一光 輝瑛
「ガレア様,どうして,あの世界にそこまで固執されるのです。我々の世界から見れば,
ただの別世界のはずです。そこに固執して,せっかくのチャンスを逃すなど,
愚かな行動だと思いますが」
「ニムル,またその話か」
「はい」
「お前の発想も一理あるが,あの世界は,我々の世界とのつながりが極めて強い。
あちらを負に支配されてしまうと,必ずやこちらにも影響が出るだろう」
「その影響については,いまだに不確実です。それよりも,私の計画を実行に移したほうが,
必ずやわれらのためになるはずです」
「あの計画!まだそのようなことを言っているのか」
「多くのものの賛同を得ています。ガレア様のお許しが得られれば,
すぐにでも実行に移させていただきます」
「…彼らの世界を滅ぼしかねない計画だぞ。賛同できるものか」
「しかし,われらの世界の力を高めることは,最終的には,負勢力の力を弱め,
殲滅することにつながるはずです。ガレア様もそのことはよくご存知なはず」
「だが,その過程で,あの世界は崩壊してしまうぞ」
「負勢力が本気で乗り出している以上,無傷では済みますまい。
今の体制では,もしこのままだとしても,あの世界が守れる保証はありません。
そうすれば,われらの計画も,その拠って立つところを失ってしまいます。
そうなる前に,ご決断を」
「だめだ」
「どうしてそう意地になられるのです。われらの世界にイリーザ様を招聘し,
それでわれらの世界秩序を高め,最終的には負を駆逐する,理想的な計画です。
ぜひ,ご再考を」
「…だめだな」
ガレアは,はき捨てるように場を離れる。
「そうですか,ガレア様…」
「どうして奴らは襲ってくるんだろう」
「ん…」
「どうして,俺たちは戦わなくてはならないんだろう」
「おい,立山,どうしたんだ,突然」
「俺たちってさ,別に正義のヒーローでもない,地球防衛軍でもない。それなのに,
どうしてあんなわけのわからない奴らに襲われ,戦いに駆り立てられるんだろう」
「やはり,“力”の関係だろうな」
「“力”があるから襲われるのか。なら,そんな力がどうして必要なんだ」
「確かに,どうして必要なんだろうな…」
大倉は,空を見上げるように,うつろな目になる。立山の困惑は,より深まる。
「いつまで戦いつづけるんだろう…」
「仕方ないさ。来る限りずっとだろう」
「…」
立山は,右手を握り締め,顔の前に持ってくる。
ボッ
青く小さい光が灯る。が,戦いで吐き出された閃光に比べると,あまりにも小さい。
「せめて,大倉くらいの力が,俺にもあればな…」
フッ
いつもの突然さで,目の前に黒い影が出現する。立山にも,ガレアと負勢力の
それぞれで出現の違いが区別できていた。
「その発想は危険ですね,テリウス」
「…ガレアか」
「はい。あまり力に憧れを持たないほうが好いと思いますが」
「しかし,あんな奴らに襲われたら…」
「我々の分析では,あなたの力はイリーザの影響を受けて発生しているものだと判断されています。
よって,あまりイリーザの力を得ようとして,躍起になることは,必ずやあなたに
悪影響をもたらしますよ,テリウス」
「その呼び方はやめてくれ,ガレア」
「…私たちは,この呼び名の方がなれているものですから」
「…」
「とにかく,むやみに力を嘱望しないほうがいい。ご忠告しておきますよ」
「そうか…」
立山は,面白くなさそうにその場を離れる。
ガレアは,それを見送ると,今度は大倉に話し掛ける。
「負勢力の,水面下での動きはますます活発になってきています。
くれぐれも,身の回りにはご注意を」
「ああ,わかっているさ」
「何よりです」
大倉は,周囲に誰もいないことを確認して,もう一歩,ガレアに近づく。
「嘘なんだろう」
「は?」
「さっきの話さ。立山の力が,私の力の影響で発生しているっていうのは」
「はい。さすがにお察しが早い」
「どうしてそんな嘘を」
「…イリーザ,あなたにも教えないほうが良いこともあるのです」
「…」
「すべては我々の世界の話。別世界の話ですからね」
「しかし…」
大倉は,さらに続けようとしたが,別の気配を察知して止めた。
「どうやら,悠長に話し込んでいる場合ではないようですね」
「そのようです」
「!,気をつけろ,立山!」
「え」
少し離れていたところに立つ立山に,影が襲い掛かる。
「く!」
とっさにかわし,反撃の態勢に入る立山。大倉はすでに腕を振り上げている。
「また戦わなくてはいけないのか!」
「…」
次々と影が姿をあらわす。だが,今回はそれだけではなかった。
「…なんだ,あれは…」
ガガガァァァ…
岩山が動くような,地のそこから響く音。そして,目の前には確かにそんな光景,
「何だ,いったい…」
「巨大な…」
立山は大倉の横に来ている。
「どうやら,今回は敵さんも,新たな手段を使ってきたようだな」
「イリーザ,気をつけてください。強力なエネルギー反応が出ています」
「ああ,そのようだな」
「…」
彼ら3人の前方には,巨大な獣,真っ黒な獣が姿をあらわした。
動きは俊敏ではなかったが,いかんせん巨大な姿,3人は圧倒されつつあった。
「どうやら,苦戦は避けられそうに無いな」
「ああ,立山」
「今回は,俺が先に行くぞ」
「え」
立山が飛び出す。いつの間に用意したのか,細長い棒を振りかざしている。
バチバチィッ
炸裂音とともに,それは黄金の剣に変る。
「邪魔だ,どけ!」
間に立っていた黒い影は,立山の一振りでこなごなにされる。そして,獣に向かって殺到。
「くらえ!」
バシィッ
「!」
確かに手ごたえはあった。が,切り倒されたはずの獣は,すぐに再生する。
「く」
再び振り下ろされる黄金の剣。が,宙を回転したその光も,獣を打ち倒すことはできない。
「あ」
獣の豪腕が,立山を捕らえる。とっさに剣を構えるが,間に合わない。
「うわぁー」
弾き飛ばされる立山。黄金の剣は,一瞬にして黒焦げの棒に戻る。
「グワアァァァ」
獣の咆哮が,天空に突き刺さって響き渡る。
「畜生…」
立山が立ち上がるが,獣の前,あまりに弱々しく見える。
「グワアァァァ」
再び獣の咆哮。そして,その立山に向け,一歩を踏み出す。
「立山,違う,そこじゃない!」
「え」
大倉が腕を振り上げる。
「その獣はまやかしだ。本当の敵は」
「え…」
「そこだ!」
立山の両腕から,凄まじき雷撃がほとばしる。
ガリガリィッ
空気を引き裂くような轟音。そして,その先には,
「うわあぁあ」
一声,黒い影が倒れる。人間が焼けるいやな臭い。
「しとめた!」
「!」
立山に襲い掛かっていた獣は,その影の断末魔に併せ,ばたりと倒れこむ。
そして,地に吸い込まれるように,ただの影になる。
「…」
「危なかったな,立山」
「ああ」
「相手も,こちらを見ながら,いろんな手を使ってくるってことさ」
「あれは,幻」
「さあ,どうだろうな。だが,実体は無くとも,強力な敵であったことは違いないさ」
「それを撃破した。まさに大倉様,だな」
「ふっ」
大倉の表情に笑みが戻る。が,立山の表情は暗かった。
「負勢力の間にも,作戦間の連携が見られました」
「ああ」
「これまでの,その場限りの作戦ではなく,背後に組織関係の確立が想像できます」
「まあ,間違いないだろう」
「あの,“悪夢の大連合”の再編でしょうか」
「…さあ,どうだろうな」
ガレアは,何かを思い込むように,真っ黒な空を見上げた。
横には,同じく黒装束の男たちが数人。
つづく
PN 一光輝瑛
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