを持ってはならず、返還額は貸与額を基本としたものとすること。
○さらに、准看護婦養成所生徒が、看護補助者として医療機関で勤務している場合に、看護婦・士等の資格がなければ行ってはならない行為を業務として行っている点については、論をまつまでもなく、資格制度の根幹にかかわる大きな問題である。この問題については、厚生省及び関係団体からそれぞれ既に指導が行われているところであるが、医療監視等の機会に、無資格者による医療行為が行われないよう、引き続き、指導・監督を徹底していくべきである。
准看護婦養成所生徒の勤務状況
(96年調査)
1.養成所の入学に当たって、医療機関への勤務が原則とされているか。
(養成所長への調査)
原則である 64・8%
原則でない 34・7%
その他 0・5%
2.准看生徒の1週間の勤務時間(准看生徒450人の回答)
20時間未満 14.0%
20〜30時間
38.7%
30〜40時間 30.0%
40〜50時間 13.1%
50時間以上 4.2%
3.夜勤回数(准看生徒、平成8年1月16日から1ヶ月間)
なし 74.7%
1−2回 4.9%
3−4回 8.9%
5−6回 5.3%
7−8回 3.6%
その他
1.3%
無回答
1.3%
4.准看護婦生徒の1ヶ月の手取り給料
回答者 准看生徒(448人) 病院の長(97人) 診療所の長(26人)
8万円未満 31.1% 18.5% 23.0%
8〜11万円 43.8% 32.0% 23.0%
11万円以上 23.9% 39.3% 34.6%
5.准看生徒の時給(時給のわかる者120人)
時給 准看生徒(%)
500円以下 7.5%
500円〜600円
10.8%
600円〜700円
25.0%
700円〜800円
25.0%
800円〜900円 15.0%
900円〜1000円 5.0%
1000円〜1100円 7.5%
1100円〜1200円 0.8%
1200円以上
3.4%
6.勤務と学校の両立についての問題は?
状況 准看生徒(450人) 2年課程学生(359人)
過労状態にある 48.7% 49.3%
勉強に身が入らない 36.4% 29.0%
勤務により休むことも
3.8% 10.9%
予習復習の時間なし 36.0% 35.4%
自由時間の不足 54.2% 52.4%
体調を崩しやすい 39.6% 40.7%
その他 5.8% 4.7%
問題ない
20.0% 8.4%
7、奨学金の実態 (准看生徒518人回答)
(1)奨学金の受け取りについて
奨学金を受け取ることが決められている 16.7%
奨学金を受け取るかどうかは自由
58.3%
よく分からない 24.6%
その他 0.4%
(2)奨学金の受領の有無とその種類
国・県・市町村・育英会 18.4%
勤務先の医療機関
44.0%
地区医師会&養成所など 1.4%
受けていない
45.7%
(3)奨学金返還条件の説明
十分な説明を受けて納得した 56.4%
説明を受けたが理解できなかった 13.2%
十分な説明を受けなかった 21.1%
説明を受けなかった 5.3%
その他
1.8%
無回答 2.2%
(4)奨学金返済の条件
全額金銭で返済 1.3%
奨学金を出した医療機関で一定期間勤務すれば全額免除 77.5%
奨学金を出した医療機関で一定期間勤務すれば一部免除 0.9%
金銭による返済か一定期間勤務後免除を自由に選べる 14.1%
わからない 4.8%
その他 1.3%
改正された養成所指定規則
○文部省・厚生省令第1号
保健婦助産婦看護婦法(昭和23年法律第203号)第28条の規定に基づき保健婦助産婦看護婦学校養成所指定規則の一部を改正する省令を次のように定める。
平成9年3月24日
文部大臣 小杉 隆
厚生大臣 小泉純一郎
保健婦助産婦看護婦学校養成所指定規則の一部を改正する省令
保健婦助産婦看護婦学校養成所指定規則(昭和26年文部省厚生省令第1号)の一部を次のようにに改正する。
第5条、第6条及び第7条第1項に次の1号を加える。
12 特定の医療機関に勤務する、または勤務していることを入学、または入所の条件とするなど学生若しくは生徒、またはこれになろうとする者が特定の医療機関に勤務しない、または勤務していないことを理由に不利益な取扱いをしないこと。
第7条第2項に次の1号を加える。
13 特定の医療機関に勤務する、または勤務していることを入学または入所の条件とするなど学生若しくは生徒、またはこれになろうとする者が特定の医療機関に勤務しない、または勤務していないことを理由に不利益な取扱いをしないこと。
第8条第1号中「入学」の下に「または入所」を加え、8条に次の1号を加える。
13 特定の医療機関に勤務する、または勤務していることを入学または入所の条件とするなど生徒またはこれになろうとする者が特定の医療機関に勤務しない、または勤務していないことを理由に不利益な取扱いをしないこと。
附則
この省令は、平成9年4月1日から施行する。
新たに禁止されるのは、このような取扱い (事例)
特定の医療機関に勤務しない又はしていないことを理由に不利益な取扱いをしていると考えられる例として、以下のものがあげらている。
(平成9年3月24日付け、文部省・厚生省関連局長通達)
禁止される事例
(a)入学・入所条件の不利益取扱いの例
1)医療機関で勤務する者であることを、学則等により入学の条件としたり、募集
要項等により受験資格としていること
2)医療機関の関係者を保証人とした身元保証書の提出を義務づけること
3)入学に際し、医療機関に勤務する旨の誓約書等の提出を義務づけること
4)入学に際し、特定の医療機関に勤務することを貸与条件とするなどにより特定
の医療機関での勤務が強制されるような奨学金の受給を義務付けること
5)すべての入学者に関して条件を付していないが、推薦入学者等特定の者のみ
に上記のことを義務づけていること
(b)その他の不利益な取扱いの例
6)医療機関に勤務しない者に対して、卒業証明書等の証明書類等を発行しない
こと
7)医療機関に勤務しない者に対して、実習を受けさせない、実習等で特別の金
銭的負担を課すなどの取扱いをすること
8)学寮等の利用を認めないこと
9)他の者に比べて余分な時間の実習の履修の義務を課すこと
10)保証金など特別の金銭的負担を課すこと
11)受験料、授業料等で差を設けることにより、特定の医療機関への勤務を希望
しない学生又は生徒に対して、勤務を義務づけようとすること
12)出願手続、選考方法等で差を設けることにより、特定の医療機関への勤務を
希望しない学生又は生徒に対して、勤務を義務づけようとすること
(c)その他
13)医療機関に勤務している者について、その勤務を実習とみなすことによって、保
健婦助産婦看護婦学校養成所指定規則に定められた臨地実習等の一部を免
除することは、そもそも認められないものであること。
参考:http://www.campus.ne.jp/~labor/sonota/jyunkango.html
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