Another Star

 

                  一光 輝瑛

 

 

「君に遭えるような気がしていたさ」

「…」

「君もそう感じているんだろう」

「ああ」

「この感覚,どこから来るんだろう…」

 

 

      Another Star

       Chapter 4

        戴天の邂逅

 

 

「何だ,何が起こっているんだ」

 それは突然だった。帰り道,すっかり暗くなってしまい,街灯の灯りを頼りに歩く立山の姿。

いわゆる田舎の一本道。向こう側には広い道路があり,にぎやかな光を発していたが,

ちょっと中に入ると真っ暗になる,静かな道。

「何だよ,これ」

 思わず,肩からかけたバックを放り出してしまう。

「光,…か」

 

 立山の右手,確かに彼の右手だが,ほのかに光っていた。青白い炎はヒトダマのようでもあったが,

明らかに彼の手だ。

「…」

 ふと冷静になって,右手をかざしてみる。軽く燃え上がっているように見えるが,

それでも右手に熱い感触は無い。多少の違和感,そして…

 

 光は,突然消え入るように収まってしまう。一瞬錯覚か,夢かと考えるが,

彼の本能がそうではないことを告げていた。

「いったい,何が起こっているんだ…」

 本当は,困惑のあまり走り出してしまいたいような気分ではあった。が,

不思議と彼には落ち着きもあった。まるで,そうなることが予想できていたかのように…

 

 誰にも話せない,相談できない,立山はそんな思い込みで,日常生活を繰り返した。

あの青い光は,再び彼を襲うことは無かったが,かすかな違和感,そして右腕に残る不思議な感覚は,

あの日のまま,とどまりつづけた。

 

「あれ,あの男は…」

 数日後,街を歩く立山の目は,向こうから歩いてきたある男に吸い寄せられた。

「あの男…」

 立山よりひとまわり背の高いその男。うつむき加減で歩いていたが,人波に従い,

あっという間に立山の横を通りすぎる。

「…」

 立山はちらと時計を見る。

「午後の授業は,飛ばしてもいいな…」

 立山の,不思議な尾行が始まる。見失ったかと思ったが,彼の不思議な嗅覚は,

すぐにその男の姿を捉えた。駅から遠ざかる方向。青い上着。うつむき加減に,一人で歩く男…

 

 

『君はいったい誰だ』

『…』

『誰かいるんだろう』

『…』

『誰なんだ,そこにいるのは誰なんだ!』

 部屋の灯りをつけるが,そこには誰もいない,影も無い。

「…」

 不思議な感覚が大倉を襲ったのは,帰宅がずいぶん遅くなった,そんな夜のことだった。

外食し,満足した気分でドアを開けた彼を,突然違和感が襲う。

 すうっと,何かが…

『どうしたんだ,何が起こっているんだ』

『…』

『君はいったい誰だ』

『…』

『どうして,僕の中に入ってくるんだ』

 慌ててテレビのスイッチを入れるが,流れてくる笑い声とは裏腹に,彼の心は晴れない。

「…」

 

 胸のあたりが押し上げられるような感触。胸騒ぎとはまた違う感触であったが,

確かにそれに近いものもあった。

「は」

 布団に入っても寝付けず,一思いに体を起こすが,状況は何も変らない。

「誰かがいる,間違いない…」

 

 いつの間に眠っていたのだろう。軽い頭痛は残っていたが,その他はいつもと同じ時間,

同じような目覚めであった。

『どこかにいったのかな…』

 違和感はずっと薄れていて,やや安心したような表情で周囲を見回す。

「!」

 突き刺すような頭痛が,激しく大倉を襲う。

「うわ」

 立っていられなくなり,再び布団に倒れこむ大倉。

『君とともにあるよ』

『!,君はいったい,誰だ』

『…』

『誰なんだ!』

 

 

 立山の尾行は続いていた。男はまっすぐに進み,公園の横を通って,ついに人通りの絶えた,

細い道にかかる。

「!」

 立山は,自らに活を入れるように,大きく一歩を踏み出す。そして,歩くペースを上げようとする。

すると…

「立山君,だろう」

「…そうです。よくわかりましたね」

「知っていたわけじゃない。けれども,そんな気がしていたのさ」

「じゃあ,やっぱり夢で」

「そう。君もか」

「そうですよ。大倉君」

 

「光の腕,…さあ,それは見たことがないな」

「あれがすべての始まりだった。あれ以来,違和感はある,奇妙な夢は見る,…不思議なことばかりだ」

「それは僕も同じだな。いったい何が起こっているのかはわからないが,確かに何かが起こっている」

 

 

『そう,確かに何かが起こっていたのだ。この時,大倉と初めて会ったこのときには,

僕には知るすべも無かったが…』

 

『奇妙な男だと思った。だが,この立山という男,何か引き寄せるものを持っている,

そんな気がした。あれは,いったい,なんだったのだろう…』

 

 

「テリウスとイリーザが力を合わせているとすると,ずいぶん厄介なことになりますね」

「ああ。各個撃破できればよかったが,うまくは行かなかったな。…やはり,世界を越えた,必然か」

「運命ですかね…」

「だとすれば,忌むべき運命だが…」

 

 

 つづく

         PN 一光輝瑛

 

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