Another Star

 

                一光 輝瑛

 

 

「何!」

 突然飛び込んでくる閃光,そして,耳を耳ごと吹き飛ばしてしまうかのような轟音。

「く…」

 とっさの反応でよけたが,反動で肩を強く打ちつけてしまい,立山の口からはうめき声がもれる。

「いったい…」

 ビュゥッ

 つむじ風のような気配とともに,複数の黒い影が現れる。そして,

「邪魔なんだよ,お前たちがな」

「…!」

「悪く思うなよ」

 影はいつのまにか人の形をして動いていたが,それでも全身漆黒には違いなかった。

 カカッ

 閃光が再び立山を襲う。必死によける立山。一瞬足をかすめたように見えたが,

なんとかよけきったか。

「…」

 立山の瞳を,すべての恐怖が支配していた。立つこともできず,まるで視線だけで

抵抗しているかのような姿勢。閃光のたどり着いた先には,恐ろしいくらい黒焦げになった壁,

そして,土が焼けるような臭い,煙。

「いったい,何…」

「この世界を負で支配してやる。そのためには,お前たちには消えてもらう必要がある。

覚えはないかもしれんが,悪く思うなよ」

「!」

 黒い影,…影のような人影は,4つ。先頭に立つ,最大の影が話し掛ける。リーダーか?

「消えうせろ!」

 

 

      Another Star

       Chapter 1

         闇の襲撃

 

 

 いっせいに挙げられる,黒衣の両手。そして,すぐに煌く閃光,そして轟音。

 力なき立山が採れた唯一の手段は,片手で目を覆う,それだけであった。

「!」

 グワッ

 体を揺さぶる振動,そして,右手越しにもダイレクトに突き刺さってくる光。

が,直接の振動も,痛みもない。

「…」

 世界は黒さを増していた。そして,四方から立ち上る煙,何かがこげる臭い。

「大倉,お前なのか…」

「ああ」

 いつのまにか,倒れこんだ立山の横には,直立した男,大倉の姿があった。

「手荒なことは嫌いだが…」

「…」

 大倉の右手が,水平に持ち上げられる。

 バチバチィッ

 さらに光が目を射,轟音が耳を劈く。

「!」

 稲妻の直撃を受け,最後の黒衣が倒れ込む。飛び散った何かは血か,それとも…

 

「大丈夫だったか,立山」

「…ああ,生きている」

「偶然だったが,近くにいてよかったよ。神様に感謝しよう」

「あれは,いったい…」

「さあ,なんだろうな。俺にもわからないさ。だが,確かに,少なくともお前を殺そうとして,

得体のしれない力を使った。間一髪助かったが,死んでいても不思議はなかったよ」

「…死」

「死とは突然,わけもわからず来るものとは聞いているが,ここまでとはな」

「いったい…」

「理不尽だよ,ことのほかね。だけど,確かに現実だ」

 

 大倉に助け起こされた立山は,逃げるようにその場を後にする。暗くなりかけた狭い道。

一歩遅れて大倉も続く。

「やっぱり,例の力に関係が…」

「きっとそうだろうな」

「しかし…」

「奴らは間違いなく立山,お前を狙っていたさ」

「…」

「お前が狙われる理由は,ほかに何かあるか。相手は普通の人間じゃない。

人間であるかどうかもわかりゃあしない。そんなわけのわからない連中が,お前を狙う理由。

あの“力”以外に,何か思いつくか?」

「…思いつかないな」

「そうだろう。やはり,あの“力”に関係して,お前は狙われたんだ」

「…」

「おそらく,俺も狙われる予定だったのだろう。お前の次にね」

「そうなのか…」

「物騒な話だ。だが,相手が物騒な連中である以上,どうしようもない」

「どうして,あの“力”のことが…」

「何か見せびらかすようなことをやったか」

「いや,全然」

「そのつもりはなくても,どこかで例の“力”を使ってしまったとか」

「…」

 

 

「…なんだろう…」

 さかのぼって数日前の朝。まだ暗いうちに目がさめた立山は,闇に慣れぬ目をこすりながら,

枕もとの時計を手繰り寄せる。

「それにしても,変な夢だったな…」

 寝ぼけた立山にとっても,今朝の夢の記憶は鮮明だった。が,それでも夢の中の話。

広がる黄色い光,危うい刃物の感触,長身の殺気立った男,血の臭い。

「何だったんだろう,いったい…」

 よく見えない時計の文字盤は,それでも恐ろしく早い時間をさしていた。

「ん…」

 立山は,左手で右手をつかむ。そう,彼の今朝の違和感は,夢だけが原因ではなかったらしいのだ。

「どうしたんだろう」

 うずくようで,それでいて痛むわけではない右手の感触。

「どうして…」

 まるで体から飛び出してしまいそうな右手の動き。まるで釣りたての大魚を抱えるかのように,

左手が奮闘して暴走を止める。

「…」

 立山は,無意識に,近くにあった長いものさしをつかむ。なぜそうしたのか,

わからない行動ではあったが。

「!」

 次の瞬間,目の前で何かが光ったような感覚に襲われる。

「!,そんな馬鹿な!」

 確かに光っていた。つかんだばかりのものさしは。信じられないくらい激しく光り,

炎まで立ちのぼっていた。

「え」

 思わず右手からさしを捨てる立山。燃え上がる炎は,床に落ちる前に一気に消滅した。

「夢か…」

 とりあえず,自分を慰めるかのようにつぶやく立山。が,夢ではない。

投げ捨てたプラスチック製のものさしは,黒焦げの無残な姿をさらし,異臭を放っていた。

「どうして夢じゃないんだろう…」

 

 

「まさか,あの朝のあれがきっかけか…」

「さあ,それはわからないな」

 冷静そうな大倉の声。

「しかし,誰に見せたわけでもないし…」

「相手は,よくわからないが,得体のしれない連中さ。可能性はあるね。察知されたのかもしれない」

「じゃあ,いったいどうしろって言うんだ。俺はあの“力”なんて,まったく制御できないんだ。

そんなものが原因で,あんなわけのわからない奴にまた襲われるのか。勘弁してくれよ。

どうすればいいんだ」

 半分自暴自棄になって,近くの壁をけりつける立山。

「さあ,どうすれば良いのだろう…」

 首をかしげる大倉。

 

『そのとき,僕はそうするしかなかった。力,敵,そして世界。

僕には何もわかっていなかったのだから。…たとえわかったような顔をしていても…』

 

 

 つづく

 

    PN 一光輝瑛

 

 この作品は,あくまでもフィクションです。

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