Another Star

 

                 一光 輝瑛

 

 

「お遊びは終わりだ」

「…」

「今度こそ,お前たちに死を与える。覚悟してもらおうか」

「…そいつはどうかな」

「死ぬのはお前たちの方だ。俺たちに覚悟なんて必要ないさ」

 立山は,すでに黄金の剣を持ち出している。

「今度は何を持って来たのか知らないが,俺たちを始末するなど,無理な話だ」

「なんだと」

「何度でも言ってやるさ。お前たちなんかに,殺されてたまるか!」

 “剣”を振りかざし,立山は影に殺到する。

「危ない,立山。気をつけろ!」

「え」

 

 

      Another Star

       Chapter 6

        栄耀の罠

 

 

 ドドドォォォ…

 なだれが到来したかのような轟音。立山の耳を劈く。

「く」

 ガガガァァァァ

 得体のしれない,赤く輝く物体。立山を一気に飲み込み,さらに,大倉たちに迫る。

「よけろ,ガレア」

「はっ」

 鈍い光,そして,鼻を突く悪臭。

 目の前が,すべてその赤い光,いやな赤の鈍さに包まれる。

 

「テリウスは…」

「いや,大丈夫だろう。…わからないが」

「…」

 ガレアは,何とも言えない複雑な表情を見せる。大倉は,それを見ない振りだ。

「あいつのことだ。生きているさ」

 

 赤い海の向こう,ゆっくりと,その物体が姿をあらわす。

「この技の正体は,どうやらあいつのようだな」

「…」

 ぬめぬめした,本能的に受け入れたくない物体。ぬるりと立ち上がり,ふらふらと左右に揺れる。

「以前に見たような気がするが,気のせいかな」

「私は見たことがあります」

「そのときは,私が,イリーザが撃破したのか」

「はい…」

「ふっ,撃破したのはテリウスの方か」

「…」

 大倉は,大きく腕を挙げる。

「真正面から行くのは愚行だろうな。ならばこうするか」

「まさか…」

「本能的に覚えているよ。前に,こいつには一泡食わされたはずさ」

「…」

 

「こうするのさ」

 大倉は,両腕を天空に伸ばす。

「直接では芸が無い。真実はきっと,ここにある!」

「ひっ」

 まるで断末魔の響きのように,誰かの恐れの声が聞こえた。

「お遊びは終わりだ」

 天空から,これまでの比で無いような,雷撃の束が飛来する。

相変わらずぬめぬめと直立していたその怪物は,上空からの雷撃になすすべが無いかの様であった。

「決まった…」

 カカッ

 雷の束は,寸分狂わずその怪物を捕らえ,目を狂わす光線の塊となった。

「うっ」

 ガレアが,思わず声をあげる。

「…」

 赤い世界は,たちまち,漆黒の闇に包まれ,そして,気色の悪い塊が飛来する。

黒く,赤い肉片。

「まだだろう,ガレア」

「はい,以前はそうでした」

「とどめは,ここだ」

「!」

「立山…」

 

 炸裂の中心,肉片が飛び散るその中央に,男が立っていた。右手の先が,黄金に輝くその男。

間違いない,立山だった。

「よくもやってくれたな。ふざけやがって…」

 彼の目つきは,まさに野獣のそれであった。

「とどめを刺してやる」

「立山,あそこだ」

「ああ,わかっているさ!」

 大倉が指差した先,寸分狂わず,立山が殺到していた。

「これで,終わりだ」

「!」

 

「ギャアアァァァ」

 断末魔の叫び,そして,今度は真っ赤な鮮血。飛び散るそのしぶきを浴び,

それでも立山は無表情に立ち尽くす。

「これで終わったな,ひとつ」

「…ああ」

 大倉の表情は,驚きを通り越して,ある種の恐怖に移行していた。

 

 

「この惨状は…」

 人目をはばかるように,大倉は,その現場にやってきた。

「…ひどいな」

 確かに惨状であった。溢れ出した不可解な物体は,悪臭を放って周囲を圧倒していた。

黒焦げの物体は,あちらこちらにこびりついて,悲惨な状況をさらに増していた。

 時折救急車のサイレンが鳴る。特別な犬を連れた男はレスキュー隊員だろうか,

あたふたと動き回っている。

『いったい,どこまでの犠牲がでればよいのだろう…』

 タンカに乗せられた人が一人,絶望的な光景の中,運び出されて行く。

『立山が言っていたな。どうして俺たちは戦わなくてはならないのだろう。

犠牲を出し,自ら苦しみ,そして,その先には何があるのだろう…』

《何を言っているのです,あなたがそんなことでどうするのです》

 ガレアの声が聞こえたような気がしたが,どうやら幻らしい。

『…』

 

 

「あなたの力にも,限界が見えているのではないですか」

「何…」

「あなたの力は認めます。だが,あくまで,補助的なものにしかすぎない。

我々は,むしろあなたの身にかかる危険の方を危惧しますよ」

「…」

「やはり,テリウス,あなたの力は,イリーザに誘発された,二次的なものでしかない」

「しかし,あの剣は…」

「この技の世界では,精神的なものの方が,より高度であると解釈されます。

つまり,あなたのように,剣を振りかざすなんて,邪道なんですよ」

「邪道…」

「もし,稚拙な能力に固執し,イリーザの足手まといになるのなら,我々とて容赦はしませんよ」

「…何だと…」

「現実を見なさい,テリウス。今のあなたの力では,奴らには対抗できない。

ここまでのあなたの功績は認めましょう。だが,そろそろ表舞台から去られることをお勧めしますよ。

あなたの命があるうちにね」

「…」

 

 

「ガレア様には申し訳ないが,やはりあの計画を進めることにしよう」

「では,やはりイリーザ様の招聘」

「そうだ。われらの生きて行く道は,結局はそれしかない」

「しかし,ガレア様には…」

「ガレア様にも,最後にはわかっていただけるはずだ。ほかに道は無い。

ならば,たとえ一時的に逆らってでも,真実を突き進むのだ」

「では,あの世界は…」

「さあ,どうなるだろうな」

「…」

「だが,テリウスという手もあるだろう」

「え」

「ガレア様は,極度のアレルギーのようなものだ。もっと,使えるものはすべて使う,

その精神で生きてもらいたいものだ」

「ニムル様,あなたは…」

 

 

「ガレア様,あまりテリウス様をなえがしろにしないほうが…」

「いや,あれでいい」

「しかし…」

「我々の過去の苦労を考えろ。もし,イリーザ様とテリウス様がともにあるのが運命なら,

もう一度同じ過ちを繰り返してしまうことになる」

「しかし…」

「災いは,起こる前に絶つ。これが,もっとも安全な,生きる道だ」

「安全,ガレア様の安全ですか」

「いや,全世界の安全さ」

 

 

『俺は,いったいどうすればいいのだろう』

 立山は,鏡に向け,語りかけた。

『俺は,いったい何をしているんだろう。何をするべきなんだろう…』

《あなたの力では,この世界を救うことはできませんよ》

 ガレアの声が聞こえたような気がする,が,気のせいか。

《この世界を救うのは,あなたではありません。イリーザ様なのです》

 

 

「立山様ですね」

 突然風のように現れた影にも,立山は安心感を持って接していた。

「あなたは…」

「私は,ガレア様の副官,ニムルと申します」

「ガレアの副官…」

《この世界を救うのは,あなたではありません。イリーザ様です》

 

「立山様。実は,大切なお話が…」

 

 

 

 つづく

    PN 一光輝瑛

 

 

 ご感想等,メールはこちらまで。

  E-mail  kiei_ichi@geocities.co.jp

            kiei@square.millto.net

            blueray@mutt.freemail.ne.jp  (ポスペ専用)

 

 

 この作品は,あくまでもフィクションです。

 この作品の著作権は,作者に帰属します。

 

  一光 輝瑛 の ページ に 戻る

    一光 輝瑛 の ホームページ に 戻る

    小説の木立 に 戻る