准看護婦問題−医師会の対応は?


厚生省・健康政策局長は日本医師会・坪井会長に
対し『確認書』を提出しており、准看護婦制度の存
続と准看護婦養成学校の存続を(事実上)約束し
ている。 97・12・15


准看護婦40万人の「進路」開けず
医師会が抵抗、移行教育うやむや 朝日新聞 00・11・05

看護婦との差別待遇などが問題になっている40万人の准看護婦の立場が、宙に浮いている。厚生省は1996年、事実上、准看護婦の養成をやめる方針を打ち出した。しかし、
合意していたはずの日本医師会が「准看護婦の役割は終わっていない」と立場を転換し、話は振り出しに戻った。・・・同じ職場に看護婦と准看護婦の2つの資格がある二重構造を解消しようと、厚生省は95年、日本医師会、日本看護協会などを集めた「准看護婦問題調査検討会」をつくった。一貫して准看養成存続を求めてきた医師会も合意し、翌96年12月の報告書には「看護婦養成制度の統合に努める」という画期的な一文が盛り込まれた。ところが、合意したはずの医師会は97年9月「准看制度を存続させる」との報告書をまとめた。准看に依存している地域もあり、地域医療を崩壊させるという従来の医師会の主張を繰り返した。当時、厚生省の看護課長だった久常節子・現慶応大教授は「安い労働力を失いたくないのだろうが、議論の結果を覆され、怒りがわきました」と振り返る。

本当に日本医師会は「合意していた」のだろうか?日本医師会Webサイトの准看護婦養成問題についてにはこう書いている。


看護婦養成問題に対する日本医師会の見解
http://www.med.or.jp/nichikara/junkango.html

96(H08)
年12月20日に開かれた厚生省「准看護婦問題調査検討会」において、「准看護婦問題調査検討会報告書」が一応の結論として承認されました。その後の本報告書に対する一部マスコミの取り上げ方については偏りがあり、特に日本医師会並びに医療関係団体の見解が正しく伝えられていないことは、誠に遺憾であります。報告書では、「21世紀初頭の早い段階を目途に、看護婦養成制度の統合に努めることを提言」し、「国において広く関係者と十分な協議を重ねながら具体的な検討を行うべきである」とされているのであり、報告書中には、准看護婦制度を廃止するとか、養成を停止するというようなことは書かれていません。

したがって、まず冒頭で表明しておきたいことは、日本医師会の本問題に対する基本的姿勢は、准看護婦養成と准看護婦制度の維持ということであります。

本制度廃止論の議論は、誠に遺憾なことではありますが「始めに廃止論ありき」で出発していることであります。昭和38年の医療制度調査会答申を初めとしてその議論の中心は何時も制度廃止論であり、その繰り返しでありました。何故議論の出発が「日本の看護制度の在り方」でなかったかと言うことが非常に疑問であり、今後この議論が行われるにあたっては、この点を議論することから始まることを強く提案したいと思っております。

また、保健婦助産婦看護婦法違反の疑いのある業務を一部の准看護婦養成所生徒が行っていたとされることにつきましては、日本医師会としても都道府県医師会を通じて、准看護婦養成所長、医療機関等関係施設に改善を指導してきている所であり、看過していたわけではなく、その実効は上がりつつあったものと考えております。准看護婦の養成にあたり、特に残念なことは、奨学金と雇用契約問題が、「お礼奉公」の表現で、作為的かつ恣意的に喧伝されたことであり、誠に不満と言わざるを得ません。

さらに、現在、准看護婦養成所を運営しているのは地域医師会であり、その運営当事者のほとんどが改善しつつ存続を希望していることを無視できるのか、冷静に考えていただきたいと思っております。昭和26年以来日本の医療を支えてきた准看護婦の大きな役割を無視し、少子時代、高学歴志向、看護職の供給過剰問題等を理由に准看護婦養成停止を主張することには、大きな矛盾があると考えております。

また、地域医療の分野においては、現在も准看護婦に大きく依存しているのであり、看護婦供給体制のあるべき姿を示すことなく議論される現状を考えると、その安易な養成停止は地域医療の崩壊と混乱に繋がるものであり、寒心に耐えません。

以上が日本医師会の准看護婦問題に関する見解であります。社会情勢、経済状況が不安定の中で、本問題はより慎重な検討と対応が必要であると考えております。最後になりましたが、日本医師会といたしましては、今後も医療の担い手として国民の生命、健康を守る立場から准看護婦養成問題に取り組んでいきたいと思っております。


報道されていないが、厚生省健康政策局長は97年12月15日、日本医師会坪井会長との会談で3項目からなる確認書を提出している。この確認書から日本医師会は准看護婦養成制度並びに准看護婦制度は堅持されたと判断、健康政策局長も制度の存続を確認している。北海道医報 927号 99・06・01) と言う事である。



准看護婦の移行教育に関する検討会報告書および
准看護婦の資質の向上に関する検討会の経過について

北海道医報 927号 99・06・01
http://www.hokkaido.med.or.jp/ihou/shihyou/SIHYO0927.pdf

厚生省の「准看護婦の資質の向上に関する検討会」および「准看護婦の移行教育に関する検討会」の設置および日医の対応について先ず述べる。

厚生省の『准看護婦問題調査検討会』が96(H08)年12月にまとめた報告書では、「現行の准看護婦養成課程の内容を看護婦養成課程の内容に達するまでに改善し、21世紀の早い段階を目途に、看護婦養成制度の統合に努めること」と提言していた。

厚生省は、これを受け、97(H09)年度予算で「准看護婦養成制度の見直しに伴う諸問題に関する検討会」設置の必要経費を計上していたが、日医は准看護婦養成制度の堅持の前提がなければ、一切*検討会の参加には)応じない姿勢を示してきた。また看護協会の主張する准看護婦制度廃止を前提とした議論をするものである限り参画する意志のないことを表明してきた。

厚生省健康政策局長は日本医師会と看護協会との調整で、時間を費やすことになっていた。12月15日(*97年)、坪井会長と健康政策局長との会談で3項目からなる確認書を提出させた。この文書から日本医師会は准看護婦養成の質的向上に向けての検討がなされ、准看護婦養成制度並びに准看護婦制度は堅持されたと判断し、健康政策局長も制度の存続を確認している。なお、この文書の内容は次のとおりである。


日本医師会長 坪井栄孝 殿

厚生省健康政策局長 谷 修一

准看護婦問題調査検討会報告の今後の対応について

1)地域医療の確保と看護の質の向上を図る観点から、まず、准看護婦
  養成の資質向上のための検討から行う。

2)准看護婦の看護婦への移行教育は、看護職員の資質の向上のため、
  また、就業経験の長い准看護婦が希望している看護婦への道を広げ
  るためのものとして検討する。

3)上記1)および2)の検討のため、年内を目途にそれぞれ検討会を発足
  させる。


日医は、これを前提条件として検討会に臨むことにした。

98(H10)年3月から二つの検討会がスタートした。移行教育の検討会は、計12回を数え、99年4月21日その報告書を取りまとめた。1年以上を費やした大きな理由の一つは、准看護婦問題調査検討会報告書の文言を盛り込むかどうかであった。

日本医師会は当初から、この検討会は移行教育について検討するものであり、さらに看護協会が主張する文言を盛り込み准看護婦養成制度廃止の方向を示そうとしているのに対し、廃止問題は上述の確認書で完結しているとし、調査報告書に触れることに反対してきた。然して、本報告書は看護制度の統合に触れない内容で決着した。

資質の向上の検討会は、今までに9回開催されているが、カリキュラム時間数の設定等で結論がまだ出ていない。ここで二つの検討会での検討項目内容についてその概略を述べてみる。

准看護婦の移行教育に関する検討会報告書移行教育の趣旨において、「准看護婦・士が移行教育を受講することは看護の質の向上になり、国民が望んでいる質の高い医療の実現に大きく貢献すると考えられる」と明記している。移行教育の対象者は「就業経験の長い(実習を免除することが可能と評価される期間)准看護婦・士で10年以上を対象」とし、実施期間は5年間の時限措置としている。また移行教育開始年に6年の就業経験があれば受講が可能としている。移行教育受講希望者については、現在約40万人の准看護婦のうち約11万7千人と厚生省は予測している。

実施機関については、理論学習は放送大学の活用を原則に、技術学習は移行教育所(新設・既存の養成所等を利用)を設置して行う。その移行教育所は、受講生が就業を継続しながら通学可能な距離に設置し、昼間開校型、夜間開校型、夏期および冬期集中型、土日分散型等のコースを設けるとしている。

教育の時間数については、理論学習が660時間、技術学習270時間の930時間(31単位)と明示し、基礎分野、専門分野の臨地実習の免除および専門基礎分野の技術学習は免除になっている。移行教育の国家試験については、理論学習と技術学習の修了をもって国家試験受験資格を付与し、同一の看護婦国家試験として行う。

学習推進支援体制については、勤務先の医療機関の受講者に対する配慮、学習グループを設け、学習推進支援者が相談・助言等を行う。また都道府県単位も移行教育推進のための委員会を設置し受講者に助言、医療機関への協力依頼、学習推進支援者へ支援等を行う。さらに離島や遠隔地に在住する准看護婦についても、適切に移行教育が受講できるように配慮しなければならない。

移行教育の実地に向けての状況把握としては、以下のことが上げられる。移行教育受講希望者の把握として准看護婦の意向調査を実施し年齢、経験年数、就業場所、就業形態等を把握する必要がある。移行教育所の確保方策としては、学校養成所の意向調査をして移行教育所の新設・転換・併設計画の把握。さらに設置準備(専任教員、施

設、設備)に関する調査。開校の形態(土、日、夜間、冬夏休暇等)。通学形態、通学範囲等があげられる。その他移行教育所の専任教員の養成・確保方策。移行教育に係る情報提供。学習推進支援者の確保方策。離島、僻地等における希望者の状況等が上げられる。

以上報告書の概要について報告させていただいた。ここで疑問視されるいくつかの点について述べてみたい。先ず、移行教育受講者数であるが、厚生省は対象者30万4千人で受講者は11万7千人(38%)と予測しているが、就業経験10年以上で中高齢の准看護婦がどの程度受講するか大いに疑問である。また同一の看護婦国家試験として行うと謳っているが、果してその合格率はどうか。低い合格率にならないように願う者である。受講者の意気込みは勿論のこと、専任教員の熱意、離島・僻地・通学範囲・開校の形態・学習推進支援者の理解等が問われることになる。また5年間の時限措置であるが、どれだけ多くの准看護婦が看護婦になれるであろうか。移行教育は何のためになされたのかと問われることのないように関係者は、実際に移行教育が開始されるまでに立場を越えて努力されることを望んでいると黒川座長は述べている。


准看護婦の資質の向上に関する検討会について

これまで9回の検討会が開催されてきた。未だ報告書は提出されていない。議論されている主な論点について解説したいと思う。本検討会は、確認書の1)で述べてある如く設置されたものである。准看護婦教育の基本的考え方に沿って次の3点について議論されている。先ず、准看護婦養成カリキュラムについては、現行より基礎科目はその時間数が減少、専門基礎科目、専門科目の大幅な時間数の増加により1500時間から1995時間に改正されていることである。この時間数は看護婦養成2年課程のカリキュラム改正後の時間数2100時間に近づくこと、高等学校衛生看護科が2003年から1900時間のカリキュラムを設定していることにも関係していると考えられる。何らかの目論みが見え隠れする。日医の准看護婦養成所に対するアンケート調査では、働きながら学ぶには1700時間から1800時間までなら可能とされている。従って日医としては授業時間数の段階的実施を求めている。さらに補助金が削減されている中で時間数増加、専任教員の増員は養成所にとってその運営は苦しいことを指摘している。

最終的な報告書は、未だ提出されていないが、准看護婦の資質の向上のために検討したことが地域医療に看護職として貢献する人材を育成してきた医師会立准看護婦養成所の将来に暗い影を落とすことになりはしないか危惧するものである。