Another Star

 

                 一光 輝瑛

 

 

「やっとみつけたよ」

「!」

「ああ,たしかにイリーザだ。間違いない」

「…いったい…」

 突然現れた黒い影が二つ。立山はすぐに身構える。大倉も反応するが,動きは鈍く,

むしろ放心したようにその影を見ている。

「突然驚かして悪かったですね。ですが,状況はさしせまっているものですから」

「…」

 黒い影の男は,黒衣の重々しいフードを下ろす。

「!」

 人間の顔,か。確かにそうだ。だが,どこか普通の人間とは違う印象を受ける。

濃く色づけされた顔。

「何者…」

 立山は,相変わらず腰を落とし,いわば戦闘体勢をとっていた。

「大丈夫だ。悪い人じゃない」

「…どうしてそんなことがわかる」

「わからないさ。でも,そんな気がするんだ」

 

 

      Another Star

       Chapter 2

        未詳の同朋

 

 

「久しぶりですね,イリーザ」

「!」

 その黒い男たちの視線は,明らかに大倉に向いていた。

「お前たちは,いったい…」

「悪いですが,われわれが話したいのはイリーザの方です。あなたじゃないですよ,テリウス」

「!」

「そんな言い方は…,ガレア様」

 黒衣の男同士で,小声で話し掛ける。

「ああ,だがな…」

「あなたたちは,いったい誰ですか」

 大倉が,一歩を踏み出す。視線は射るようにまっすぐ黒衣の男たちに向いている。

「申し遅れました。私はガレア,こちらはセータです」

「…」

「わからないのも無理はありません。でも,初めてではありません。

我々は,イリーザとしてのあなたに深く感謝し,敬愛もしているのです」

「…」

「お前たち,いったいなんなんだ」

 大声をあげ,立山が一歩を踏み出す。反射的に,セータと呼ばれた男が,右手を突き出す。

「!」

「誤解しないでください。私たちは,先ほどあなたを襲った者たちの仲間ではありません。

しかし,同じ世界から来た以上,同じような力は持っていますよ」

「力…」

「そして,同じ力にはあなた方も気づいているはずです」

 

 立山は,踏み出したその場所で停止している。一方,同様に立ち尽くす大倉は,

なにか懐かしいものでも見るような表情だ。

「私はあなた方のことは知りません。けれども,何か知っているような気がします」

「おい,大倉,いったいどうしたんだよ」

「やはりそうなのですね。イリーザとしてのあなたは,我々の世界を崩壊から救いました。

その記憶はあなたとは別のものですが,必ずや連鎖があるはずです。

それは,私たちも確信していました」

「…別の世界…」

「そうですよ,テリウス」

「…!」

「あなたの,我々の世界での名前です」

「もう一人の,自分…」

「そうです」

「いったい…」

「!」

 ガレアが身構えると,反射的に大倉も体を動かす。

「詳しくご説明をしたいところなのですが,どうもその余裕は無いようですね」

「確かに…」

 

 ビュビュゥッ

 再び風を切るような音。そして,目の前の二人とはまた別の,黒い影が出現する。

前,右,後ろ… 全部で5人か。

「招かざる客ですかね」

「残念ながら…」

 バチバチィッ,カカッ

 激しい破裂音,そして,赤い光。戦いの火蓋を切ったのは,セータであった。

「!」

 立山は,なすすべなく立ち尽くすが,そんな彼の目に,容赦ない戦いの場面が飛び込んでくる。

「これでも食らえ!」

 影が発した雷撃が,大倉を襲う。が,とっさの判断で右にかわす。

 ガリガリィッ

 地面が削れる音,そして立ち上る煙。

「!」

 大倉は,信じられないほど軽い身のこなしで,すぐに両手を影に向ける。

 バシィッ

 何かを叩きつけるような音。そして,飛び散る黒い血。

「イリーザ,そこです!」

「!」

 大倉がさらに腕を挙げる。すると,空中から突然発した稲妻が,

完璧なタイミングで最後の影を捕らえる。

 バチバチッ

 焦げる臭い,麻痺する目の感覚。

 

「僕はいったい…」

「さすがですね,イリーザ」

「…」

「やはり我々の判断に誤りは無かった。あなたの“力”は,この世界でも本物ですよ。

まさに,救済の要となる人だ」

「救済…」

「あの男たちですよ。あいつら,確実にこの世界を狙っています。その刃に対する,

この世界の希望があなたですよ。ちょうど,我々の世界でそうだったように…」

「負の力…」

「そうです。恐ろしいですよ。だが,あなたの“力”があれば」

「今のは,いったい…」

 騒擾の間中,驚愕の表情で立ち尽くしていた立山が,ようやく現実の世界に戻ってくる。

「残念だが,これが現実のようだよ,立山」

「…しかし…」

「のんきなことを言っている場合じゃないですよ。この世界の危機は,目の前に迫っています。

あなたも見たでしょう」

「…」

「どちらにしても,戦う運命にあるのですよ」

 

 

 つづく

         PN 一光輝瑛

 

 

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